• 2026年3月5日

【消化器内科医が解説】薬を飲んでも胃もたれが続く…機能性ディスペプシアの患者様が「楽になった」きっかけとは

「食事をするとすぐにお腹が張る」

「少し食べただけで満腹になってしまう」

「胃もたれや吐き気が続く」

こうした症状があると、「疲れやストレスのせいだろう」「忙しい時期だから仕方ない」と様子を見てしまう方は少なくありません。しかし、食後の胃の張りが何週間・何か月も続く場合、単なる体調不良ではなく、胃の機能に関わる病気が隠れていることがあります。

特に、胃カメラなどの検査で異常が見つからないにもかかわらず症状が続く場合、「機能性ディスペプシア」と呼ばれる病気が原因となっていることが少なくありません。

今回は、食後すぐの胃の張りと吐き気が続き、検査で異常がない中で機能性ディスペプシアと診断された30代男性の実例をもとに、機能性ディスペプシアの原因や、薬を飲んでも治らない理由、そして治療法についてわかりやすく解説します。

胃の張りや吐き気、長引く胃もたれでお困りの方がいらっしゃれば、この記事が受診のきっかけになれば幸いです。


1.機能性ディスペプシアとは?

機能性ディスペプシアとは、「症状の原因となる器質的,全身性,代謝性疾患がないのにもかかわらず,慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」と定義されています。 つまり、「胃カメラなどの検査をしても潰瘍やがんなどの異常がないにも関わらず、胃の不快な症状で悩まされる状態」といえます。日本人の10%程度に見られ、胃痛・胃もたれなどの症状で受診する方の約半数がこの病気だと言われています。

主な症状

機能性ディスペプシアの主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 食後の胃もたれ
  • 早期飽満感(すぐにお腹いっぱいになる)
  • 胃の張り
  • 吐き気
  • みぞおちの痛み

原因

これらの症状は、胃の働きがうまく連携しないことが重なって起こると考えられています。 主な原因としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 胃と十二指腸の運動異常: 胃の動きが低下し、食べ物が胃の中に長くとどまったり、十二指腸へスムーズに送り出されなくなったりします。
  2. 胃酸分泌過多: 胃酸が出過ぎて、胃の粘膜を刺激します。
  3. 内臓知覚過敏: 胃の粘膜が刺激に対して過敏になり、少量の食べ物や正常な胃酸でも痛みや不快感を感じやすくなります。

これらの直接的な要因を引き起こす背景には、もともとの体質的な要素(遺伝的要因、生育環境、胃の形、胃内細菌叢など)に加え、ストレス、感染性胃腸炎、運動不足・睡眠不足・不規則な食事などのライフスタイルの乱れといった外的な要因が複雑に絡み合っています。転職や環境の変化をきっかけに発症・悪化する方も少なくありません。


2.なぜ機能性ディスペプシアは「治らない」と感じるのか?

「機能性ディスペプシアと診断されて薬を飲んでいるのに、なかなか治らない」「薬をやめるとまた症状がぶり返す」といったご相談をよく受けます。機能性ディスペプシアの治療が難渋するのには、主に4つの理由があります。

1. 薬が合っていない

実は、同じ「胃もたれ」という症状でも、原因が「胃の動きの低下」なのか「胃酸の分泌過多」なのかによって、適切な薬は全く異なります。胃酸分泌過多によるもたれには制酸剤が効きますが、胃の動きが低下している方には効果がありません。ご自身の症状がどの状態によって引き起こされているのかを正確に把握し、それに合った薬を選択することが重要です。

2. 外的因子(ストレスや生活習慣)が解決していない

適切な薬で胃の機能をコントロールしても、強いストレスが続いていたり、暴飲暴食や睡眠不足といった機能性ディスペプシアの引き金となる生活習慣を変えなければ、症状はなかなか改善せず、ぶり返しやすくなります。

3. 体質的な要因へのアプローチが難しい

同じようなストレスや生活環境でも、機能性ディスペプシアを発症する人としない人がいます。これは、遺伝的素因や胃の形、胃内細菌叢などの「体質」が関わっているためです。遺伝や胃の形を変えることはできませんが、胃内細菌叢を整えることで、機能性ディスペプシアになりにくい体質へ改善できる可能性があります。

4. そもそも診断が間違っている

「検査をしても異常がない」ことが機能性ディスペプシアの前提ですが、十分な検査を行わずに症状だけで診断されているケースもあります。なかなか治らないと思って再度詳しく調べてみたら、胃がんや膵炎などの別の病気が隠れていたということもあり得ます。


3.機能性ディスペプシアの治療法

機能性ディスペプシアの治療は、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせて行います。

内服薬・漢方薬等

  • 消化管運動改善薬: 胃の動きの低下による張りやもたれ、吐き気を改善します。
  • 制酸剤: 胃酸の分泌過多による痛みや不快感を和らげます。
  • 漢方薬: 粘膜の知覚過敏を抑えたり、胃の働きを正常化させたりします。「胃が弱い」体質の改善にも役立ちます。

自宅でできる対処法・生活習慣の改善

薬だけでなく、毎日の生活習慣を見直すことも非常に重要です。

  • 一度に食べる量を控えめにし、よく噛んでゆっくり食べる: 早食いや大食いは胃に急な負担をかけます。
  • 脂っこい食事を避ける: 脂肪分は胃の動きを低下させ、胃もたれの原因になります。
  • 刺激物を控える: アルコール、香辛料、カフェインなどは胃酸分泌を促し、粘膜を刺激します。
  • 食後すぐに横にならない: 胃の内容物が腸へ流れやすくなるよう、食後はしばらく体を起こしておきましょう。
  • 睡眠や生活リズムを整え、ストレスを溜めない: 自律神経のバランスを整えることが、胃の正常な働きにつながります。

まとめ

「胃カメラで異常がないと言われたのに、症状がつらい」というお悩みは、決して珍しいことではありません。重要なのは、きちんと検査を行って危険な病気を除外したうえで、ご自身の症状や体質に合った適切な治療を行うことです。

長引く胃の不調を「気のせい」「ストレスだから仕方ない」と我慢せず、一度当院にご相談ください。適切な治療と生活指導で、多くの方が症状の改善を実感されています。

機能性ディスペプシアは短期的な治療で治る病気ではありません。最低でも数か月の経過をみての判断となりますので、焦らず相談できればと思います。

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