- 2025年11月14日
ピロリ菌除菌中、食事で気をつけることは?「食べてはいけないもの」と除菌成功率を上げるコツ

「ピロリ菌の除菌治療を始めたけれど、何を食べてはいけないの?」
「下痢が心配だけど、食事で対策できる?」
ピロリ菌の除菌治療は、胃がんや胃潰瘍などのリスクを大幅に減らすための大切な治療です。除菌治療は通常、胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質(抗菌薬)を7日間服用することで行われます。
この治療を成功させるためには、薬の効果を最大限に引き出し、同時に起こりがちな副作用を食事でサポートすることが非常に重要です。
今回は、ピロリ菌除菌中に特に気をつけるべき食事や生活の注意点について、消化器内科の視点からお伝えします。
1.除菌成功の鍵は「薬の継続」— 自己判断での中止はNG

まず最も大切なことは、処方された薬を医師の指示通りに7日間欠かさず服用すること(服薬アドヒアランス)です。
途中で薬の服用をやめたり、量を減らしたりすると、ピロリ菌を完全に除去できず、薬が効かない「耐性菌」ができてしまい、その後の治療が困難になるリスクがあります。
除菌治療中に体調不良を感じた場合でも、自己判断で薬を中止する前に、必ず医師や薬剤師に相談してください。
2.除菌中に「食べてはいけないもの」:アルコールは厳禁!
ピロリ菌除菌治療中に食事内容について厳格に禁止されているものは少ないですが、薬の作用や副作用に影響を与えるため、必ず控えるべきものがあります。
【必須】アルコール(禁酒)

除菌治療中、アルコール摂取は厳禁です。
- 薬の効果の減弱・副作用の増強:アルコールは薬と相互作用を起こし、薬の効果を弱めたり、吐き気や頭痛などの副作用を強くしたりする可能性があります。
- 二次除菌薬に注意:特に二次除菌で使われる可能性のあるメトロニダゾール(フラジール)は、アルコールと併用すると、悪心・嘔吐などの不快な症状(ジスルフィラム様作用)を引き起こすことが知られています。
- 期間:治療期間の7日間は必ず禁酒してください。二次除菌の場合は、薬の服用後3日間はアルコール摂取を控える必要があります。
控えるべき食品・習慣

- 刺激物:香辛料や辛味の強い調味料。
- 高脂肪食:揚げ物や脂身の多い肉など、消化に時間がかかるもの。
- 喫煙:喫煙は胃粘膜に負担をかけ、薬の効果を妨げる可能性があるため、治療期間中は禁煙することが望ましいとされています。
3.副作用を最小限にするための食事アドバイス

除菌治療に伴う主な副作用として、軟便・下痢(約10〜30%)や味覚異常(約5〜15%)が報告されています。これらは抗生物質が腸内細菌のバランスを一時的に変えることで起こりますが、食事で対処することが可能です。
1. 消化の良い食事を中心に摂る
胃腸に負担をかけない食事を心がけることで、副作用による不快感を和らげることができます。
| おすすめの食品 | 避けたい食品(胃腸への刺激が強いもの) |
| 主食:おかゆ、よく煮込んだうどん、白米 | ラーメン、そば、玄米、繊維質の多いもの |
| おかず:豆腐、白身魚、鶏ささみ・むね肉(脂肪が少ないもの)、卵(半熟など) | 脂身の多い肉(バラ肉)、揚げ物、高脂肪乳製品 |
| その他:蒸し野菜(にんじん、かぼちゃなど)、バナナ、すりおろしリンゴ | 香辛料、味の濃いもの |
調理法は、「煮る」「蒸す」など、油を使わないものを選びましょう。
2. 水分補給と整腸作用の活用(下痢対策)
抗菌薬の影響で軟便や軽い下痢になることが多いですが、ほとんどが一過性です。
- 水分補給:下痢による脱水症状を防ぐために、水やお茶をこまめに摂り、水分補給をしっかり行ってください。
- プロバイオティクス(整腸剤):市販の整腸剤(プロバイオティクス)は、腸内環境を整え、下痢症状の緩和に役立つことがあります。
- ヨーグルト:ヨーグルトなどの発酵食品は善玉菌を摂取するのに有効ですが、副作用として下痢が出ている場合は、乳製品が症状を悪化させる可能性もあるため、様子を見ながら取り入れましょう。
- 医療機関への相談:下痢の回数が多く、症状が気になる場合は、自己判断せずに医師や薬剤師に相談してください。症状の程度に応じて、整腸剤が処方される場合があります。
3. 不安な症状が出た場合の対処法
副作用の多くは軽度ですが、重篤なアレルギー反応や副作用の可能性もあります。
直ちに薬の服用を中止し、医療機関へ連絡すべきサイン
以下の症状が現れた場合は、すぐに薬の服用を中止し、医療機関へ連絡してください。
| ・発熱や激しい腹痛を伴う下痢 ・便に血液や粘液が混じっている下痢 ・全身のかゆみ、じんましん、発疹 ・喉のつまった感じ、息苦しさ、呼吸困難 ・じんま疹などのアレルギー症状は内服継続で悪化するため、速やかに除菌治療薬を中止する必要があります。 |
自己判断で止めずに、まずは相談すべきサイン
| ・軟便や軽い下痢、味覚異常が日を追うごとにひどくなる場合。 ・嘔吐、食欲不振、強い頭痛など、日常生活や仕事に支障が出るほどの強い副作用が出ている場合。 |
不安な症状については、薬の変更など別の対処法を検討できる可能性があるため、我慢せずに必ず医師や薬剤師にご相談ください。
4.まとめ:除菌治療は胃の健康への第一歩

ピロリ菌除菌治療は、たった7日間で将来の胃がんリスクを減らすことができる重要な治療です。治療中はアルコールや刺激物を控え、消化の良い食事と十分な水分補給を心がけましょう。副作用が出た場合でも、自己判断で服用を中断せずに医師に相談することが、除菌成功への最も確実な道です。
(ピロリ菌除菌治療後の注意点として、除菌成功後も胃がんリスクはゼロにはならないため、特に除菌後5年間は年1回の胃カメラ検査を強く推奨されています。)
ピロリ菌治療についてご不安な点があれば、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
※現在除菌治療の成功率は80-90%とされています。
除菌治療後、当院では二か月後を目安に尿素呼気試験にて除菌後判定検査を行っています。なお採血で行う、抗ヘリコバクターピロリ抗体は除菌後10年でも陽性が残る場合がありますので、除菌後の判定検査としては不向きとされています。