• 2025年1月28日
  • 2025年1月30日

食道がん

1.食道がんとは

食道がんとは

食道がんは、食道を覆う粘膜から発生する悪性腫瘍で、日本では主に「扁平上皮がん」が多いとされています。その大きなリスク要因が喫煙や飲酒である一方、欧米では逆流性食道炎やバレット食道に由来する「腺がん」が一般的です。食道がんは早期症状が乏しく、進行してから見つかるケースが多いため、予防や早期診断の重要性が強く求められます。

2.初期症状と進行時の変化

初期症状

  • 固形物を飲み込むときのわずかな違和感
  • のどに何かが引っかかったような感じ

これらの症状は一時的に感じられることが多く、見過ごされがちです。

進行時の主な症状

  • 液体の飲み込みが難しくなる(嚥下困難)
  • 胸の痛みや胸やけ
  • 慢性的な咳、声がれ
  • 食後や就寝時の不快感

特に数週間以上ののどや胸の違和感が続く場合には、早めに医療機関を受診することが望まれます。

3.主な原因

飲酒と喫煙

  • アルコールが粘膜を直接刺激し、長期摂取によってがんリスクが増大
  • タバコの煙中の発がん性物質が、食道粘膜に慢性的な炎症を引き起こす
  • 日本人に多いALDH2遺伝子欠損(お酒に弱い体質)の方は、さらにリスクが高まる

逆流性食道炎・バレット食道

  • 胃酸の食道への逆流が続くことで、粘膜が変性し、バレット食道に移行する場合がある
  • バレット食道から腺がんへ進展するリスクが高まる

遺伝的要素

  • ALDH2欠損症など、一部の遺伝子変異が食道がんリスクに関与
  • 家族歴のある場合には、定期検査の受診を検討する

4.食道がんの検査・診断

胃カメラ(上部内視鏡検査)

  • 食道粘膜を直接観察し、病変部位を確認
  • 必要に応じて生検を行い、病理検査でがん細胞の有無を調べる

画像診断

  • CTスキャンやPET-CTで病巣の広がりや転移の有無を把握
  • バリウム検査は食道の狭窄や形態異常を確認する補助的手法

5.分類とステージ

がんの種類

  • 扁平上皮がん: 日本や東アジアで多いタイプ。原因としては主にタバコとお酒があります。
  • 腺がん: 胃酸が逆流して起こる「バレット食道」が原因になることが多く、欧米で増えています。

発生する場所

  • 頸部食道: のどに近い場所にできるがん。
  • 胸部食道: 胸のあたりの食道で、一番多い発生場所。
  • 腹部食道: 胃に近い部分で、腺がんが多く見られます。


進行度(ステージ)

早期(Stage 0~I)がんが食道の表面や浅い層だけにとどまっている段階です。
中期~進行期(Stage II~III)がんが食道の深い層まで広がり、リンパ節に転移していることもあります。
末期(Stage IV)がんが肝臓、肺、骨など離れた場所に転移している状態です。


治療の決め方は、がんの深さや転移の有無をTNM分類という基準で細かく分けて、治療方針を決めます。

主な治療法

1. 手術

  • 進んでいるけれど、がんが広がりすぎていない場合に行います。
  • 食道の一部を取り除き、胃や腸を使って新しい食道を作る手術です。
  • 手術後は、栄養の管理や飲み込むためのリハビリが大事になります。

2. 抗がん剤(化学療法)

  • がんの広がりを抑える薬を使います。
  • 手術の前後や、手術が難しい場合に行われます。
  • 吐き気や免疫力の低下といった副作用が出ることがあります。

3. 放射線治療

  • がんのある部分に放射線を当てて治療します。
  • 抗がん剤と一緒に使うことで効果が上がることがあります。
  • 手術ができない患者さんの治療としても選ばれることがあります。

4. 内視鏡治療

  • がんが表面だけにある場合、内視鏡でその部分を切り取る治療ができます。
  • がんが浅く、転移のリスクが低い場合に行われます。

5.治療後の管理

1. 定期的な検査とフォローアップ

  • 再発や転移を早く見つけるために、内視鏡や画像検査を定期的に受けます。
  • 手術後の体調や栄養状態をチェックし、必要に応じて対処します。

2. 食事の工夫と栄養管理

  • 飲み込む力が弱くなるため、柔らかい食べ物や少しずつ何度も食べる方法を取り入れます。
  • 体重が減らないように、高カロリーな食事や栄養補助食品を使って体力を回復します。

3. 生活習慣の見直し

  • 禁煙・禁酒が大切です。たばことお酒は粘膜を傷つけ、再発のリスクを高めます。
  • バランスの良い食事と適度な運動で、体力をつけて免疫力を保ちます。

食道がんは、自覚症状が現れにくく、進行してから発覚するケースが多い疾患です。喫煙・飲酒の習慣や、バレット食道に代表される逆流性食道炎などがリスクを高める要因となっています。
早期段階での発見・治療が予後を大きく左右するため、のどや胸に異常を感じたら早めの受診を心掛けることが大切です。また、手術や放射線・化学療法を受けた後は、定期的な検査や生活習慣の改善により、再発防止と日常生活の質向上を目指すことが重要です。
※食道がんは大腸がん等と比較すると頻度は低い病気となります。
早期で発見できれば胃カメラでの切除(ESD)や、放射線+抗がん剤等治療の選択が広がります。一般的には進行がんの場合は、まず抗がん剤、もしくは抗がん剤+放射線治療を行った後に外科手術となります。食道がんの手術の場合はがんの場所にも寄りますが、胸もお腹も開く手術となるため非常に負担が大きくなります。
やはり他と同様に早期発見のためにも定期的な胃カメラでの検査をお勧めします。
特に飲酒・喫煙のある方は注意が必要です。

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