• 2025年5月13日

大腸ポリープ切除後の「出血」大丈夫?色・量・続く期間の目安と病院へ行くべきサイン

「大腸ポリープを切除したけど、お尻から血が…これって大丈夫?」
「どれくらいの出血なら心配ないの?」
「いつまで出血は続くの?」
「どんな状態になったら病院に行くべき?」

大腸ポリープを切除された後、多くの方が気になるのが「出血」の問題です。切除後はある程度の出血が起こりうるものですが、その色や量、続く期間によっては注意が必要な場合もあります。

この記事では、大腸ポリープ切除後の出血について、皆さまが抱えるこのような疑問や不安にお答えしていきます。安心して術後の期間を過ごし、万が一の際には適切に対応できるよう、出血のセルフチェックポイントや病院へ行くべきサインについて詳しく解説します。

ただし、この記事はあくまで一般的な情報提供です。最終的な判断は自己判断せず、不安なことや気になる症状があれば、ためらわずに手術を受けた医療機関にご相談ください。


大腸ポリープ切除後、なぜ出血するの?いつまで注意が必要?

大腸ポリープは、大腸の粘膜からキノコのように盛り上がったものです。これを内視鏡で切り取るわけですから、多かれ少なかれ出血するのは自然なことです。切除した部分は一時的に「傷」や「潰瘍」のような状態になり、そこから出血することがあります。ポリープには栄養を送るための血管が存在し、特に茎(くき)が太いポリープや大きなポリープでは、内部の血管も太く、出血のリスクがやや高まることがあります。

出血しやすい期間と注意点:

  • 治療後24時間以内: 最も出血が起こりやすい期間です。特に切除当日の夜間から翌朝の排便時に出血が見られることが多いとされています。この期間は特に安静を心がけ、生活上の注意点を守ることが重要です。
  • 治療後1週間程度: 出血の大部分は24時間以内に起こりますが、1週間程度は遅発性の出血(時間が経ってから起こる出血)にも注意が必要です。
  • 稀に2週間程度後: ごく稀に、治りかけた傷のかさぶたが剥がれるようにして、術後2週間くらい経ってから出血することもあります。
  • 1週間を過ぎるとリスクは大きく低下: 一般的に、術後1週間を過ぎると出血のリスクはかなり低くなり、0%に近づくとされています。傷は概ね3週間程度で治癒すると言われています。

出血の色と量:これって大丈夫?セルフチェックのポイント

排便時に出血が見られたら、まずは慌てずにその「色」と「量」を確認しましょう。

【比較的、心配の少ない出血の目安】

  • 色・状態:
    • トイレットペーパーに鮮血が少量付着する程度。
    • 便の表面に、筋状に少量の血液が付着している。
    • ごく少量の暗赤色の血の塊(レバーのようなもの)が少量混じる程度で、すぐに出血が止まる。
  • 量: ごく少量で、すぐに止まる、あるいは1回限り。
  • その他の症状: 腹痛やふらつきなど、他に気になる症状がない。
  • 対応: このような場合は、多くが自然に止血するため、過度な心配は不要なことが多いです。できるだけ安静にし、無理な動きを避け、引き続き便の状態を観察しましょう。

【注意が必要な出血・病院へ連絡/受診を検討するサイン】

  • 色・状態:
    • 便全体が赤黒い血液に染まっている。
    • 鮮血がポタポタと垂れる、またはシャーっと出る。
    • 何度も血便が続く。
  • 量:
    • 生理の多い日のような出血量。
    • 1日に何度もトイレットペーパーが真っ赤になるほどの出血がある。
    • 1時間に複数回トイレに行く程の出血。
  • その他の症状:
    • 持続する腹痛、または徐々に強くなる腹痛がある。
    • めまい、ふらつき、立ちくらみ、顔面蒼白、冷や汗、動悸、息切れなど貧血を疑う症状がある。
  • 対応: 上記のような場合は、自己判断せずに速やかに手術を受けた医療機関に連絡し、指示を仰いでください。

