• 2025年11月14日

【警鐘】「マンジャロダイエット」と呼ばれる安易な痩身法 — その深刻な消化器リスクと健康被害

近年、SNSなどを通じて、特定の注射薬を「手軽に痩せられる薬」として美容・ダイエット目的に使用する事例が報告されています。

しかし、これらは本来2型糖尿病などの治療に用いられる医薬品です。本来の治療目的から逸脱した使用は、使用者の体に深刻な健康被害をもたらす可能性があり、医療専門家は重大な懸念を寄せています。

特に消化器系への負担は大きいため、その危険性についてお伝えいたします。


1.報告されている副作用と身体的苦痛の実態

この薬剤の使用により、多くの方が重い副作用に苦しんでいる実態が報告されています。

(1)激しい消化器症状と脱水

使用中、高頻度で吐き気、おう吐、下痢、便秘などの重い消化器症状が現れることがわかっています。

使用者からは「水分摂取さえ困難になる」ほどの激しい吐き気の訴えや、食事が全く摂れなくなるほどの極度の食欲不振の報告があります。その結果、脱水症状や、それに伴う立ちくらみ、脱力感を引き起こします。

(2) 緊急搬送と重篤な合併症

激しい嘔吐を繰り返したことで、食道や胃の粘膜が裂けて出血し、緊急搬送されたという深刻な事例も報告されています。

さらに、この種の薬剤の重篤な副作用として、命に関わることもある「急性膵炎」や、腸が動かなくなる「イレウス(腸閉塞)」、そして「アナフィラキシー」などが挙げられており、決して軽視できるものではありません。


2.危険な使用法と「不健康な痩せ方」の問題点

こうした深刻な事態は、薬剤の不適切な使用方法によって引き起こされています。

(1) なぜ危険なのか:薬剤の作用

この薬剤が体重減少に繋がるとされるのは、胃腸の動きを意図的に遅らせ、満腹感を持続させる作用があるためです。しかし、この作用こそが、前述した激しい吐き気や消化器症状の直接的な原因となります。

(2) 自己判断のリスクと筋肉の減少

医師の厳密な管理下ではなく、副作用が軽くなったと感じて自己判断で用量を増やしたり、SNSなどで違法に入手したりするケースは極めて危険です。

また、医学的に減量の必要がない方が使用した場合、落ちるのは脂肪だけではありません。生命維持に必要な筋肉まで失ってしまい、かえって不健康な「痩せ方」になることが指摘されています。


3. 消化器内科医の視点:体からのSOSサイン

内科・消化器内科の専門家として、私たちは安易な薬剤使用によるリスクだけでなく、その症状に隠された別の病気の可能性も懸念しています。

(1) 危険な体重減少と隠れた疾患

急激な体重減少は、それ自体が健康を害するサインです。意図しない体重減少の裏には、胃がんや大腸がん、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)といった重大な病気が隠れている可能性があります。

(2) 放置すべきでない消化器症状

嘔吐、腹痛、腹部膨満感、便通異常(便秘・下痢)といった症状が続く場合、自己判断で放置するのは危険です。

例えば、腹部の張りは単なるガスではなく、腹水が溜まっている可能性もあります。症状が続く場合は、胃カメラ検査や大腸カメラ検査などで、消化管の粘膜の状態を直接確認し、原因を特定することが重要です。


まとめ:健康的な体重管理のために

この注射薬によるダイエットは、体に大きな負担をかけるだけでなく、使用を中止すれば強い食欲が戻り、リバウンドする可能性も高いとされています。

安易な情報に流されて健康を損なう前に、そのリスクを正しく認識しなくてはなりません。健康的な体重管理は、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理といった日々の生活習慣の改善から始まります。

もし、原因不明の体重減少や長引く消化器症状にお悩みでしたら、自己判断せず、速やかに医療機関までご相談ください。

※マンジャロについては適切に使用しなければ危険な事もあります。

 特異的な副反応として急性膵炎がありますが、膵炎は重症化すれば死亡率も高く危険な病気です。特に保険外で使用する場合は処方される医師と十分に相談の上で投与をお勧めします。

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