- 2025年1月28日
- 2025年1月30日
消化管全体に炎症が及ぶ慢性疾患:クローン病
1.クローン病とは
クローン病は、主に小腸や大腸に炎症を引き起こす慢性疾患です。炎症は消化管のどの部分にも現れる可能性があり、病気が進むと腸の深い層にまで影響を及ぼします。この病気は20~30代の若い人に多く見られ、完全に治す方法はまだ見つかっていませんが、適切な治療で症状をコントロールすることができます。
クローン病の原因ははっきりしていませんが、遺伝的な要因や免疫システムの異常が関係していると考えられています。また、喫煙や高脂肪・低食物繊維の食事、腸内細菌のバランスの乱れなども影響を与えると言われています。
クローン病と潰瘍性大腸炎はどちらも腸に炎症を起こす病気ですが、大きな違いがあります。潰瘍性大腸炎は大腸や直腸だけに炎症が起こるのに対し、クローン病は消化管のどこにでも炎症が現れる可能性があります。また、クローン病は腸壁全体に炎症が広がるため、瘻孔(ろうこう)や膿瘍(のうよう)といった合併症を引き起こすことが多いのが特徴です。
クローン病の症状
クローン病の主な症状には、腹痛や下痢、血便があります。腸の炎症が原因で、便通が乱れたり、腸粘膜から出血することで貧血になることもあります。また、栄養の吸収がうまくいかなくなるため、体重減少や疲れやすさを感じることがあります。病気が進行すると、腸が狭くなって便が通りにくくなる腸閉塞や、腸の壁に穴が開く瘻孔などの合併症が起こることがあります。
クローン病の診断と検査
クローン病を診断するには、さまざまな検査が必要です。血液検査では、炎症の程度や栄養状態を確認します。内視鏡検査では、腸内の炎症や潰瘍の状態を直接観察し、必要に応じて組織の一部を採取して詳しく調べます。さらに、CTやMRIなどの画像検査を使って、腸全体の状態を詳しく把握します。
クローン病の治療方法
クローン病の治療は、症状を抑えて病気の進行を防ぐことが目的です。薬物療法では、腸の炎症を抑える抗炎症薬や、免疫システムを調整する薬が使われます。最近では、生物学的製剤の選択肢も増加しており、特に症状が重い患者さんに有効とされています。
また、栄養療法も重要な治療法です。消化に負担をかけない特別な栄養食品を使ったり、低脂肪で低刺激の食事を心がけることで腸を休ませることができます。症状が非常に重い場合には、腸の狭くなった部分を手術で取り除くことが必要になることもあります。
日常生活での注意点
クローン病の症状をうまく管理するためには、日常生活の中での工夫が必要です。仕事や家事の負担を軽くし、疲れを溜めないよう心がけることが大切です。ストレスを軽減するためにリラクゼーションや趣味の時間を取り入れましょう。また、喫煙は症状を悪化させるため、禁煙が推奨されます。食事では、高脂肪や刺激物を避け、腸に優しいメニューを心がけましょう。さらに、プロバイオティクスや発酵食品を取り入れて腸内環境を整えることも役立ちます。
クローン病は慢性的な病気で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、適切な治療と生活習慣の工夫で生活の質を保つことができます。医師や看護師、栄養士などの医療チームと連携しながら、自分に合った治療計画を進めていくことが大切です。病気と前向きに向き合い、長期的な視点で症状をコントロールすることが大切です。
※クローン病は、潰瘍性大腸炎に比較すると頻度は少ない疾患です。しかし良くなったり、悪くなったりを繰り返し、時には手術が必要となる場合があります。より専門的な治療が必要な場合が多く、早期の診断が重要です。10日以上1日5回以上の下痢や血便が続く場合は、一度検査をご検討ください。