• 2025年4月23日

食後におならが多い…大丈夫?考えられる原因と病気、対策を解説

「食事の後、なんだかお腹が張っておならがよく出る…」

「最近、おならの回数が増えた気がするけど、これって普通?」

このようなお悩みはありませんか?
おならは誰にでも起こる自然な生理現象ですが、食後に特に増えたり、臭いが気になったりすると、何か病気なのではないかと心配になる方もいらっしゃるでしょう。

確かにおならの増加や臭いの変化は、単なる食べ過ぎや早食いだけでなく、消化器系の不調や病気のサインである可能性も潜んでいます。

この記事では、内科・消化器内科・内視鏡専門医の立場から、食後におならが多くなる原因、考えられる病気、ご自身でできる対策、そして医療機関を受診する目安について詳しく解説します。


そもそも「おなら」とは?

まず、おならの基本的な知識を確認しましょう。

  • おならの正体: 腸内に溜まったガスです。その約7割は食事の時などに口から飲み込んだ空気、残りは血液中から腸管に拡散したガスや、腸内細菌が食べ物を分解する際に発生するガスです。
  • 量と回数: 成人の場合、1日に0.5~1.5リットルほどのガスが作られ、その多くは血液に吸収されます。残りがおならとして、1日に平均5回~20回程度排出されると言われています。個人差が大きく、1日25回程度までは生理的な範囲内とされることもあります。
  • 臭い: 飲み込んだ空気や血液由来のガスはほとんど無臭です。臭いの主な原因は、腸内細菌が食べ物(特にタンパク質や硫黄分を含む食品)を分解する際に発生するガス(硫化水素、インドール、スカトールなど)で、これは全体の1%未満ですが強い臭いを持っています。

なぜ「食後」におならが増えるのか?

食後におならが増えやすいのには、いくつかの理由が考えられます。

1. 生理的な原因(病気ではないもの)

  • 空気の飲み込みすぎ(呑気症/空気嚥下症): 早食い、よく噛まずに飲み込む、おしゃべりしながらの食事、ストレスなどで無意識に空気を多く飲み込んでしまうと、腸内のガスが増えておならの回数が増えます。この場合、臭いはあまり強くないことが多いです。ガムをよく噛む習慣も空気を飲み込みやすくします。
  • ガスが発生しやすい食べ物・飲み物の摂取:
    • 芋類、豆類、かぼちゃ、ごぼう、玉ねぎ、キャベツ、ブロッコリーなど: 食物繊維が豊富で、腸内細菌による分解過程でガスが発生しやすい食品です。
    • 炭酸飲料、ビール: 飲料に含まれる炭酸ガスがそのままおならとして排出されやすくなります。
  • 消化に時間がかかる食べ物の摂取:
    • 脂肪分の多い食事: 消化に時間がかかり腸内に留まる時間が長くなるため、その間にガスが発生しやすくなります。
  • 便秘: 腸内に便が溜まっていると、ガスも排出されにくくなり、腸内で発酵が進んで臭いが強くなったり、おならの回数が増えたりすることがあります。

2. 病気が隠れている可能性

食後のおなら増加が続く場合や、他の症状を伴う場合は、以下のような消化器系の病気が原因となっている可能性も考えられます。

  • 過敏性腸症候群(IBS): 腸に明らかな異常がないのに、ストレスなどをきっかけに腸が過敏になり、腹痛、下痢、便秘、お腹の張り、ガス(おなら)の増加などが慢性的に起こる病気です。「ガス型」と呼ばれるタイプもあります。
  • 機能性ディスペプシア(FD): 胃の運動機能や知覚過敏に問題があり、胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛みなどが続く病気です。消化不良からガスが発生しやすくなることがあります。
  • 慢性胃炎: ピロリ菌感染やストレス、薬剤などが原因で胃の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気です。胃の機能が低下し、消化不良やお腹の張り、げっぷ、おならの増加や臭いの変化が見られることがあります。放置すると胃潰瘍や萎縮性胃炎、胃がんのリスクを高める可能性があります。
  • 胃食道逆流症(GERD)・逆流性食道炎: 胃酸などが食道へ逆流することで、胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)などの症状が起こります。げっぷが増え、それに伴い空気を飲み込みやすくなり、おならが増えることもあります。
  • 呑気症(どんきしょう): 病的なレベルで空気を過剰に飲み込んでしまい、げっぷやお腹の張り、おならの増加を引き起こします。ストレスや不安が関与していることもあります。
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病): 腸に慢性の炎症が起こる病気で、下痢、血便、腹痛、体重減少などの症状とともに、おならの増加や臭いの変化が見られることがあります。
  • 大腸がん: 初期は自覚症状が乏しいことが多いですが、進行してがんが大きくなると腸管が狭くなり、便秘や便が細くなる、お腹の張り、腹痛などの症状とともに、おならの回数が増えたり、臭いが強くなったりすることがあります。多くは大腸ポリープががん化するため、早期発見・治療が重要です。
  • 腸閉塞(イレウス): 腸の内容物が流れなくなる緊急性の高い状態です。激しい腹痛、嘔吐、お腹の張りとともに、おならや便が全く出なくなります。すぐに医療機関を受診する必要があります。
  • 乳糖不耐症: 牛乳などに含まれる乳糖を分解する酵素が少ないため、乳製品を摂ると下痢やお腹の張り、ガス(おなら)が発生しやすくなります。
  • FODMAP(フォドマップ)過敏: 特定の糖質(発酵性のオリゴ糖・二糖類・単糖類・ポリオール)を消化吸収しにくいため、それらを多く含む食品(小麦、玉ねぎ、納豆、リンゴ、牛乳、ヨーグルトなど)を食べると、お腹の張りや下痢、ガス(おなら)を引き起こすことがあります。過敏性腸症候群の症状に関与していることもあります。

おならの「臭い」も原因を探るヒントに

  • 臭いが強い場合: 腸内で悪玉菌が優勢になっている可能性があります。動物性タンパク質(肉、魚、卵など)や脂質の摂りすぎ、硫黄分を多く含む食品(ニンニク、ニラ、玉ねぎなど)の摂取、便秘、消化不良などが原因として考えられます。大腸がんなど、病気が原因の場合もあります。
  • 臭いが少ない(または無い)のに回数が多い場合: 主に空気の飲み込みすぎ(呑気症)が原因と考えられます。

「胃がん」との関係は?

