- 2025年9月18日
【死亡率10%も】胆管炎はなぜ怖い?胆のう炎との違いと症状・治療法

「胆のう炎」と「胆管炎」。どちらも胆石が原因で起こることが多い、よく似た名前の病気です。
しかし、この2つの病気、実は危険度が全く異なります。
特に「急性胆管炎」は、ある報告によると死亡率が約10%にも上る、非常に恐ろしい病気だということをご存知でしょうか。
こんにちは。明石市のJR大久保駅北口すぐ、たなか内科クリニックです。
今回は、なぜ胆管炎は命に関わるほど危険なのか、胆のう炎と何が違うのか、そして命を守るために知っておくべき症状と治療法についてお伝えいたします。
「胆のう炎」と「胆管炎」- 危険度が全く違う2つの病気

なぜ、これほど危険度が違うのか。その理由は、炎症が起きている「場所」にあります。
胆汁の通り道を、道路に例えてみましょう。
- 胆管: 肝臓から十二腸へ胆汁を運ぶ、交通の要所である「幹線道路」
- 胆のう: 胆管の途中にあり、胆汁を一時的に溜める「袋小路の駐車場」
このように考えると、2つの病態が明確にイメージできます。
- 急性胆のう炎: 「駐車場」の出口が胆石で塞がれ、中で炎症が起きている状態。交通網全体への影響は限定的です。
- 急性胆管炎: 「幹線道路」が胆石などで塞がれ、胆汁が大渋滞を起こしている状態。体全体のシステムに重大な影響を及ぼします。
なぜ胆管炎は命に関わるのか?

「幹線道路」である胆管が詰まってしまうと、体の中では非常に危険な事態が進行します。
理由1:細菌が全身に広がる「敗血症」を引き起こすから
胆管で胆汁が大渋滞を起こすと、行き場を失った胆汁の中で細菌が爆発的に増殖します。さらに、高まった内圧によって、細菌や毒素が血管内に逆流し、血液に乗って全身に広がってしまいます。これが「敗血症」です。
敗血症は、特定の臓器だけでなく全身が感染症に侵された状態で、血圧低下によるショックや多臓器不全など、命に直結する極めて危険な状態です。
理由2:危険のサイン「黄疸」を見逃してはいけないから
この胆汁の逆流が、症状として体に現れたものが黄疸(おうだん)です。
腹痛や発熱は胆のう炎でも起こりますが、黄疸は胆管炎(幹線道路の渋滞)を強く示唆する決定的なサインです。
- 胆のう炎: 腹痛、発熱。黄疸は稀。
- 胆管炎: 腹痛、発熱、黄疸の3つが典型的な症状(シャルコーの3徴)。
この違いこそが、両者の危険度の差(死亡率:胆のう炎<1% vs 胆管炎~10%)に直結しているのです。
診断と治療 – 迅速な対応が命を救う
これらは症状が急激に悪化するため、迅速かつ的確な診断と治療が何よりも重要です。
診断

問診や診察に加え、以下の検査で診断を確定します。
- 血液検査: 白血球やCRPといった炎症反応の数値や、肝臓・胆道系の数値(ビリルビンなど)を調べ、黄疸の程度や炎症の強さを客観的に評価します。
- 腹部超音波(エコー)検査: 胆のうの腫れや胆石の有無はもちろん、胆管が拡張していないか(渋滞していないか)を直接観察し、胆のう炎か胆管炎かを見極めます。
治療方針の違い

- 胆のう炎の場合: まずは抗生剤の点滴で炎症を抑えます。その後、原因となっている胆石ごと胆のうを摘出する手術(主に腹腔鏡下手術)を行います。
- 胆管炎の場合: 命の危険があるため、何よりもまず「幹線道路の復旧」が最優先です。口からの内視鏡で詰まった石を取り除いたり、溜まった胆汁を外に出したりする「緊急胆道ドレナージ」という処置が必要になります。
迷ったら、ためらわずに受診を

- 急な腹痛と発熱に加え、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)症状が出た場合は、命に関わる急性胆管炎の可能性があります。
- 胆管炎は急速に悪化し、敗血症を引き起こす非常に危険な病気です。
- 特に高齢者は、はっきりした症状が出ないまま重症化することもあるため、周囲の方も注意が必要です。
「ただの胃腸炎だろう」という自己判断が最も危険

当院では、腹部エコー検査や血液検査により、その腹痛が緊急性の高いものかどうかを迅速に初期診断することが可能です。専門的な治療が必要と判断した場合は、地域の基幹病院と緊密に連携し、速やかに治療が開始できるよう責任を持って対応いたします。
気になる症状があれば、決して我慢せず、明石市のJR大久保駅北口すぐ、たなか内科クリニックへご相談ください。
※胆のう炎と胆管炎は合併する場合も多いです。例えば胆管の出口付近に結石がつまった場合は、肝臓で作られた胆汁が排出されず、肝臓に逆流して黄疸を発症、胆のうに逆流して胆のうが腫大(大きくなる)し胆のう炎を起こします。
胆のうに結石がある場合は、胆管にも結石が無いか慎重な判断が必要となります。