• 2025年10月16日

痔だと思って放置していませんか?もしかしたら「クローン病」かもしれません

「もしかして痔かな?」そう思って、肛門の不調を我慢していませんか?もしかすると、その症状は「クローン病」という国の指定難病かもしれません。

当院では、消化器専門のクリニックとして、皆さんの気になる症状に真摯に向き合っています。今回は、意外と知られていないクローン病の「肛門の症状」に焦点を当て、早期発見・早期治療の大切さをお伝えします。


クローン病ってどんな病気?

クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも炎症が起こる慢性の病気です。特に小腸や大腸に炎症が出やすく、腹痛、下痢、血便、体重減少などが主な症状として挙げられます。

炎症が腸の深い層にまで及ぶのが特徴で、病気が進行すると、腸が狭くなる「狭窄」や、腸に穴が開いてしまう「穿孔(せんこう)」、そして隣接する臓器とつながる「瘻孔(ろうこう)」などの合併症を引き起こすことがあります。

潰瘍性大腸炎との違い

クローン病とよく比較される潰瘍性大腸炎は、大腸(結腸)と直腸のみに炎症が起こるのに対し、クローン病は消化管のどこにでも炎症が現れる可能性があります。


若い人に多い病気?実は近年増加傾向にあります

クローン病は、20~30代の若い世代に多く見られます。特に男性では20~24歳、女性では15~19歳での発症が多いとされています。中にはお子さんのうちに発症することもあり、その場合は栄養吸収障害によって成長に影響が出る可能性もあります。

Yahoo!ニュースの記事でもご指摘されている通り、近年、日本でもクローン病の患者さんが増えてきています。これは、動物性脂肪やたんぱく質を多くとる欧米型の食生活の広まりと関連があると考えられています。原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要因、免疫システムの異常、食生活などが関係していると考えられています。

参考記事)「痔かと思ったらクローン病だった」─若年層に広がる肛門の異変とは


「痔だと思ったらクローン病だった」ケースに注意!

クローン病の患者さんの約半数に、肛門に炎症が起こる「肛門病変」がみられます。この肛門病変は、一般的に知られている切れ痔や痔ろうとよく似た症状(痛み、出血、膿が出るなど)を引き起こすため、「ただの痔だろう」と自己判断してしまい、受診が遅れるケースが少なくありません。

クローン病による肛門病変を放置すると、炎症がさらに悪化し、強い痛みや化膿、出血が続くことがあります。重症化すると、肛門が狭くなって排便が困難になったり、女性の場合には肛門と膣の間に穴が開いてしまうなど、生活に大きな支障をきたす可能性もあります。

このような深刻な状況を避けるためにも、以下のような症状が続く場合は、たとえ痔だと思っていても、消化器内科医に相談することが大切です。

  • 10日以上、1日に5回以上の下痢や血便が続く
  • 繰り返し腹痛がある
  • 体重が減少した
  • 肛門の痛みや腫れ、膿が出る症状が続いている
  • カップラーメン、スナック菓子、ファーストフードなどを食べた後に、毎回お腹をこわしたり、下痢をしたりする

特に若い方で、上記のような症状に心当たりのある方は、親御さんやご家族の方も気にかけてあげてください。


早期発見・早期治療が何よりも大切

どんな病気でも、早期に発見して適切な治療を開始することが、回復への近道です。クローン病も例外ではありません。病気が進行すればするほど治療は難しくなり、長期間にわたる治療が必要になる可能性が高まります。

クローン病は難病指定されていますが、現在では薬物療法(抗炎症薬、免疫調整薬、生物学的製剤など)や栄養療法、さらには手術など、さまざまな治療法が開発され、炎症をコントロールできるようになってきています。

患者さん自身の脂肪組織から幹細胞を採取・培養し、痔ろうの穴をふさぐ新しい治療法も登場しており、複数の診療科が連携して治療にあたることで、より良い経過を目指すことが可能になっています。炎症が落ち着いていれば、普段と変わらない生活を送ることも可能です。また、医療費助成制度も利用できますので、経済的な負担についてもご安心ください。

クローン病は潰瘍性大腸炎よりは患者さんの人数は少ないとされていますが、より急な症状の変化を認める場合があります。 早期に診断が付かない場合もあり、その場合は近隣の連携病院への紹介も行い、最善の対応を行っていくつもりです。幸い新しい薬も沢山発売されており、以前よりは症状の調整が可能となってきています。

当院では、皆さんの症状を詳しく伺い、血液検査、内視鏡検査、画像検査などを組み合わせて、正確な診断を行います。必要に応じて、より専門的な治療が可能な基幹病院とも連携し、患者さん一人ひとりに最適な治療計画をご提案します。

肛門の症状は恥ずかしいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご自身の健康を守るために、勇気を出して医療機関を受診することが何よりも重要です。

「もしかして?」と感じたら、迷わずにたなか内科クリニックにご相談ください。

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