「おならが多いのは胃がんの初期症状?」と心配される方もいらっしゃいますが、基本的に胃がんが直接の原因となっておならが増えることはまれです。

ただし、慢性胃炎が胃がんのリスクを高めることや、おならの増加の原因となる他の消化器疾患(過敏性腸症候群など)が隠れている可能性はあります。また、胃がんが進行し、胃の機能が低下したり、便秘を引き起こしたりすることで、間接的におならに影響が出る可能性は否定できません。

いずれにしても、気になる症状があれば自己判断せず、消化器内科にご相談ください。


まずはセルフケア!自宅でできる対策

食後のおならが気になる場合、まずは生活習慣を見直してみましょう。

  1. 食事内容・食べ方を見直す
  1. バランスの良い食事: 偏った食事は避け、野菜や発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)を取り入れ、腸内環境(善玉菌)を整えることを意識しましょう。
  2. ガスを発生しやすい食品・臭いの原因食品を控える: ご自身の経験から、特定の食品を食べた後におならが増える、臭いが強くなる場合は、量を控えてみましょう。(ただし、過度な制限は栄養バランスを崩す可能性があるので注意)
  3. ゆっくり、よく噛んで食べる: 早食いを避け、一口30回程度噛むことを意識すると、空気の飲み込みを減らし、消化も助けます。
  4. プロバイオティクス・プレバイオティクス: 善玉菌(プロバイオティクス)を含む発酵食品や、善玉菌のエサとなる食物繊維・オリゴ糖(プレバイオティクス)を意識的に摂ることも有効ですが、体質に合わない場合(乳糖不耐症、FODMAP過敏など)もあるため、様子を見ながら取り入れましょう。
  5. 生活習慣を整える
  1. 十分な睡眠: 睡眠不足は自律神経の乱れにつながり、腸の働きに影響します。
  2. 適度な運動: ウォーキングなどの軽い運動は、腸の動きを活発にし、ストレス解消にも役立ちます。
  3. ストレス管理: 自分に合った方法でストレスを溜め込まないようにしましょう。
  4. その他
  1. ガムを噛む習慣を見直す: ガムを噛むと空気を飲み込みやすくなるため、頻繁に噛む方は控えてみましょう。
  2. 便秘の改善: 食物繊維や水分を適切に摂り、排便習慣を整えましょう。

こんな症状は受診を!クリニックへ相談する目安

セルフケアを試しても改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、消化器系の病気が隠れている可能性があるため、早めに内科・消化器内科を受診しましょう。

  • おならの回数が異常に多い状態が続く(例:1日25回を超えるなど)
  • おならの臭いが急に強くなった、または変化した状態が続く
  • 強い腹痛、お腹の張り(膨満感)がある
  • 吐き気、嘔吐がある
  • 便秘や下痢を繰り返す、またはどちらかが長く続く
  • 便に血が混じる(血便)、黒っぽい便が出る
  • 便が以前より細くなった
  • 原因不明の体重減少がある
  • 食欲がない状態が続く
  • 発熱がある

内科・内視鏡クリニックでできること

当クリニックのような内科・消化器内科では、おならのお悩みに対して、まず詳しい症状の問診や診察を行います。必要に応じて、血液検査、便検査、腹部エコー検査などを行い、原因を探ります。

特に、胃がん、大腸がん、炎症性腸疾患などの病気が疑われる場合や、症状の原因を特定するためには、内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)が非常に重要です。

  • 胃カメラ(上部消化管内視鏡検査): 食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察し、炎症、潰瘍、ポリープ、がんなどの病変を早期に発見できます。ピロリ菌感染の検査も可能です。
  • 大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査): 大腸全体の粘膜を直接観察し、ポリープ、がん、炎症性腸疾患などを診断します。大腸ポリープはその場で切除することも可能で、大腸がんの予防につながります。

当クリニックでは、鎮静剤(静脈麻酔)を使用して苦痛の少ない検査を提供しています。安心して検査を受けていただけるよう努めておりますので、お気軽にご相談ください。


食後のおならが増える原因は、食事内容や食べ方、ストレスといった日常的な要因から、過敏性腸症候群や大腸がんなどの病気まで様々です。おならは体からのサインでもあります。

セルフケアで改善しない場合や、気になる症状がある場合は、「たかがおなら」と放置せず、ぜひ一度、消化器内科にご相談ください。早期に原因を特定し、適切な対処や治療を行うことが、健やかな毎日につながります。

基本的には、おならが多いのみであれば心配はいりませんが、

「同時に最近は便秘気味である」

「便は出るけど量が少なく柔らかい便が何度もでる」

などの症状があれば、一度は腹部CTや内視鏡検査をお勧めしています。

検査がすでに済んでいる場合は大腸癌の心配がなくなりますので、時間をかけて便通調整を相談しながら進めていきます。 年齢を重ねると共に知らない間に便秘傾向となっている場合もありますので、気になる場合は一度かかりつけ医に相談して頂ければと思います

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