• 2025年11月14日

20代・30代でも胃がんになる?見逃したくない「胃がんの前兆」と初期症状セルフチェック

「胃がもたれる」「最近、食欲がない」。もしあなたが20代、30代でこのような胃の不調を感じたとしても、「まだ若いから大丈夫」「きっとストレスや食べ過ぎだろう」と軽く考えてしまいがちではないでしょうか。

しかし、日本人に多い病気である胃がんは、早期発見ができれば治癒率が非常に高い(ステージIで5年生存率が90%以上)一方で、初期の段階では特有の自覚症状がほとんどない「サイレントキラー」として知られています。

特に若い世代に発症する可能性がある、進行の早い「スキルス胃がん」の存在も知られています。

今回は、「若いから心配ない」という油断が早期発見を遅らせるリスクについて解説するとともに、見逃したくない胃がんのサインと、適切な受診のタイミングについてご紹介します。


1. 「若いから大丈夫」は禁物!若年層と胃がんのリスク

胃がんは、発症年齢のピークが80歳代であり、50歳を過ぎると徐々に罹患率が増加する病気ですが、比較的若い世代でも発症するケースは存在します。

若年層に潜む「スキルス胃がん」の危険性

胃がんにはいくつか種類がありますが、特に若年層や女性に多く見られる傾向があるのが「スキルス胃がん」です。

スキルス胃がんは、胃の粘膜表面の変化が少なく、胃壁全体を硬く厚くさせながら広がるのが特徴であり、進行が非常に速いため「サイレントキラー」とも呼ばれています。実際に、20代の若さでスキルス胃がんにより亡くなった著名人の事例も報じられています。

スキルス胃がんを含む進行がんの場合、発見時にはすでに転移しているケースも少なくなく、治療が難しくなる傾向があります。このため、「症状がないうちに検査を受けること」が、将来の健康を守る上で重要になります。


2. 初期症状セルフチェック:胃炎や胃腸風邪との区別

胃がんの初期症状は、胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎など、他の一般的な胃の病気でよく見られる症状と区別がつきにくいという大きな特徴があります。そのため、「食べ過ぎたかな」「疲れているだけかも」と自己判断し、医療機関の受診が遅れてしまうことが、進行がんにつながる原因となります。

以下のような症状が長期間続いている場合は、胃がんの可能性もゼロではないため、注意が必要です。

症状(胃がんのサインかもしれない症状)見逃しやすいポイント
胃(みぞおち)の痛み・不快感シクシク、キリキリする痛みや重苦しさ。胃潰瘍などでも同様の症状が現れます。胃の出口付近にがんがある場合、食べ物が送られにくくなり、痛みや不快感の原因となることがあります。
胃もたれ・胸やけ・吐き気食後の消化不良感やむかつき。逆流性食道炎と勘違いされることがあります。
食欲不振なんとなく食欲がない状態が続く。
原因不明の体重減少食事量が変わっていないのに体重が減る場合は特に注意が必要です。過去6か月間で5%以上の体重減少がある場合は特に注意が必要です。
黒色便(タール便)便が海苔の佃煮のように真っ黒になる。これは、胃や十二指腸など上部消化管からの出血が、胃酸と混ざって黒く変色した血液が便と混じって排出されているサインです。

※げっぷやおならが増えることは、基本的に胃がんを直接の原因として現れることはまれですが、がんが進行し、食べ物が通りづらくなると、みぞおちが重苦しくなり、げっぷが多くなることは考えられます。


3. 若年層でも注意すべき胃がんの2大リスク要因

胃がんの発症リスクを高める最大の要因や遺伝的要素は、若いうちから知っておき、対策を講じることが重要です。

1.ヘリコバクター・ピロリ菌への感染歴

胃がんの原因の95%以上は、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染が関与していると言われています。

ピロリ菌は通常、幼少期(5歳頃まで)に感染し、除菌しない限り一生胃の中に棲みつき、胃粘膜に慢性的な炎症(慢性胃炎)を引き起こします。この慢性的な炎症が進行し、胃粘膜が薄く痩せてしまう萎縮性胃炎になると、胃がんのリスクが大幅に高まります。

ピロリ菌に感染していても自覚症状はほとんどないため、特に40歳以上で胃カメラ検査やピロリ菌検査を受けたことがない方は、検査を検討することが推奨されています。

2. 遺伝的な要因(がんの家族歴)

血縁者に胃がんの既往(家族歴)がある場合、胃がんの発症リスクが高くなることがわかっています。特にスキルス胃がんの一部では、遺伝的な要因が影響している可能性も指摘されています。

家族に胃がん患者がいる方は、年齢に関わらず、積極的に検査を検討する必要があります。

3. 早期発見と安心のために:胃カメラ検査の必要性

胃がんは初期には自覚症状が少ないため、症状が出てから医療機関を受診するよりも、症状がない段階で定期的な胃カメラ検査(上部内視鏡検査)を受けることが、最も確実な早期発見の方法です。


4.症状が続くなら、すぐに胃カメラを

「いつもの胃炎」だろうと自己判断せず、軽い症状でも胃薬を1週間以上服用しても改善しない場合は、胃カメラ検査を受けることが強く推奨されます。これは、胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんといった疾患を見逃さないために非常に重要です。

胃カメラ検査では、食道、胃、十二指腸の粘膜を医師が直接目で見て詳細に観察できるため、小さな病変や色調の変化も捉えやすく、胃がんの確実な発見につながります。

ピロリ菌除菌後も「定期検査」は継続

ピロリ菌を除菌できたとしても、長年の感染によって既に胃粘膜にダメージ(萎縮性胃炎)が残っているため、胃がんのリスクはゼロにはなりません。

除菌後も、胃がんを確実に予防するためには特に除菌後5年間は年に1回の胃カメラ検査を強く推奨しており、胃の萎縮の程度や年齢に応じて、その後の頻度を医師と相談して決める必要があります。


苦痛の少ない検査を選び、不安を解消

「胃カメラは苦しい」というイメージから検査を避けている方も多いかもしれませんが、近年は鎮静剤(静脈麻酔)を使用してウトウトと眠っている間に検査を終える方法や、負担の少ない経鼻内視鏡(鼻からのカメラ)も選択可能です。

早期発見された胃がんは、身体への負担が少ない内視鏡的な切除で完治が期待できる場合が多く、進行がんとなり外科手術や化学療法が必要となるケースを減らすことができます。

長引く胃の不調や、ご自身の胃がんリスクに不安を感じる方は、決して「若いから大丈夫」と油断せず、消化器内科のクリニックまでご相談ください。適切な検査を受け、「怖い病気ではない」と確認することが、安心への第一歩です。

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