• 2025年9月19日

【血便・便潜血】おしりからの出血を痔だと決めつけないで。医師が解説する原因と対処法

トイレットペーパーに付着した鮮血、あるいは便に混じった血液。

健康診断で返ってきた「便潜血陽性」の通知。

おしりからの出血に気づいたとき、「きっと痔だろう」と軽く考えたり、あるいは「重大な病気だったらどうしよう」と大きな不安に駆られたりする方は少なくありません。

明石市のたなか内科クリニックです。

今回は、その出血が体からのどんなサインなのか、便の色や状態からわかること、考えられる病気、そして最も重要な「次に何をすべきか」についてお伝えします。


まずは観察を。便の色が教えてくれること

血便と一言でいっても、その色や状態は様々です。便の状態は、出血している場所を推測する上で非常に重要な手がかりとなります。

鮮血便(真っ赤な血)

便の表面に付着したり、排便後にポタポタ垂れたりする、鮮やかで真っ赤な血です。肛門や直腸など、出口に近い場所からの出血が考えられ、最も多い原因は痔です。

暗赤色便(やや黒ずんだ赤色)

イチゴジャムのような、少し黒みがかった赤色の血液が便に混じっている状態です。出血してから時間が少し経過しているサインで、大腸の奥の方(横行結腸など)からの出血が疑われます。

粘血便(ゼリー状の血)

ドロっとした粘液と血液が混じった便です。これは腸の粘膜に炎症が起きている特徴的なサインで、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患が強く疑われます。

黒色便(タール便)

海苔の佃煮のように、ドロっとした真っ黒な便です。これは胃や十二指腸など、上部消化管からの出血が、胃酸によって黒く変化したものです。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどの可能性があり、早急な胃カメラ検査が必要になる場合があります。


血便・便潜血の主な原因

おしりからの出血には、良性のものから、早期発見が重要な病気まで、様々な原因が考えられます。

痔(痔核・裂肛)

最も一般的な原因です。多くは鮮血便で、排便時のいきみなどがきっかけになります。

大腸ポリープ・大腸がん

最も注意が必要な病気です。初期の段階では、目に見えないほどの微量な出血(便潜血)であることがほとんどです。目に見える血便が出たときには、がんが進行しているケースも少なくありません。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

腸に慢性的な炎症が起こり、粘血便や下痢、腹痛などの症状を繰り返します。

虚血性腸炎・感染性腸炎

大腸の血流障害や、O-157などの細菌感染によって腸の粘膜が傷つき、突然の腹痛とともに出血します。

胃・十二指腸潰瘍など

黒色便の原因となります。出血量が多い場合は、緊急での対応が必要です。


健康診断の「便潜血陽性」、どうすればいい?

健康診断で「便潜血陽性」と通知されると、多くの方が「大腸がんかもしれない」と心配になります。まず知っていただきたいのは、「陽性=大腸がん」ではないということです。

便潜血検査は、病気の可能性がある人を見つけ出すための「スクリーニング(ふるい分け)検査」です。非常に感度が高く、痔のような良性の病気によるわずかな出血も拾い上げます。

しかし、ここからが最も重要です。

「陽性」という結果は、消化管のどこかから出血している、という紛れもない事実です。その原因が痔なのか、ポリープなのか、あるいはがんなのかを突き止めるためには、必ず「大腸カメラ(大腸内視鏡検査)」による精密検査が必要です。

「どうせ痔だろう」「去年も陽性だったけど大丈夫だったから」といった自己判断で精密検査を受けないことが、がんの発見を遅らせる最大の原因となります。


まとめ:医師からのメッセージ

これまで多くの患者様を診察していると、「何年も前から出血はあったが、痔だと思い込んで放置していた」という方に遭遇することが少なくありません。そして、もっと早く受診していただけていれば…と悔しい思いをすることも一度や二度ではありませんでした。

  • 目で見てわかる出血がある方
  • 健康診断で便潜血陽性を指摘された方

どちらの場合も、自己判断は絶対にせず、必ず消化器内科を受診してください。そして、40歳を過ぎたら、症状がなくても年に一度は大腸がん検診(便潜切検査)を受けることが、あなたとあなたの大切な人の未来を守るための、最も確実な方法です。

当院では、皆さまの不安に寄り添い、適切な検査と診断を行っております。どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。

※大腸カメラの検査に抵抗を持つ方は多いと思います。昨年の健診で陽性の結果となり大腸検査したが異常なかったけど、今年も便潜血反応陽性となった場合、再検査をお勧めしています。1年間で新たな病気やポリープが無いとは言い切れないからです。

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