- 2025年9月19日
夏に多発するサルモネラ食中毒 – 卵や鶏肉だけじゃない!ペットや意外な原因、正しい予防と対処法

明石市のたなか内科クリニックです。
夏の食中毒の代表格として知られる「サルモネラ」。
多くの方が「卵」や「鶏肉」を連想されるのではないでしょうか。もちろんそれらは主要な原因ですが、「それだけ注意していれば大丈夫」というわけではありません。
実は、サルモネラ菌は私たちの想像以上に身近な場所に潜んでおり、ペットや意外な食品が原因となることも少なくありません。実際に、2023年にも国内で600名以上がサルモネラ食中毒を発症し、死亡例も報告されています。
今回は、ご家庭をサルモネラ食中毒から守るため、最新の情報を交えながら、その全体像と本当に効果的な予防・対処法を詳しくお伝えします。
意外と知らない?サルモネラ菌の正体
まず、サルモネラ菌がどのようなキャラクターなのかを知っておきましょう。
- すみか: 牛・豚・鳥などの動物の腸内だけでなく、河川や下水など自然界に広く生息しています。
- 得意技: 乾燥に強く、低温にも耐えます。冷蔵庫(7℃以下)では増殖が止まりますが、菌が死ぬわけではありません。
- 苦手なもの: 熱に弱く、十分な加熱で死滅させることができます。
- 隠れた感染源: 犬や猫はもちろん、カメ(特にミドリガメ)やトカゲなどのハ虫類も高い確率で保菌しています。また、ネズミやゴキブリが菌を運ぶこともあります。
「ペットのカメを触った後、しっかり手を洗っていますか?」これもサルモネラ対策の重要な一部なのです。
症状と経過 – ただの腹痛で終わらないことも

サルモネラ菌に感染すると、6時間〜48時間(長いと72時間)の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。
- 38℃前後の発熱
- 吐き気、嘔吐
- 激しい腹痛
- 下痢(水様便、時に粘血便)
症状は通常2日〜7日ほどで回復に向かいますが、注意すべき点が2つあります。
- 排菌は続く: 症状が治まっても、便の中への菌の排出は3週間ほど続くことがあります。ご家庭内での二次感染を防ぐため、症状が消えた後も丁寧な手洗いを心がけましょう。
- 後遺症のリスク: まれに、症状が治ってから数週間〜数ヶ月後に「反応性関節炎」を発症し、膝や股関節などに痛みや腫れが出ることがあります。
特に、乳幼児や高齢者、免疫力が低下している方は、菌血症や敗血症といった重い症状に進行し、脱水症状で命に関わる危険性もあるため、いっそうの注意が必要です。
主な原因と、家庭でできる具体的な予防策
鶏卵の取り扱い

鶏卵は、鶏の体内で卵黄が汚染されるケースと、殻の表面に付着した菌が割る際に中身を汚染するケースがあります。
- 新鮮で、ヒビのない卵を選びましょう。
- 必ず冷蔵庫(10℃以下)で保存し、賞味期限を守りましょう。
- 生で食べる場合は、割ったらすぐに食べるようにしてください。
食肉の調理

豚肉や鶏肉は汚染されている可能性を前提に、中心部の温度が75℃以上で1分間以上、しっかりと加熱してください。
二次汚染の防止
- 生の肉や卵を触った後は、必ず石鹸で手を洗いましょう。
- 包丁やまな板は、生肉・魚用と、野菜・調理済み食品用とで使い分けるのが理想です。使用後はよく洗い、熱湯やキッチン用のアルコールで消毒しましょう。
ペットとの関わり

カメなどのハ虫類はもちろん、犬や猫と触れ合った後も、必ず手洗いを習慣づけましょう。
もし感染してしまったら?クリニックでの治療方針

ご自身やご家族の症状がサルモネラかもしれないと疑われる場合、まず医療機関を受診することが大切です。その上で、治療の基本方針について知っておきましょう。
治療の基本は、脱水を防ぐための「水分補給(補液)」です。
多くの方が「抗生物質(抗菌薬)で菌を殺すべきでは?」と思われるかもしれません。しかし、腸炎だけの症状の場合、抗菌薬は回復を早める効果がなく、むしろ菌が体外に排出されるのを遅らせてしまう可能性があるため、原則として使用しません。
ただし、重症化リスクの高い方や、菌が血液中に入り込む「菌血症」を起こしている場合には、専門的な判断のもとで抗菌薬による治療を行います。
明石市にお住まい・お勤めで、ご自身の症状がサルモ-ネラかもしれないとご不安な方、またご家族に気になる症状が出ている場合は、自己判断せずにお早めに当院へご相談ください。正しい知識と対策で、食中毒のリスクからご自身と大切なご家族を守りましょう。
※下痢や腹痛、発熱など感染性腸炎の症状がある場合、診断確定に重要なことは、便の培養検査です。これは便の中にどんな細菌がいるかを調べる検査です。来院後、排便があれば検査に提出が可能です。検査の結果がでるには1週間程度必要となるため後日の結果説明となります。(ウイルス性の場合は便の検査は陰性となります)