【特に注意すべきサイン(緊急性が高い可能性)】

  • 色・状態・量:
    • 便器が真っ赤に染まるほど多量の鮮血が出る。
    • 意識が遠のく感じ、気が動転するほどの出血。
  • その他の症状:
    • 我慢できないほどの強い腹痛。
    • 冷や汗が止まらない。
  • 対応: このような場合は、夜間や休日であってもためらわずに、手術を受けた医療機関の緊急連絡先に連絡するか、救急病院を受診してください。状況によっては救急車の要請も考慮しましょう。

(※補足) 黒いタール状の便: もし便が黒っぽく、タール状である場合は、胃や十二指腸など上部消化管からの出血も考えられます。ポリープ切除部位からの出血とは異なりますが、この場合も速やかに医師にご相談ください。


    病院ではどんな対応をするの?出血した場合の治療法

    万が一、ポリープ切除後に出血が続いたり、量が多い場合は、適切な処置が必要です。

    • まずはクリニックへ連絡: 自己判断せず、まずは手術を受けた医療機関に連絡しましょう。夜間や休診日でも対応できる体制を整えているクリニックもありますので、事前に確認しておくと安心です。※当院で治療した場合は、検査・治療後に夜間・休日の対応について連携施設含めご説明いたします。
    • 多くの場合の対処法:
      • 少量の出血や、すぐに止血した場合は、医師の指示のもと自宅で安静にし、止血剤を内服することで様子を見ることが多いです。
    • 出血が続く・量が多い場合の対処法:
      • 再度、大腸内視鏡スコープを挿入し、出血箇所を特定して止血処置を行います。内視鏡的止血術として、出血している血管を金属製のクリップで挟んで止血する「クリッピング」という方法が一般的です。
      • この止血処置により、多くの場合出血はコントロールできます。処置後、経過観察のために2~3日程度の入院が必要になることもあります。
    • 稀なケース:
      • 出血量が非常に多く、貧血が進行している場合には、輸血が必要になることもありますが、これは稀なケースです。特にご高齢で体力のない方の場合に、念のため輸血を行うこともあります。
      • 内視鏡的止血術でコントロールできないような極めて稀な出血や、穿孔(腸に穴が開くこと)を合併した場合などを除き、外科的な開腹手術が必要になることはほとんどありません。「手術になるのでは…」と過度な心配はせず、まずは医師に相談することが大切です。

    出血のリスクを高める要因と予防のためにできること

    出血のリスクはゼロではありませんが、様々な工夫でそのリスクを低減する努力がなされています。

    • 出血のリスクを高める可能性のある要因
      • ポリープのサイズが大きい、または茎が太い。
      • 血液をサラサラにする薬(抗血栓薬:抗血小板薬や抗凝固薬)を服用中の方(特に多剤併用の場合)。
      • ご高齢の方(血管が脆くなっている場合があるため)。
      • 高血圧、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全などの基礎疾患をお持ちの方。
      • 術後の飲酒、喫煙。
      • 排便時の強いいきみ。
      • 激しい運動や腹圧のかかる作業。
      • 長時間の入浴やサウナなど、体を温めすぎる行為。
    • 出血予防のために医師が行うこと(代表的なもの):
      • 電気メスによる焼灼: 切除と同時に血管を焼き固めることで止血効果を高めます。
      • クリップによる縫縮: 大きなポリープを切除した後や、出血リスクが高いと判断された場合に、予防的に切除部位を金属製のクリップで縫い縮めることがあります。これにより出血リスクを大幅に低減できるとされています。(このクリップは通常数日程度で自然に脱落し、便と一緒に排泄されます。)
        • ただし、全てのポリープ切除にクリップ縫縮が必須というわけではなく、比較的小さなポリープではクリップなしでも出血率に差がないという学術報告もあり、ガイドラインでも大型病変や抗血栓薬内服中の症例などに推奨されています。最終的には、医師が個々の状況を判断して最善の方法を選択します。
      • コールドポリペクトミー(CSP): 小さなポリープに対して、高周波電流(電気)を使わずにスネアだけで切除する方法です。熱による組織の損傷が少ないため、EMR(内視鏡的粘膜切除術)などの従来法と比較して、術後の出血や穿孔のリスクが低いとされ、日帰り手術や抗血栓薬内服中の患者さんにも選択されることがあります。
    • 患者さん自身ができる出血予防策(医師の指示を守りましょう):
      • 術後の安静: 指示された期間は無理をせず、安静に過ごす。
      • 食事・飲酒制限: 消化の良い食事を心がけ、アルコールや刺激物は指示された期間(通常術後1週間程度、施設によっては5日間など)は必ず避ける。
      • 運動・入浴制限: 激しい運動や長時間の入浴、サウナは指示された期間(通常術後1週間程度)は避ける。
      • 排便コントロール: 便秘にならないよう水分をしっかり摂り、処方された緩下剤があればきちんと服用する。強くいきまない。
      • (これらの生活上の注意点については、当クリニックのブログ記事**『大腸ポリープ切除後の食事制限とおすすめの食事メニュー』『大腸ポリープ切除後の生活の注意点』**もぜひご参照ください。)

