- 2025年8月27日
【医師が解説】夏のお腹の不調、それ夏バテじゃないかも?夏に多い胃腸炎・食中毒の原因と対策

こんにちは、たなか内科クリニックの田中です。
うだるような暑さが続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
「最近、食欲がなくて体がだるい…」
「お腹の調子が悪い…」
こうした症状を「夏バテかな?」と感じている方も多いかもしれません。しかし、その不調、もしかしたらウイルスや細菌による「感染性胃腸炎」かもしれません。今回は、夏に多発するお腹のトラブルについて、その原因とご家庭でできる対策をお伝えします。
なぜ夏はお腹の調子を崩しやすいの?

夏場は、主に3つの理由から胃腸のトラブルが増加します。
- 胃腸機能の低下:暑さによる自律神経の乱れや、冷たい飲食物の摂りすぎで、胃腸の働きそのものが弱りがちです。
- 免疫力の低下:寝苦しさによる睡眠不足や食欲不振(夏バテ)は、体の抵抗力を下げてしまいます。
- 病原体の活発化:胃腸炎の原因となる細菌や一部のウイルスは、高温多湿の環境を好み、夏に繁殖が活発になります。
弱った胃腸に、活発化した病原体が攻撃を仕掛けてくることで、夏に胃腸炎が多発するのです。
夏の胃腸炎、主な原因と症状

夏に流行する胃腸炎の原因は、大きく「細菌性」と「ウイルス性」に分けられます。
種類 | 主な原因 | 症状の特徴 |
---|---|---|
細菌性(食中毒) | サルモネラ菌(卵、鶏肉など) カンピロバクター(加熱不十分な鶏肉) 病原性大腸菌(O-157など)(食肉類) 黄色ブドウ球菌(人の手を介した食品) | 比較的短い潜伏期間の後、激しい腹痛や下痢(時に血便)、発熱などを引き起こすことが多い。 |
ウイルス性(お腹の風邪) | エンテロウイルス アデノウイルス ノロウイルス(夏場も発生) | 腹痛・下痢・嘔吐に加え、発熱や喉の痛みなど風邪に似た症状を伴う。 「手足口病」や「ヘルパンギーナ」「プール熱」の原因にもなる。 |
「ノロウイルスは冬」というイメージが強いですが、一年を通して発生するため夏場も油断は禁物です。
ご家庭で実践!感染症・食中毒の予防策
夏の胃腸トラブルを防ぐには、原因となる病原体を「付けない・増やさない・やっつける」ことが鉄則です。
予防の基本①:食中毒予防の3原則

付けない(清潔)
- 調理前、食事前、トイレの後は、石鹸と流水で30秒以上かけて丁寧に手を洗いましょう。
- 生の肉や魚を切ったまな板や包丁は、その都度よく洗い、可能なら熱湯消毒を。野菜などと使い分けるのが理想です。
増やさない(迅速・冷却)
- 購入した生鮮食品はすぐに冷蔵庫へ。
- 作った料理を室温で長時間放置するのは避けましょう。
やっつける(加熱)
- 肉料理は特に、中心部まで十分に(中心温度75℃で1分以上)加熱しましょう。
予防の基本②:夏バテを防ぎ免疫力を保つ

- バランスの良い食事を心がけ、麺類だけで済ませず、温かい汁物や煮物も取り入れましょう。
- 適切な水分補給を。ただし、冷たいジュースやアルコールの摂りすぎは胃腸の負担になります。
- 十分な休養と睡眠をとり、クーラーはタイマーを活用するなどして体を冷やしすぎないようにしましょう。
もし症状が出たら?受診の目安と対処法

まずは安静と水分補給
下痢や嘔吐は、体から病原体を排出しようとする大切な体の反応です。症状があるときは無理をせず、ゆっくり休みましょう。最も大切なのは水分補給です。嘔吐や下痢で水分と共に塩分(電解質)も失われるため、水やお茶だけでなく、経口補水液の活用が非常に効果的です。
下痢止めは自己判断で使わないで!
市販の下痢止めは、病原体の排出を妨げ、かえって回復を遅らせてしまう可能性があります。使用する前に、必ず医師にご相談ください。
【重要】こんな症状はすぐに受診を!

特に小さなお子さんやご高齢の方は脱水症状を起こしやすいため、以下のサインが見られたら、速やかに医療機関を受診してください。
・嘔吐が続いて水分が全く摂れない ・おしっこの回数や量が明らかに減った ・ぐったりして元気がない、意識がはっきりしない ・激しい腹痛や血便が続く ・高熱が続いている |
まとめ

夏のお腹の不調は、単なる夏バテと見過ごされがちですが、その裏には感染性胃腸炎が隠れていることが少なくありません。
ご家庭での予防策を徹底するとともに、つらい症状が続く場合は我慢せず、お気軽に当院までご相談ください。適切な診断と治療で、つらい症状からの早期回復をサポートします。
※最近は異常な気温の高さとなっており、ご高齢の方は特に体調変化がでやすいと思います。
熱中症では、頭痛・吐き気・しんどさが中心となりますが、胃腸炎と鑑別が必要な場合もあります。特に嘔吐や下痢があると、脱水が進みやすく水分摂取のみでは回復に数日必要なる場合がありますので注意が必要です。胃腸炎か夏バテ、熱中症かなと思う場合は一度受診をお勧めします。