• 2026年10月1日

自覚症状なしで進行する胃がん・大腸がん、定期検診が命を守る理由

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。

先日、ニュースサイトの医療記事で「自覚症状ゼロでも進行する胃がん・大腸がん 40歳代からの『見逃さない』検診のすすめ」というトピックが大きな注目を集めました。 「自分はどこも痛くないし、元気だから大丈夫」という思い込みこそが、がんの発見を遅らせる最大の原因になります。

本記事では、日本人に多い消化器がん(胃がん・大腸がん)が「なぜ自覚症状なく進行するのか」という理由と、元気なうちに定期検診を受けるべき本当の理由を、医師の視点から詳しく解説いたします。

■なぜ胃がん・大腸がんは自覚症状がないのか

胃や大腸といった消化管の壁は、内側から外側に向かって「粘膜 → 粘膜下層 → 筋層 → 漿膜(しょうまく)」という層構造になっています。がんは最も内側の「粘膜」の表面から発生し、時間をかけて深く根を張るように外側へと広がっていきます。

がんが粘膜内にとどまっている「早期がん」の段階では、食べ物を消化したり運んだりする胃腸の機能に支障が出ず、粘膜には痛みを感じる神経も少ないため、自覚症状がほとんど起きません。 痛みや違和感といった症状が現れるのは、がんが「粘膜下層」や「筋層」を超えて深く進行し、神経や血管に影響を与えたり、消化管の通り道を狭めたりし始めてからです。つまり、「症状が出る=すでにある程度進行した状態」であることが多いのです。

また、大腸がんの多くは良性の「ポリープ」が時間をかけてがん化して発生しますが、中にはポリープの段階を経ずに正常な粘膜から直接がんが発生する「de novo(デノボ)がん」という進行の早いタイプも存在するため、油断は禁物です。

■胃がんで自覚症状が出たときの状態

胃がんの自覚症状が現れる主なパターンと、そのときの進行度(ステージ)の関係は以下のようになります。

  • みぞおちの不快感・胃もたれ(早期〜中期): 胃炎や胃潰瘍でも同様の症状が出るため「いつもの胃もたれだろう」と見過ごされがちです。
  • 食欲低下・体重減少(中期〜進行期): がんが広がり、胃の機能が著しく低下してきた状態です。
  • 吐血・黒色便/タール便(進行期〜末期): がんが血管を侵食して出血が起きているサインです。血液が胃酸と混ざることで便が海苔の佃煮のように真っ黒になります。早急な受診が必要です。
  • 飲み込みにくさ(進行期): がんが食道との境目(噴門部)に及んでいる可能性があります。
  • 腹部膨満・腹水(末期): お腹の中にがんが散らばり(腹膜播種)、水がたまっている状態です。

【要注意】若年層を狙う「スキルス胃がん」

胃がんの中には、胃壁の中を這うように広がり、胃全体を硬く厚くしてしまう「スキルス胃がん」というタイプがあります。表面に変化が出にくいため内視鏡でも見つけにくく、進行が非常に早いうえに、20代〜40代の若い世代(特に女性)に多いという恐ろしい特徴を持っています。これも初期症状がほとんどないため、定期的な胃カメラでのチェックが不可欠です。

■大腸がんで自覚症状が出たときの状態

大腸がんも同様に、初期は無症状です。症状が出てくる段階と、その状態について解説します。

  • 血便・便潜血陽性(早期〜進行期): 早期でも出血することがありますが、「鮮やかな血だから痔だろう」という自己診断は絶対に避けてください。痔と大腸がんを併発しているケースも多くあります。
  • 排便習慣の変化(中期〜進行期): 以前は快便だったのに、急に便秘と下痢を繰り返すようになったら、腸管が狭くなりはじめたサインかもしれません。
  • 残便感・便が細くなる(中期〜進行期): 特に肛門に近い直腸がんに多い症状です。
  • 腸閉塞/イレウス(進行期〜末期): がんで腸管がほぼ塞がった状態で、激しい腹痛や嘔吐を伴います。緊急手術が必要になることもあります。
  • 原因不明の貧血・倦怠感(進行期〜末期): がんからの慢性的な出血により、気づかないうちに重度の貧血に陥っていることがあります。

