- 2025年8月18日
急性膵炎・慢性膵炎
おなかの激痛、それだけではない怖さ

「突然お腹が激しく痛くなった」
「食後にお腹や背中に鈍い痛みが続く」
といった症状はありませんか?
それは、膵臓の病気である急性膵炎や慢性膵炎のサインかもしれません。これらの病気は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があり、決して軽視できません。
ここでは、急性膵炎と慢性膵炎がどのような病気なのか、その違いや原因、症状、そして治療法について、分かりやすく解説します。
急性膵炎
突然の激痛を引き起こす「自己消化

急性膵炎は、膵臓に突然激しい炎症が起こる病気です。膵臓で作られる消化酵素は、本来は十二指腸に送られてから働き始めます。しかし、何らかの原因で膵液の流れが滞ると、膵臓内で消化酵素が活性化し、膵臓自身を溶かし始めてしまいます。これが「自己消化」です。
原因
日本における急性膵炎の主な原因は、男女で異なります。
- 男性: アルコールの過剰摂取が最も多く、次いで胆石(総胆管結石)が原因となります。
- 女性: 胆石(総胆管結石)が最多で、次に原因不明の特発性が多く見られます。
男女とも中性脂肪が高値で発症する事もあります
症状
最も特徴的な症状は、立っていられないほどの激しい腹痛です。みぞおちから背中にかけて痛みが広がることも少なくありません。
その他、嘔吐や発熱などを伴い、重症化すると呼吸不全や腎不全などの多臓器不全に陥り、命に関わることもあります。
診断と治療
診断は、激しい腹痛、血液中の膵酵素の上昇、CTや超音波検査での異常を総合的に判断して行います。
治療は、膵臓を休ませるための絶飲食が基本です。点滴で水分や栄養を補給し、膵臓の自己消化を抑える薬や、感染予防のための抗生物質を使用します。重症の場合は、集中治療室での厳重な管理が必要です。
慢性膵炎
徐々に膵臓が壊れていく進行性の病気

慢性膵炎は、膵臓に繰り返し炎症が起こることで、膵臓の細胞が少しずつ壊れて線維組織に置き換わってしまう病気です。一度壊れた細胞は元に戻らないため、病気が進行すると膵臓の機能が徐々に失われていきます。
膵臓が硬くなり、膵管が狭くなったり、膵石ができたりすることで、慢性的な痛みを引き起こします。
原因
慢性膵炎の最大の原因は、長期間にわたるアルコールの過剰摂取です。男性に多く見られますが、女性では原因が特定できない特発性の割合が高い傾向にあります。
症状と病期分類
慢性膵炎は、病気の進行度によって症状が異なります。
- 代償期(初期): 膵臓の機能がまだ保たれており、飲酒や食事後に上腹部や背中の痛みを繰り返します。
- 非代償期(進行期): 膵臓の機能が著しく低下し、腹痛は軽減しますが、消化吸収障害(下痢、脂肪便、体重減少)や糖尿病を発症します。
診断と治療
診断は、腹痛などの症状、飲酒歴、血液検査、CT、超音波検査などの画像検査を組み合わせて行います。
治療の基本は、禁酒・禁煙と食生活の改善(低脂肪食)です。病状に応じて、痛みを抑える薬、消化を助ける薬、血糖値をコントロールする薬などを服用します。
当院からのお願い

膵炎は、放置すると日常生活に大きな影響を及ぼし、命に関わることもある病気です。
特に、以下の項目に当てはまる方は、一度当院までご相談ください。
- 突然の激しい腹痛や背中の痛みがある
- お酒を飲んだ後にお腹が痛くなる
- 原因不明の下痢や体重減少が続いている
- 健康診断で膵臓の異常を指摘された
皆様の健康を守るため、丁寧な診察と最適な治療をご提案します。
※急性膵炎は急激な経過を辿ることがあり、重症した場合は命にかかわる病気です。
多量飲酒後に腹痛や背中の痛みを認めた場合は、急性膵炎の可能性があると思いますので医療機関への受診をお勧めします。急性膵炎と診断した場合は速やかに連携している医療機関へ紹介し適切な治療を行います。