- 2025年9月18日
慢性胃炎・萎縮性胃炎は胃がんの危険信号。放置せず、胃カメラ検査を。

「最近、胃がムカムカする」
「少し食べただけですぐに胃がもたれる」
このような症状は、多くの方が一度は経験する身近な不調かもしれません。しかし、その症状を「いつものことだから」「ただの胃炎だろう」と市販薬で済ませていませんか?その胃の不調は、あなたの胃が発している重要なSOSサインかもしれません。単なる胃炎と軽視することで、将来の大きな病気を見逃してしまう可能性があります。
急性胃炎と慢性胃炎の違いとは?

胃の粘膜に炎症が起きる状態を「胃炎」と呼びますが、これには大きく分けて2つのタイプがあります。
- 急性胃炎: ストレス、暴飲暴食、アルコールの過剰摂取、痛み止めの服用などが原因で、一時的に胃の粘膜が荒れてしまう状態です。原因が取り除かれれば、比較的短期間で改善することが多いです。
- 慢性胃炎: 炎症が長期間にわたってじわじわと続く状態です。自覚症状が乏しい場合も多く、気づかないうちにゆっくりと進行していきます。そして、この慢性胃炎の約8割の原因とされているのが「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)」の感染です。
胃がんの最大の原因「ピロリ菌」と「萎縮性胃炎」の怖い関係

ピロリ菌は、強い酸性の胃の中でも生息できる特殊な細菌です。主に幼少期に感染し、胃の粘膜にすみ着いて、粘膜を傷つける毒素を出し続けます。
このピロリ菌による炎症が長期間続くと、胃の粘膜は徐々に破壊され、薄く痩せ細ってしまいます。この状態が「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」です。

萎縮性胃炎がさらに進行すると、胃の粘膜がまるで小腸や大腸の粘膜のようなものに置き換わってしまう「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」という状態に至ります。
この「萎縮」と「腸上皮化生」が起きた粘膜は、胃がんが発生する土壌となってしまいます。実際に、ピロリ菌が原因で発生する胃がんの多くは、この萎縮性胃炎をベースに発生することが分かっています。そのため、萎縮性胃炎は胃がんの「前がん病変(がんになる一歩手前の状態)」と考えられており、決して軽視できないのです。
「バリウム検査で異常なし」は安心できない?胃カメラを強く推奨する理由

「健康診断で毎年バリウム検査を受けているから大丈夫」
そう考えている方も多いかもしれませんが、実は大きな落とし穴があります。
バリウム検査は、胃の形や大きな凹凸(進行がんなど)を見つけるのには有効ですが、ごく初期の胃がんが持つ、わずかな粘膜の色の変化や、平坦な形の病変を発見することは極めて困難です。
一方で、胃カメラ(内視鏡検査)は、食道・胃・十二指腸の粘膜をカメラで直接、詳細に観察できます。モニターで数十倍に拡大して見ることができるため、ミリ単位の小さな病変や、粘膜のわずかな色の違いも見逃しません。

胃カメラのメリット
・粘膜の色や凹凸を直接観察できるため、早期がんの発見率が格段に高い
・疑わしい部分があれば、その場で組織を採取して病理検査(生検)に提出し、確定診断ができる
・ピロリ菌の感染診断も同時に行える
実際に、バリウム検査で「慢性胃炎のため経過観察」とされていた方が、胃カメラで詳しく調べたところ、すでに進行した胃がんが見つかるというケースは決して少なくありません。胃がんから命を守るためには、早期発見・早期治療が何よりも重要であり、そのためには胃カメラ検査が不可欠なのです。
当院では、内視鏡検査に精通した院長が検査を担当いたします。鎮静剤を使用してうとうとと眠っている間に検査を行う「無痛内視鏡検査」も可能ですので、「検査が怖い」「以前つらい思いをした」という方も、安心してご相談ください。
症状がなくても、一度ご自身の胃の状態を知っておきましょう

慢性胃炎、そして早期の胃がんは、ほとんど自覚症状がありません。症状がないからといって、胃の中が健康であるとは限らないのです。知らないうちに病気が進行している可能性も十分にあります。
・40歳を過ぎた方 ・ご家族に胃がんになった方がいる方 ・過去にピロリ菌感染を指摘された、または除菌治療を受けたことがある方 |
上記に当てはまる方は、特に一度胃カメラ検査を受けることをお勧めします。
特に重要なのは、ピロリ菌の除菌に成功した方でも、胃がんのリスクはゼロにはならないという点です。除菌によって将来のがんリスクは大幅に低下しますが、除菌した時点ですでに萎縮性胃炎や腸上皮化生が進行している場合、その粘膜からがんが発生する可能性は残ります。
だからこそ、除菌後も定期的に胃カメラで経過を観察し、胃の状態をチェックし続けることが非常に大切なのです。
ご自身の胃の状態を正確に把握し、未来の健康を守るために、ぜひ一度当院の胃カメラ検査をご検討ください。どんな些細なご不安でも、お気軽にご相談いただければ幸いです。
※一般的な急性胃炎・急性胃腸炎の場合は1週間以内に症状が良くなることがほとんどです。反対に1週間以上症状が続く場合は検査を推奨します。
なお、健診時に胃のバリウム検査を受けている方についてですが、検査結果に慢性胃炎疑いや胃炎疑いと記載がある場合は、ピロリ菌の関与が考えられますので、判定がBやCであっても受診をお勧めします。