■定期検診の「継続」が最も重要

がん検診で最も大切なのは「継続すること」です。1回だけ受けて「異常なし」だったとしても、数年後に新たながんが発生する可能性があります。当院で推奨する検診頻度の目安をまとめます。

  • 【胃カメラ】 胃がんの最大の原因であるピロリ菌の感染歴がない(リスクが低い)方は、2〜3年に1回。ピロリ菌の除菌治療を受けたことがある方や、萎縮性胃炎がある方は、特に除菌後5年間は毎年1回を強く推奨します。
  • 【大腸カメラ】 一度受けて異常がなかった方は、3〜5年に1回。過去にポリープを切除したことがある方は、隠れポリープの見落としを防ぎ、できやすい体質を考慮して、原則1年後に再検査を受けることをお勧めします。
  • 【腹部エコー】 膵臓や肝臓、胆のうのスクリーニングとして、年1回を推奨します(特に糖尿病、慢性膵炎、飲酒習慣のある方)。

※便潜血検査(検便)だけでは不十分な理由 便潜血検査は手軽ですが、「血が出ているがん」しか発見できません。将来がんになる危険なポリープの約70%、早期がんの約50%は出血を伴わないため、検便では見逃されてしまうという限界があります。確実な予防と早期発見には、大腸カメラが必須です。

■よくある質問(Q&A)

Q: 忙しくてなかなか休みが取れません。胃と大腸の検査を同じ日に受けることはできますか?

A: はい、可能です。当院では「胃カメラと大腸カメラの同日検査」に積極的に対応しております。事前の食事制限や下剤の服用、通院が1度で済み、さらに鎮静剤の使用も1回で完了するため、お身体への負担も時間的な負担も大幅に軽減できます。働き盛りの方に大変おすすめの検査方法です(※事前の診察は必要となります)。

Q: 胃がんや大腸がんは遺伝しますか?

A: 一般的な胃がん・大腸がんのほとんどは「散発性」(生活習慣やピロリ菌など遺伝以外の要因)ですが、血縁者にがんの経験者がいる(家族歴がある)場合は、そうでない人に比べてリスクが2〜3倍高まるとされています。ご家族に若くして消化器がんになった方がいる場合は、年齢に関わらず早めの内視鏡検査をご検討ください。

Q: 定期検診の費用負担を軽くする方法はありますか?

A:自治体の「がん検診」助成制度を活用すると費用が軽減できます。多くの市区町村が40〜50歳以上の住民を対象に、胃がん検診(胃内視鏡またはバリウム)・大腸がん検診(便潜血)の費用補助を実施しています

神戸市では内視鏡健診となりますが、明石市の場合は胃がんABC健診(胃炎の変化・ピロリ菌感染の有無を採血で調べる)となります。

また、職場の定期健康診断にオプションとして内視鏡検査を追加できる場合もあります。お住まいの市区町村のホームページ等で検診制度を確認してみてください。

■まとめ

胃がん・大腸がんは「自覚症状がないまま静かに進行する」怖い疾患ですが、定期的な内視鏡検査を継続することで、早期発見・早期治療、あるいは未然の予防(ポリープ切除)が十分に可能です。

「症状がないから安心」ではなく、「症状が出る前に検診を受ける」という考え方が、命を守る最大の戦略です。

当院では、患者様がリラックスして検査を受けられるよう、ご希望の方には鎮静剤(静脈麻酔)を使用し、ウトウトしている間に苦痛なく検査を行っています。

また、大腸カメラ前の下剤も、量が少なくて飲みやすいレモン風味のタイプをご用意しています。

「まだ一度も胃カメラ・大腸カメラを受けたことがない」という40代以上の方は、ぜひこの機会に検査をご検討ください。早期発見があなたの未来を変えます。

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