• 2025年4月23日

ピロリ菌除菌後の不安を解消!よくある症状と対処法、受診のタイミング

ピロリ菌の除菌治療、お疲れ様です。
現在治療中の方も、これから治療を始める方もいらっしゃるかもしれませんね。

ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍、そして胃がんのリスクを高めることが知られており、除菌治療はそのリスクを減らすための大切な一歩です。しかし、治療中や治療後に普段と違う体調変化を感じ、「これって大丈夫なのかな?」と戸惑いや不安を感じる方も少なくありません。

この記事では、ピロリ菌除菌に伴うよくある症状とその対処法、医療機関に相談すべきタイミング、そして除菌が終わった後も知っておいていただきたい大切な注意点について、分かりやすく解説します。皆さまの不安を少しでも解消し、安心して治療と向き合えるお手伝いができれば幸いです。


除菌治療中~直後によくある症状とその原因


除菌治療は、胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬(抗生物質)を組み合わせ、通常7日間服用します。この期間中や治療直後に、以下のような症状が出ることがあります。

  • 下痢・軟便: 最もよく聞かれる症状の一つです。抗菌薬の影響で腸内細菌のバランスが一時的に変化したり、腸が刺激されたりすることが原因と考えられています。
  • 味覚異常: 「食べ物の味がおかしい」「口の中が苦い」「金属のような味がする」といった症状です。処方される抗菌薬の種類(特にクラリスロマイシン)によっては、比較的起こりやすいとされています。
  • その他の症状: 吐き気や腹部の不快感、口内炎などが出ることもあります。また、頻度は高くありませんが、皮膚のかゆみや発疹といったアレルギー反応や、肝機能の検査値に変動が見られることも報告されています。

これらの症状の多くは、使用しているお薬による一時的な副作用です。


これって大丈夫?症状が出たときの対処法

副作用かな?と思っても、まず知っておいていただきたい大切なことがあります。

  • 基本は「自己判断で薬をやめない、減らさない」! 処方された薬は、必ず指示通りに7日間飲み切ることが非常に重要です。途中でやめてしまうと、ピロリ菌が完全に除去できずに再び増殖したり、薬が効かない「耐性菌」になってしまったりするリスクがあります。耐性菌になると、次の治療がより困難になる可能性があります。
  • 軽い下痢・軟便、軽い吐き気の場合:
    • 脱水を防ぐため、水分補給をしっかり行いましょう。
    • 食事はおかゆやうどんなど、消化の良いものを中心にし、脂っこいものや香辛料などの刺激物は避けましょう。
    • 整腸剤(プロバイオティクス)が症状緩和に役立つこともありますが、自己判断せず、まずは医師や薬剤師にご相談ください。
  • 味覚異常の場合: 多くの場合、治療が終了すれば自然に改善していきます。一時的なものと考えて、治療期間中は様子を見ましょう。

治療中の生活での注意点

  • 禁酒: アルコールは薬の効果を弱めたり、副作用(特に吐き気や頭痛など)を強くしたりする可能性があります。治療期間中は必ず禁酒してください。
  • 禁煙(推奨): 喫煙は胃の粘膜に負担をかけ、薬の効果を妨げる可能性も指摘されています。可能であれば治療期間中は禁煙することが望ましいです。

受診のタイミング:こんな時は必ず連絡・相談を!

副作用の程度によっては、医療機関への相談や連絡が必要です。以下の目安を参考にしてください。

【連絡】直ちに服薬を中止し、医療機関へ連絡してください

  • 発熱や激しい腹痛を伴う下痢
  • 便に血液や粘液が混じっている下痢
  • 発疹、全身のかゆみ、息苦しさなど 抗生剤によるアレルギー反応が疑われますので内服を中止し処方を受けた病院やクリニックへ連絡をお願いします。

【相談】自己判断で止めずに、まずは医師・薬剤師に相談してください

  • 軽いと思っていた下痢や味覚異常が、日を追うごとにひどくなる場合。
  • 嘔吐、食欲不振、強い頭痛など、生活や仕事に支障が出るほどの強い副作用が出ている場合。
    ※副作用がどうしても辛い場合、お薬の変更など、別の治療法を相談できる可能性もあります。我慢せずに状況を伝えましょう。
  • その他、上記以外でも気になる症状や心配なことがある場合。

