- 2025年9月18日
その胃の痛み、大丈夫?「びらん性胃炎」の原因と、本当に怖い胃炎の話

「冷や汗が出るような、突然のキリキリとした胃の痛み」
「仕事の疲れやストレスが溜まると、決まって胃が重くなる…」
こんな経験はありませんか?明石市のたなか内科クリニックです。今回は、このようなツラい胃の症状を引き起こす「びらん性胃炎」について、そして「ただの胃炎」と自己判断することの危険性について詳しく解説します。
びらん性胃炎とは?
「びらん」とは、粘膜の表面が炎症によってただれ、浅くえぐれてしまっている状態を指します。これが胃で起こっているのが「びらん性胃炎」です。
症状としては、急な胃痛やみぞおちの痛み、胃もたれ、吐き気などが挙げられます。ひどくなると出血を伴い、吐血や黒い便(黒色便)として現れることもあります。一方で、慢性化するとほとんど症状を感じない場合もあり、知らないうちに進行して胃潰瘍へと発展するケースもあるため注意が必要です。
その原因、意外と身近に潜んでいます
びらん性胃炎は、特別な病気ではありません。主な原因は、私たちの日常生活の中に潜んでいます。
①お薬(非ステロイド系:NSAIDs)

頭痛や生理痛、腰痛などで使う痛み止め(ロキソニン、バファリン、イブなど)は、胃の粘膜を守る物質を減らす作用があり、胃炎の大きな原因となります。
②アルコール

アルコールの過剰摂取は、直接的に胃の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こします。
③ストレス

仕事のプレッシャーや人間関係など、精神的・肉体的なストレスは胃酸の分泌を過剰にし、胃の防御機能を弱めてしまいます。
これらが複合的に絡み合うことで、ある日突然、強烈な胃の痛みに襲われることがあるのです。
本当に注意すべき胃炎は、別にあります

「原因が分かったし、薬を飲めば大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、胃炎には様々な種類があり、びらん性胃炎よりもさらに注意深く経過をみるべき胃炎が存在します。それが「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」です。
これは、長年の炎症によって胃の粘膜が薄く痩せ細ってしまった状態で、胃がんの発生母地(発生しやすい場所)として知られています。そして、この萎縮性胃炎の最大の原因が「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」の感染です。
ピロリ菌に感染している人は、していない人に比べて胃がんになるリスクが5倍以上高いというデータもあります。
医療の進歩とピロリ菌治療の今

「昔、ピロリ菌がいると言われたけど、症状もないし放置している」という方もいらっしゃるかもしれません。
実際に20年ほど前は、症状のない慢性胃炎やピロリ菌感染に対して、積極的な治療は行われない時代でした。当時は、ピロリ菌の除菌治療が胃炎に対しては保険適用外だったのです。
しかし現在では、研究が進み「ピロリ菌感染が胃がんの最大のリスクである」ことが常識となっています。そのため、ピロリ菌が引き起こす胃炎に対する除菌治療は、胃がん予防の観点から保険適用で強く推奨されています。
医療は日々進歩しています。「昔、大丈夫だと言われたから」という認識は、一度アップデートする必要があるかもしれません。
大切なのは「胃カメラ」による正確な診断

では、自分の胃が「びらん」なのか「萎縮」なのか、ピロリ菌はいるのか、どうすれば分かるのでしょうか。その答えは「胃カメラ(上部内視鏡検査)」にあります。胃カメラは、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接カメラで観察できる唯一の検査です。
- 胃炎の種類(びらん性か、萎縮性か)を正確に診断できる
- 粘膜の状態から、がんのリスクを評価できる
- ピロリ菌の感染を調べるための組織を採取できる
- 万が一、初期の胃がんがあっても早期発見できる
胃がんは、早期に発見すれば生活に影響なく完治が望める病気です。特に、胃がんのリスクが上がり始める40歳を過ぎたら、症状がなくても一度は胃カメラを受けることを強くお勧めします。

胃の痛みは、身体からの重要なサインです。その原因が「びらん性胃炎」かもしれませんし、その背景にはもっと注意すべき「萎縮性胃炎」や「ピロリ菌感染」が隠れているかもしれません。
自己判断で済ませずに、医療機関に相談し、必要であれば一度しっかりと胃の中を調べてみることが、将来の安心に繋がります。
明石市にお住まい・お勤めの方で、繰り返す胃の不調にお悩みの方、ご自身の胃の状態が気になる方は、ぜひ一度、たなか内科クリニックへご相談ください。
※びらん性胃炎は、胃潰瘍の前段階と考えて良いでしょう。症状のある方、無い方、様々ですが、「胃にびらんがある」と言われた場合はピロリ菌の有無も確認が望ましいです。
また胃のびらんは、悪性の場合もありますので、びらんの一部を胃カメラを用いて採取し病理検査を行う事も多いです。