- 2025年4月23日
【要注意】アニサキス食中毒に異変? 温暖化で日本海側もリスク増! アニサキス症の症状と予防策

皆さん、こんにちは。
たなか内科クリニックです。
新緑がまぶしい季節となりましたが、気温が上がるにつれて気を付けたいのが「食中毒」です。食中毒の原因は様々ですが、近年、特にご相談が増えているのが、魚介類に寄生する「アニサキス」による食中毒(アニサキス症)です。
お寿司やお刺身を食べた後、突然の激しい胃痛に襲われた…という経験はありませんか? それは、もしかしたらアニサキスが原因かもしれません。
さらに最近、「アニサキスによる食中毒の状況に変化が出ている」というニュースが報じられました。これまでは比較的安全とされていた海域の魚でも注意が必要になってきている可能性があり、背景には地球温暖化の影響も指摘されています。
今回は、私たち内科・内視鏡クリニックの視点から、アニサキス症の症状や治療法、そして最新の情報を含めた予防策について詳しく解説します。
まずは基本から:アニサキスとは?

アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、その幼虫が食中毒の原因となります。
- 見た目: 長さ2~3cm、幅0.5~1mmほどの白い糸のような形をしています。
- 寄生する魚介類: サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなど、多くの身近な魚介類に寄生します。
- 体内での動き: 主に魚の内臓にいますが、魚が死ぬと筋肉(身)の部分へ移動することがあります。
アニサキス症の症状:突然襲う激痛

アニサキス幼虫がいる魚介類を生(または加熱・冷凍が不十分)で食べると、アニサキスが胃や腸の壁に食い込もうとして症状を引き起こします。
- 急性胃アニサキス症(最も多い): 食後数時間~十数時間で、みぞおち(胃のあたり)に激しい痛みが起こります。「キリキリと刺すような痛み」「経験したことのない痛み」と表現される方が多いです。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
- 急性腸アニサキス症: 食後十数時間~数日後に、激しい下腹部痛が起こります。腸閉塞などを起こす可能性もあります。
- その他: まれに蕁麻疹などのアレルギー症状が出ることがあります。
もし、生の魚介類を食べた後に上記のような激しい痛みを感じたら、絶対に我慢せず、速やかに医療機関を受診してください。
診断と治療:内視鏡(胃カメラ)が鍵!

アニサキス症の診断・治療には、胃カメラ(内視鏡検査)が非常に有効です。
- 診断: 内視鏡で胃の中を直接観察し、胃壁に食い込んでいる白い糸状のアニサキス虫体を確認します。
- 治療: 確認したアニサキスを、内視鏡の先端から出した鉗子(かんし)という器具でつまんで取り除きます。
多くの場合、原因となっているアニサキスを取り除くと、劇的に痛みが和らぎます。当クリニックでも、内視鏡によるアニサキス除去を行っています。
【最新情報】アニサキスを取り巻く「異変」とは?
最近の調査やニュースで、アニサキスに関する注意すべき変化が報告されています。
1.「日本海側の魚は安全」とは言えない? リスクの変化

これまで、「日本海側で獲れるサバなどにいるアニサキスは、食中毒を起こしにくいタイプが多い」と考えられてきました。しかし、最新の調査(内閣府など)によると、近年、日本海側や東シナ海で獲れた魚介類からも、食中毒を起こしやすいタイプのアニサキス(太平洋型・S型と呼ばれる)が見つかるケースが増えていることが分かってきました。
実際に、サバの生食文化がある福岡県では、アニサキス食中毒の報告件数が2022年に前年の5倍近くに急増するなど、これまで比較的安全とされていた地域でもリスクが高まっている可能性が示唆されています。
「日本海側で獲れた新鮮な魚だから大丈夫」という過信は禁物です。どの海域の魚であっても、生食には注意が必要と言えます。
- 背景に「地球温暖化」の影響?

なぜ、このような変化が起きているのでしょうか?
専門家は、地球温暖化による海水温の上昇や海流の変化が関係している可能性を指摘しています。海水温の変化が、アニサキスが寄生するサバなどの回遊ルートや、アニサキスの最終的な宿主であるクジラやイルカの生息域に影響を与え、結果として食中毒を起こしやすいタイプのアニサキスの分布が広がっているのではないか、と考えられています。
身近な環境問題が、私たちの食卓の安全にも影響を及ぼし始めているのかもしれません。
予防策:安全に魚介類を楽しむために(改めて確認!)

アニサキス症は怖いですが、正しい知識で予防することが可能です。以下の点を再確認しましょう。
- 加熱が一番!: 70℃以上で瞬時、または60℃で1分以上加熱すればアニサキスは死滅します。焼き魚や煮魚は安全です。
- 冷凍も有効!: マイナス20℃で24時間以上冷凍すると死滅します。一度冷凍したお刺身は比較的安全性が高まります。(※家庭用冷凍庫の性能によっては温度管理に注意が必要です)
- 新鮮な魚を選び、内臓はすぐに除去: 魚を丸ごと買う場合は、すぐに内臓を取り除きましょう。内臓の生食は絶対に避けてください。
- 目で見て確認!: 生で食べる場合は、調理の際によく見て、白い糸状のアニサキスがいないか確認し、いれば取り除きましょう。最近では、アニサキスを見つけやすくするために、黒いまな板を使ったり、スマートフォンのライトや専用のブラックライトを当てたりして確認する工夫もされています。
【重要】酢・塩・醤油・わさびは効きません!
しめ鯖のように酢でしめたり、塩漬けにしたり、醤油やわさびをつけたりしても、アニサキスは死にません。これらの調理法でもリスクは残ることを覚えておいてください。
正しい知識で予防し、異変があればすぐに受診を
アニサキスによる食中毒は、身近な魚介類が原因となりうる食中毒であり、近年の環境変化などにより、そのリスクも変化してきている可能性があります。「日本海側だから安全」という油断はせず、常に注意が必要です。
最も確実な予防法は加熱と冷凍ですが、生で食べる際には目視確認などの対策をしっかり行いましょう。
そして、もしアニサキス症を疑うような激しい痛みを感じた場合は、ためらわずに、できるだけ早く当院のような内科・内視鏡クリニックにご相談ください。早期の内視鏡検査と治療が、つらい症状から早く回復するための鍵となります。
正しい知識でしっかり予防し、安全に美味しい魚介類を楽しんでいきましょう。
「一緒に食べた人が平気」でも安心できないアニサキス
アニサキスは必ずしも腹痛を伴う訳ではありません。これまでも健診目的で内視鏡をした所、偶然発見ということも多かったです。
“一緒に食事をした方が大丈夫だったから自分はアニサキスでは無い”
とは考えない方が良いです。
冷凍や加熱をされていない新鮮な物を摂取することは満足度も高いですが、その後の経過に注意が必要となります、生魚の摂取後にお腹の痛みが出た場合はアニサキスの可能性を考えておきましょう。