• 2025年8月18日

膵臓がん(膵がん)

膵がんはなぜ怖い?知られざる「静かなる進行」

「膵がんは早期発見が難しい」という話を耳にしたことがあるかもしれません。その通り、膵がんは初期には自覚症状がほとんどないため、気づいた時にはすでに進行しているケースが少なくありません。

そのため、膵がんは「静かなる進行者」とも呼ばれています。

現在、日本での膵がんの死亡数は、肺がんや大腸がんに続いて上位に位置しており、この30年で8倍以上に増加しています。60歳代の方に多く、男性にやや多い傾向が見られます。膵がんから命を守るためには、その特徴を正しく理解し、リスクを意識した上で、早期発見のための行動を起こすことが何よりも大切です。


膵臓ってどんな臓器?膵がんの正体

膵臓は、胃の裏側、背骨の近くに位置する長さ20cmほどの細長い臓器です。ここでは、主に2つの重要な役割を担っています。

  • 外分泌機能: 食べ物の消化に必要な膵液(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなど)を分泌し、十二指腸へ送ります。
  • 内分泌機能: 血糖値を調整するインスリンなどのホルモンを血液中に分泌し、全身の血糖コントロールを担います。

膵がんのほとんどは、この膵液の通り道である膵管の細胞から発生する膵管がんです。膵がんは、がんの中でも特に進行が速く、小さいうちから周囲のリンパ節や肝臓に転移しやすい性質を持っています。


こんな症状に要注意!膵がんが疑われるサイン

膵がんは、早期には症状が出ないことがほとんどです。しかし、がんが進行すると、以下のようなサインが現れることがあります。これらの症状が全て膵がんであるとは限りませんが、いつもと違う体の変化を感じたら、早めに医療機関を受診することが大切です。

腹痛・背中の痛み

膵臓は体の奥深くにあり、近くには多くの神経が通っています。がんが進行してこれらの神経や周囲の臓器を圧迫・破壊すると、上腹部や背中の上部から中央にかけて、鈍い痛みや焼けるような痛みが生じることがあります。夜間に痛みが強くなったり、体を前かがみにすると楽になったりするのが特徴です。

黄疸(おうだん)

黄疸とは、皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状です。膵臓の頭部にできたがんが、肝臓からくる胆汁の通り道である「胆管」を圧迫して詰まらせると、体内に胆汁の成分が溜まって黄疸が現れます。尿の色が濃くなったり、全身にかゆみを感じたりすることもあります。

体重の減少

特に理由もなく体重が急激に減る場合は注意が必要です。がん細胞が大量のエネルギーを消費したり、がんが原因で消化吸収機能が低下したり、食欲不振に陥ったりすることが原因として考えられます。

糖尿病の発症・悪化

膵臓はインスリンを分泌する重要な臓器です。がんによって膵臓の機能が低下すると、血糖値がうまくコントロールできなくなり、急に糖尿病を発症したり、もともと糖尿病だった方の血糖値が不安定になったりすることがあります。


膵がんのリスクを高める要因

膵がんの発症には、様々な要因が関係していることが分かっています。ご自身に当てはまる項目がないか、確認してみましょう。

  • 生活習慣: 喫煙は、膵がんのリスクを2倍近く高めると言われています。その他、過度な飲酒や肥満もリスク要因です。
  • 病気の既往歴: 慢性膵炎糖尿病を患っている方は、膵がんのリスクが高まると指摘されています。
  • 遺伝的要因: 血縁関係に膵がんを患った方がいる場合、そうでない方に比べて発症リスクが高い傾向にあります。

膵がんの診断と治療:当院の取り組み

膵がんは、初期発見が難しい一方で、診断された後の進行が早いがんです。当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせて、迅速かつ正確な診断と、最適な治療を提案することに力を入れています。

1. 診断

膵がんは体の奥にあるため、いくつかの検査を組み合わせて診断します。

  • 血液検査: 膵臓の機能異常を示す酵素や腫瘍マーカーの値を調べます。
  • 超音波検査・CT検査・MRI検査: 膵臓に腫瘤がないか、他の臓器への転移がないかを画像で詳細に確認します。
  • 内視鏡検査(EUS・ERCP): 超音波内視鏡やERCP(内視鏡的逆行性胆膵管造影)といった精密検査で、膵管の状態や腫瘍の有無を高精度で調べます。

2. 治療

治療は、がんの進行度や患者様の状態によって異なります。当院では、外科、内科、放射線科など、複数の専門医と連携して、患者様にとって最も効果的な治療戦略を検討しています。

  • 手術: がんを切除できる場合に最も期待できる治療法です。
  • 化学療法(抗がん剤治療): 手術が難しい場合や、再発予防のために行います。
  • 放射線治療: 手術が困難な場合に検討、化学療法と併用で行う場合もあります
  • 粒子線治療(陽子線・重粒子線) :手術は困難であるが、膵がんが局所に留まる場合に適応なります。

迅速な診断と治療開始への取り組み

膵がんは進行が早いため、診断から治療開始までの時間をいかに短縮するかが重要です。当院では、膵がん専門外来を設けるなど、迅速に検査・診断を行い、最速で治療を開始できる体制を整えています。


最後に

膵がんの早期発見には、自覚症状がなくても定期的に検査を受けることが何より重要です。健康診断で異常を指摘された方、ご家族に膵がんの既往歴がある方、気になる症状がある方は、どうぞお気軽にたなか内科クリニックにご相談ください。

※膵がんが非常に難しい疾患となります。
早期発見が困難であること、膵臓が体の背中側に存在しており手術の難易度も高く、また膵がんは容易に周囲に広がりやすいことも原因です。少しでも早期発見の為には、健診や採血・腹部エコー等での定期検査が重要と考えています。

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