- 2025年1月28日
- 2025年1月30日
つらい胃の不調に向き合う機能性ディスペプシア(FD)
1.機能性ディスペプシア(FD)とは
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia)は、胃や上腹部の不快感や痛みが慢性的に続いているにもかかわらず、内視鏡検査やその他の画像検査で明確な異常が確認されない状態を指します。消化管の運動機能や過敏性の乱れが背景にあるとされ、成人の10~20%が発症すると見積もられています。日常生活への支障が大きいことが特徴です。
ストレスと症状の悪化には深い関係があり、その理由として、まず自律神経のバランスが崩れることで胃腸の蠕動運動が抑制されることが挙げられます。さらに、ストレスホルモン(コルチゾールなど)の増加に伴って胃酸分泌が活発になり、胃への負担が大きくなるのです。加えて、長期にわたって強いストレスを受け続けると、慢性的な胃の不快感や痛みが一層強まることが知られています。
ピロリ菌感染と症状の悪化には関連性がある場合があり、一部の機能性ディスペプシア(FD)患者では、ピロリ菌感染が症状の悪化に関与していることが確認されています。また、除菌療法により症状が軽快するケースも報告されていますが、これはすべての患者に当てはまるわけではありません。さらに、FDは胃腸の運動障害やストレスなど複数の因子が絡む複雑な疾患であるため、ピロリ菌の除去だけでは十分に症状が改善しない場合もあります。
関連しやすい疾患
過敏性腸症候群(IBS)
- FDと同様に消化管の機能面に問題が起こる病気
- 便秘や下痢などの腸症状を主体とし、併発率も高い
胃食道逆流症(GERD)
- 胃酸が食道へ逆流し、胸やけや咽頭痛を引き起こす疾患
- FDとの症状が類似する場合があり、精密検査による区別が必要
- FDとGERDの合併も多い
慢性胃炎
- FDの場合、必ずしも胃粘膜の明らかな炎症があるわけではないが、ときに併存することも
主な症状
胃痛・胃もたれ
- 胃粘膜が過敏な状態になり、食事や胃酸の刺激を過剰に感じやすい
- 胃の運動低下により、食後も胃内容物が停滞しやすい
- 胃の適応障害(胃が食事量に合わせて適切に拡張できない)がもたれ感を悪化させる
膨満感・吐き気
- 炭酸飲料や脂肪分の多い食事でさらに悪化する傾向
- 胃酸分泌の過剰や蠕動運動の乱れが原因で、空腹時や食後に吐き気を催すことも
みぞおちの痛み・違和感
- 胃の知覚過敏が大きく影響し、少量の食事でも苦痛を感じる場合がある
- 胃腸の動きが乱れるとガスや内容物が停滞しやすく、痛みや不快感を引き起こす
- ストレスにより自律神経が変調をきたし、症状が増幅される
診断の流れ
胃カメラ(上部内視鏡検査)
- 胃がんや胃潰瘍、逆流性食道炎などの器質的疾患を除外することが目的
- 粘膜にはっきりした病変がなく、6か月以上症状が続く場合にFDと診断
治療について
薬物療法
- プロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸の分泌を抑え、胃痛や胸やけ感を軽減
- 消化管運動促進薬:胃の排出を促し、もたれ感を和らげる
- 抗うつ薬:胃腸の過敏性を抑え、ストレス症状を同時に緩和
食事療法
- 少量をこまめに食べる:1回の食事量を抑えることで胃への負担を減らす
- 脂質控えめのメニュー選択:油分の多い料理は消化に時間がかかりやすい
- 刺激物を避ける:アルコールや唐辛子、コーヒーなどは症状を悪化させる可能性がある
食事とライフスタイルを整えるための具体的な工夫
食事面
おすすめの食品
- おかゆや白米:胃に負担がかかりにくい主食
- ヨーグルト:腸内環境を整える作用が期待できる
- 蒸し野菜(キャベツ、にんじんなど):胃酸を中和し、粘膜保護にも役立つ
避けたい食品
- 高脂肪・揚げ物:胃の排出遅延や膨満感を引き起こしやすい
- アルコールや炭酸飲料:胃壁を刺激し、不快感を増大させる
- 辛味の強い調味料:粘膜の過敏状態をさらに悪化させる可能性
食事のタイミング
- 1日4~5回に分けて摂取:胃の負担を小さくし、消化をスムーズに
- 食後すぐに横にならない:消化を阻害し、胸やけやもたれの原因に
- 夜間の食事を控えめに:就寝までの時間をあけ、胃を休ませる
ライフスタイル面
運動の仕方
- 軽いウォーキングやストレッチ:胃の働きを助け、ストレス発散にもなる
- 激しい運動:一時的に胃腸の血流が減少し、症状が悪化する可能性があるため注意が必要
喫煙・飲酒
- 喫煙は胃酸分泌を増加させ、粘膜を弱らせる
- 過度の飲酒は胃壁を直接刺激し、症状を悪化させる
ストレスマネジメント
- 瞑想や深呼吸などのリラクゼーション法
- カウンセリングで心理的負担を軽減
- 趣味やコミュニケーションを通じて気分転換
機能性ディスペプシア(FD)は、明らかな病変がなくても長期間続く胃もたれや痛み、膨満感などが主な特徴です。薬物や食事療法、ライフスタイルの改善を組み合わせ、ストレスケアも取り入れることで、症状の軽減を目指せます。器質的な疾患を除外したうえで、自分に合った対策を見つけ、日常生活への影響を最小限に抑えることが大切です。※FDは除外診断の結果でもあり他の病気が隠れていないか十分な精査が必要です。FDと思っていたが、実は胃がんであった、とならないように検査は必要と思っています。