- 2025年11月14日
大腸がんの「再発の可能性」と「完治」を目指す治療・予防策
ステージ別リスクと生活習慣の見直し

こんにちは、明石市大久保のたなか内科クリニックです。
大腸がんは、早期に発見し治療を行うことで高い生存率が期待できるがんですが、治療後も再発のリスクと向き合っていく必要があります。今回は、大腸がんの再発率、再発の種類や治療法、そしてご自身でできる再発予防策についてお伝えします。
1.大腸がんの再発率と再発リスクを高める要因

大腸がんは、他のがんと比較して再発率が比較的低いがんとされています。全ステージの平均再発率は18.7%と報告されています。しかし、再発リスクはがんの進行度(ステージ)によって大きく異なります。
| ステージ | 進行段階の概要 | 再発率の目安 |
| ステージⅠ | がんが粘膜の筋層までに留まっている段階 | 約5.7% |
| ステージⅡ | がんが周囲に広がっている段階 | 約15% |
| ステージⅢ | リンパ節転移を認める段階 | 約31.8% |
再発リスクを左右する要因
再発は、主にがんを切除した後に体内にがん細胞が残っていた場合や、がんが進行していた場合に起こります。
- 進行度合い:深達度(粘膜からどれほど深く浸潤しているか)、リンパ節転移や遠隔転移(肺や肝臓)の有無によって判断されます。進行しているほど、完全な切除が難しくなります。
- 細胞の残存:再発するケースの多くが、内視鏡や手術で切除した後、目に見えないがん細胞が残存していることによるものです。
- がんの部位:肛門に近い直腸がんは、手術時の視野が限られ、周囲への影響も考慮する必要があるため、切除範囲が最小限となることが多く、再発リスクが高くなる傾向があります。
2. 再発の種類と完治を目指す治療方法
再発には主に4種類あり、その状況に応じて治療方法が選択されます。
大腸がんの4つの再発形式
- 局所再発:大腸がんを切除した領域またはその付近に、がんが再び出現した状態です。
- 遠隔転移:大腸とは違う臓器にがんが転移した状態です。特に肺や肝臓への転移が起こりやすいとされます。
- 腹膜播種(ふくまくはしゅ):腸の外側を覆う膜(腹膜)に、がんが種をまいたように転移した状態です。
- 吻合部再発(ふんごうぶさいはつ):手術で大腸をつなぎ合わせた部分(吻合部)にがんが再発した状態です。
再発後の治療指針と完治の可能性
再発した場合の治療方法は、「再発大腸がんの治療ガイドライン」などに基づいて決定されます。
- 治療の第一選択:再発した部分を手術で切除できると判断された場合、切除術が行われます。
- 切除が困難な場合:肝転移や肺転移などで切除が難しい場合、全身の健康状態(パフォーマンスステータス)に問題がなければ、薬物療法(抗がん剤)や放射線治療が行われます。
- 完治の可能性:手術によって再発したがんを切除できれば、完治する可能性があります。また、最初は手術が不可能と判断されても、薬物療法の効果でがんが縮小し、その後手術が可能となって完治に至ることもあります。
- 再発のリスク:一度再発すると、体内にがん細胞が残っている可能性があり、再発を繰り返すリスクは高まります。しかし、再発後の治療が成功すれば、その後の再発リスクを低減させることは可能です。
3. 再発の早期発見と予防のための取り組み
再発の可能性を念頭に置き、定期的な検査と生活習慣の改善を継続することが、完治の可能性を高めるために最も重要です。
病院での定期検査(経過観察)

大腸がんの再発は、その95%以上が手術後5年以内に見つかるため、治療後5年間の経過観察が特に重要とされています。
| 検査対象 | 検査の頻度(手術で切除した場合の目安) | 検査内容 |
| 術後3年間 | 3ヵ月に1回(診察、血液検査)、6ヵ月ごとに画像検査(CT) | 問診、腫瘍マーカー(CEA, CA19-9)測定、胸部レントゲン、CT、腹部超音波、大腸内視鏡など |
| 術後4〜5年 | 6〜12ヵ月に1回(血液検査、CT) | 血液検査、CTなど |
| 内視鏡切除後 | 大腸内視鏡検査による定期 | 局所再発の有無を確認 |
また、再発予防のため、ステージⅢ(リンパ節転移を認める段階)の大腸がんでは、3〜6ヵ月間の術後補助化学療法が推奨されます。
4.ご自身でできる再発予防のための生活習慣(9つのポイント)

再発を早期に発見するためには、定期通院・定期検査を忘れないことが何よりも重要です。さらに、大腸がんの一次予防と同様に、以下の生活習慣の見直しが再発予防に役立ちます。
| 1.偏った食生活の改善 2.加工肉や赤肉類の食べすぎに注意 3.カルシウムの摂取 4.食物繊維の摂取 5.節酒 6.禁煙 7.運動不足の解消 8.腸内環境を整える 9.肥満を改善する |
まとめ

大腸がんの治療を終えた後、再発の可能性をゼロにすることはできません。しかし、治療後の経過観察と適切な生活習慣の見直しによって、再発の予防や、万が一再発した場合の早期発見・早期治療が可能です。
特に手術後3〜5年間は再発リスクが高い大切な時期です。主治医の指示に従い、定期的な検査を欠かさず受けることが、長期的な健康と安心に繋がります。

当クリニックでは、こうした治療後の経過観察における定期的な大腸カメラ(内視鏡検査)にも力を入れております。再発に関するご不安や、予防のための生活習慣についてのご相談も承っておりますので、明石市大久保駅すぐのたなか内科クリニックまで、どうぞお気軽にご相談ください。
※大腸がんを発症された方はポリープのリスクも高くなります。術後5年を経過したから大丈夫と思い、検査を行わない場合、別の場所にポリープや癌が発生することもあります。5年以上経過しても数年毎でも良いので大腸カメラをお勧めしています。