    5. ポリープ切除後、しばらく経っても出血が続く場合は?

    通常、ポリープ切除部位からの出血は術後1~2週間以内には治まります。しかし、それ以降も原因不明の出血が続く場合や、切除前と同じような出血(例えば、にじむような出血が続くなど)が改善しない場合は、切除部位以外の原因も考えられます。

    • 考えられる他の原因: 痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、大腸憩室からの出血、炎症性腸疾患、あるいは稀ですが新たに見つかる病変など。
    • 対応: 自己判断せずに、必ず医師に相談してください。状況に応じて、再度の診察や大腸内視鏡検査などを行い、原因を特定し、適切な治療法を検討します。慢性的な出血の場合は、貧血の有無を調べる血液検査も重要です。

    安心して治療を受けるために

    大腸ポリープ切除後の万が一の事態に備え、また安心して治療を受けていただくために、クリニック側も様々な体制を整えています。

    • アフターフォロー体制: 治療後の状態や症状について、電話での相談窓口を設けていたり、必要に応じて迅速な再検査を手配したりするクリニックがあります。緊急時の連絡先や対応方法についても、事前にしっかりと確認しておきましょう。
    • 病理結果説明のための受診: 切除したポリープが良性であったか、あるいは早期のがんであったかなどを詳しく調べる「病理検査」の結果を聞くための受診も、術後の重要な経過観察の一つです。通常、術後数週間以内に結果説明のための受診が指示されますので、必ず受診しましょう。
    • 定期的な内視鏡検査のすすめ: 大腸ポリープは、一度切除しても「できやすい体質」や「できやすい家系」などにより、再び発生することがあります。がんになる可能性のあるポリープを早期に発見し切除することで、大腸がんを予防できます。そのため、医師の指示に従い、定期的な大腸内視鏡検査を受けることが非常に重要です(一般的には切除後1~3年ごとの検査が推奨されます)。

    大腸ポリープ切除後の出血は、多くの方が経験する可能性のある合併症ですが、その色や量、続く期間などを正しく理解し、適切なサインを見逃さなければ、過度に心配する必要はありません。

    大切なのは、自己判断せずに、この記事で解説した「病院へ行くべきサイン」を参考に、少しでも不安なことや気になる症状があれば、遠慮なく手術を受けた医療機関に相談することです。

    皆さまが安心して術後の日々を過ごせるよう、この記事がお役に立てれば幸いです。

    「大腸ポリープを切除したけど、お尻から血が…これって大丈夫?」
    「どれくらいの出血なら心配ないの?」
    「いつまで出血は続くの?」
    「どんな状態になったら病院に行くべき?」

    大腸ポリープを切除された後、多くの方が気になるのが「出血」の問題です。切除後はある程度の出血が起こりうるものですが、その色や量、続く期間によっては注意が必要な場合もあります。
    この記事では、大腸ポリープ切除後の出血について、皆さまが抱えるこのような疑問や不安にお答えしていきます。安心して術後の期間を過ごし、万が一の際には適切に対応できるよう、出血のセルフチェックポイントや病院へ行くべきサインについて詳しく解説します。
    ただし、この記事はあくまで一般的な情報提供です。最終的な判断は自己判断せず、不安なことや気になる症状があれば、ためらわずに手術を受けた医療機関にご相談ください。

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