- 2025年6月17日
「おなら1日500回」HARUさんの告白は他人事ではない?医師が教える過敏性腸症候群(IBS)との向き合い方

「最近、おならの回数が増えて気になる…」
「会議中や電車の中など、静かな場所でお腹が張ってきて冷や汗が出る…」
皆さま、こんにちは。たなか内科クリニックです。
先日、「1日に500回もおならが出ていた」という女性の体験談がYahoo!ニュースで話題になったのをご存知でしょうか。この記事を読み、「自分のことかもしれない」「ここまで酷くはないけれど、気持ちはすごく分かる」と感じた方も少なくないかもしれません。
《オナラ1日500回》中2で突然起きた異変「授業中もつねに恐怖だった」IBS(過敏性腸症候群)の女性に訪れた転機
※Yahoo!の記事は削除されることがあるので、別のサイトの記事もリンクさせていただきます。
おならが止まらない、下痢・便秘が続く…「IBS(過敏性腸症候群)」であるHARUさんが見つけた、周りを気にしすぎない生き方
おならは誰にでも起こる自然な生理現象です。しかし、その回数や臭い、お腹の不快感が日常生活に支障をきたすほどになると、それは単なる体質の問題ではなく、治療が必要な「病気」のサインかもしれません。
今回は、このニュースをきっかけに、多くの方が悩んでいる「おならと過敏性腸症候群(IBS)」について、医師の立場からお伝えしたいと思います。
声にならない悩み – 1日500回のおならに苦しんだ女性の体験

話題の記事に登場したHARUさんは、中学2年生の時に突然、自分の意志とは関係なくおならが止まらなくなる症状に見舞われました。
『クラスメイトがたくさん授業を受けている静かな教室で、自分の意志とはまったく関係なくオナラがずっと止まらない。』
『一度、授業中にどれだけオナラが出てしまうのだろうと思って、回数を数えたんですよ。1時間弱の授業の途中で70回を超えた時点で、もうあまりの多さに数えるのをそこでやめました。』
ピーク時には1日で500回にも及んだというガス症状。音はしなくても強い臭いがあったため、「周りに臭いと思われたらどうしよう」という恐怖と常に戦い、授業に集中できなくなってしまったそうです。
何より辛かったのは、その悩みを誰にも打ち明けられなかったこと。ご家族にさえ「便秘でお腹が痛い」としか言えず、病院でも本当の症状を医師に伝えられませんでした。このエピソードは、おならの悩みがどれほどデリケートで、一人で抱え込みやすい問題であるかを物語っています。
【医師が解説】あなたのおならは大丈夫?考えられる原因
そもそも、健康な人のおならの回数は1日に平均5回~20回程度と言われています。もちろん個人差はありますが、HARUさんのように異常な回数が続く場合や、おならと同時に次のような症状がある場合は注意が必要です。
- お腹の痛み
- お腹の張り(膨満感)
- 便秘や下痢を繰り返す
これらの症状を伴う場合、「過敏性腸症候群(IBS)」という病気の可能性が考えられます。
過敏性腸症候群(IBS)とはどんな病気?

過敏性腸症候群(IBS)は、大腸カメラなどで調べても明らかな異常が見つからないのに、腹痛や便通異常が慢性的に続く病気です。ストレスや不安、生活習慣の乱れなどが引き金となり、脳と腸の連携(腸脳相関)が乱れ、腸が非常に敏感になることで発症すると考えられています。
IBSには、主に以下のタイプがあります。
- 下痢型:急な腹痛と下痢を繰り返す。
- 便秘型:お腹が張って苦しく、便秘が続く。
- 混合型:下痢と便秘を交互に繰り返す。
- 分類不能型:上記に当てはまらないが、ガス(おなら)の発生や腹部の不快感が続く。
HARUさんのように、おならの症状が前面に出るケースは「ガス型」とも呼ばれ、悩んでいる方は決して少なくありません。
「おならくらいで病院に行くのは恥ずかしい…」そう思う気持ちは、私たち医療者もよく理解しています。
しかし、自己判断で放置してしまうことにはリスクが伴います。おならや便通の異常は、時に大腸がんや潰瘍性大腸炎といった、より重篤な病気のサインである可能性もあるからです。
まずは医療機関に相談し、必要な検査を受けて「他の怖い病気ではない」と確認することが、安心への第一歩です。
こんな症状はクリニックへご相談ください

- セルフケアをしても、おならが多い状態が改善しない
- おならの臭いが急に強くなった、または変化した
- 強い腹痛やお腹の張りが続く
- 便秘や下痢を繰り返す
- 便に血が混じる、便が細くなった
- 原因不明の体重減少や食欲不振がある
当クリニックにできること

HARUさんが「医師に本当の悩みを言えなかった」という経験をされたように、デリケートな症状を打ち明けるには勇気がいると思います。当院では、患者様がどんな些細なことでも安心して話せるような、丁寧な問診を何よりも大切にしています。
診察の結果、詳しい検査が必要だと判断した場合には、内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)をご提案します。当院では、鎮静剤(静脈麻酔)を使用して、うとうとと眠っている間に受けられる苦痛の少ない内視鏡検査を行っておりますので、安心してご相談ください。
診断がついた後は、薬物療法だけでなく、「低FODMAP(フォドマップ)食」をはじめとする食事指導や生活習慣の改善など、患者様一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた治療法を一緒に考えていきます。
一人で悩まないで、まずは相談から

体験談のHARUさんは、27歳の時に勇気を出して親友に悩みを打ち明けたことで、心が軽くなったそうです。そして今では、同じ悩みを持つ人々がつながる団体を運営されています。
この記事を読んでくださっているあなたも、一人で悩みを抱え込む必要はありません。おならやIBSの悩みは、決して恥ずかしいことではなく、適切な治療で改善できる可能性があります。
健やかで安心できる毎日を取り戻すために、ぜひ一度、たなか内科クリニックへご相談ください。
※過敏性腸症候群は、どなたにも起こりうる病態です。10歳代からご高齢の方まで認めますが、特に若年者の方が症状は多様で、お困りの方が多い印象です。
過敏性腸症候群は症状に合わせた治療を行いますが、若年者で下痢を頻回に認める場合は、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患という病気が潜んでいる場合がありますので、注意が必要となります。当院では、まず血液検査や腹部エコー等の負担の少ない検査から開始し、その後必要な場合は大腸の検査を相談しています。