副作用は個人差があります。不安な時は一人で抱え込まず、遠慮なく医師や薬剤師に相談することが大切です。


除菌治療が終わった後の体調変化

無事に除菌治療(お薬の服用)が終わった後も、しばらく体調の変化を感じることがあります。

  • 胃もたれ: 除菌が成功しても、胃もたれが続く、あるいは以前より感じるようになった、という方がいます。これは、ピロリ菌に長期間感染していた影響で、胃の粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」が進行しており、胃の消化機能が低下していることが原因かもしれません。胃粘膜の状態が改善するには時間がかかります。
    • 対処法: 食事はよく噛んでゆっくり食べる、消化の悪いもの(脂っこいものなど)を避ける、といった工夫が有効です。市販の胃薬を使う場合は注意が必要です。特に胃酸を抑えるタイプの薬は、萎縮で胃酸分泌が落ちている場合には逆効果になることもあります。薬剤師に相談して、消化を助けるタイプなどを選ぶようにしましょう。
  • 胸やけ: 少数ですが、除菌後に胸やけを感じる方がいます。これは、ピロリ菌によって抑えられていた胃酸の分泌が、除菌後に正常に戻ることで一時的に起こると考えられています。
    • 対処法: 多くは軽度で、次第に落ち着くことが多いですが、症状が強い場合や続く場合は医師に相談しましょう。

除菌後も続く「本当の安心」のために:胃がんリスクと定期検査の重要性

さて、ここが非常に大切なポイントです。 「ピロリ菌除菌が成功したから、もう胃がんの心配はない!」と思っていませんか?

残念ながら、それは誤解です。

除菌治療によって胃がんになるリスクは約3分の1に減るとされていますが、ゼロにはなりません

なぜリスクが残るのか? ピロリ菌に長年感染していたことで、胃の粘膜が既にダメージを受けている(萎縮性胃炎など)ためです。また、除菌治療をした時点で、目には見えないごく小さながんが既に存在していた可能性も否定できません。だからこそ、「除菌後の定期的な胃カメラ検査」が不可欠なのです。

  • 特に除菌後5年間は、年1回の胃カメラ検査を強く推奨します。 この期間は、除菌時に見逃されたかもしれない小さながんが発見可能な大きさになることがあるため、特に注意深い経過観察が重要です。
  • 胃の萎縮が進んでいた方、ご高齢で除菌された方は、その後も年1回の検査を続けることが望ましいでしょう。
  • 比較的お若く、胃炎の状態が軽かった方も、除菌後5年間は年1回の検査を受け、その後の検査頻度は医師と相談して決めていきましょう。

胃もたれや胸やけなどの症状があればもちろん早めに受診すべきですが、胃がんは初期には自覚症状がないことも多いため、症状がないから大丈夫、とは思わずに、定期的な胃カメラ検査で早期発見につなげることが、除菌後の「本当の安心」のために最も重要です。


不安を解消し、適切なケアで健康を守りましょう

ピロリ菌除菌治療は、将来の健康を守るための大切な投資です。治療中や治療後に一時的な体調変化が起こることはありますが、その多くは対処可能です。大切なのは、

  • 副作用について正しい知識を持つこと。
  • 自己判断で治療を中断せず、医師・薬剤師に相談すること。
  • そして、除菌後も安心せず、定期的な胃カメラ検査を必ず継続すること。

これらを守ることで、除菌治療の効果を最大限に活かし、長期的な健康へと繋げることができます。

当院では、ピロリ菌の検査・除菌治療から、除菌後の定期的な胃カメラ検査まで、一貫してサポートさせていただいております。鎮静剤を用いた苦痛の少ない胃カメラ検査も行っておりますので、検査が苦手な方もご安心ください。

どんな小さなことでも、不安や疑問があれば、どうぞお気軽に当院にご相談ください。一緒に、あなたの胃の健康を守っていきましょう。


ピロリ菌の早期発見・早期治療で胃がん予防を

ピロリ菌については、まだまだ一般の方への情報が不足してると思います。慢性胃炎を起こし胃癌の最大の原因とされているため、なるべく早い年齢での検査をお勧めしています。

ピロリ菌は通常5歳ころまでに感染し胃に定着するとされていますので、55歳で除菌治療を受けた場合でも50年間ピロリ菌を持っていたことになります。長期間ピロリ菌によって慢性胃炎が進行すると共に胃癌のリスクも上がっていきます。

「胃のバリウム検査で胃炎を指摘されているがそのままにしている」

「家族がピロリ菌の除菌治療を受けた」

「40歳以上で時々胃の症状があるが胃カメラやピロリ菌検査を受けたことがない」

などの方は特にお勧めします。
将来的には早めの除菌治療にて胃癌撲滅も可能となるかもしれません。

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