- 2026年4月2日
治らない胃もたれや腹痛の原因は「萎縮性胃炎」かも?放置してはいけない胃のサイン

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐにある、たなか内科クリニックです。
「市販の胃薬を飲んでも、胃もたれや痛みがスッキリ治らない」
「常に胃のあたりに不快感や重さがある」
このような長引く胃の不調に悩まされていませんか?
もしかするとその症状は、単なる食べすぎや一時的なストレスではなく、胃の粘膜がSOSを出している「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」のサインかもしれません。
今回は、放置すると胃がんのリスクを高めてしまう「萎縮性胃炎」の正体や、進行のメカニズム、そして根本的な治療と早期発見の重要性について、これまで数多くの患者様を診てきた消化器内科医の視点から深く掘り下げて解説いたします。
■ 「萎縮性胃炎」とは?胃が小さく縮む病気ではありません

病名に「萎縮」とついているため、「胃そのものが小さく縮んでしまうの?」と誤解されることがよくありますが、胃のサイズが物理的に小さくなるわけではありません。
萎縮性胃炎とは、長期間にわたって胃の粘膜で炎症が慢性的に続き、胃酸などを分泌する組織(固有腺)が減少・消失して、胃の粘膜が薄く脆弱(ぜいじゃく)になってしまった状態を指します。慢性萎縮性胃炎とも呼ばれます。
暴飲暴食や強いストレス、刺激物の摂りすぎで起こり、数日で治る「急性胃炎」とは異なり、萎縮性胃炎は数年、数十年という長期にわたって静かに進行していくのが特徴です。
■ 最大の原因は「ピロリ菌」。知っておくべき感染の背景

萎縮性胃炎を引き起こす原因の約80%以上は、「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)」の感染によるものです。
ピロリ菌は、胃酸という強酸の中でも生きられる特殊な細菌です。多くの場合、胃酸の分泌がまだ弱く、免疫力も未発達な2〜5歳頃の幼少期に経口感染します。上下水道が整備されていなかった時代に井戸水などを介して感染したケースが多く、現在65歳以上の方の感染率は80%以上と言われています。
一方で、衛生環境が整った現代では若い世代の感染率は激減しており、大人になってから日常生活で新たに感染することは極めて稀です。
その他、自己免疫の異常によって起こる「自己免疫性胃炎」が萎縮の原因となることもありますが、圧倒的多数はピロリ菌の長期感染によるものです。
■ 見逃してはいけない!萎縮性胃炎が発する「胃のサイン」

胃の粘膜が薄くなり、胃酸の分泌機能が落ちてくると、以下のような症状が現れやすくなります。
| ・慢性的な胃もたれ、食後の不快感 ・みぞおち周辺のチクチクとした痛み ・胸やけ、げっぷ、吐き気 ・少し食べただけでお腹が張る(腹部膨満感) ・食欲不振 |
注意しなければならないのは、「症状の強さと、実際の胃の炎症・萎縮のレベルは必ずしも一致しない」ということです。
ひどい胃痛があるのに検査をすると軽い炎症しか起きていない方もいれば、逆に「まったくの無症状」なのに、検査をすると萎縮性胃炎がかなり進行している方も大勢いらっしゃいます。症状がないからといって安心できないのが、この病気の恐ろしいところです。
■ 放置は厳禁!「胃がん」へと繋がる負の連鎖

萎縮性胃炎を「ただの胃もたれ」と放置してはいけない最大の理由は、これが「前がん病変(がんになりやすい状態)」だからです。胃がんは、ある日突然きれいな胃から発生するわけではなく、以下のような負の連鎖をたどります。
| 1.ピロリ菌感染による「慢性胃炎」の発生 2.炎症が長期化し、粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」へ進行 3.さらに萎縮が進むと、胃の粘膜が腸の粘膜のように変化してしまう「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」が発生 4.腸上皮化生を起こした細胞の一部が「胃がん」へと悪性化する |
健康な胃の人と比べ、萎縮性胃炎がある人は胃がんの発症リスクが格段に跳ね上がります。また、粘膜が弱っているため胃潰瘍にもなりやすく、潰瘍から出血すれば吐血や下血(黒色便)、重度の貧血を引き起こし、緊急入院が必要になるケースもあります。
■ 萎縮性胃炎は「治る」のか?除菌治療の真実

「ピロリ菌を退治(除菌)すれば、萎縮性胃炎も完全に元通りに治る」と思われがちですが、実はそうではありません。
ピロリ菌の除菌治療を行うと、現在起きている胃の「炎症」自体は治まります。しかし、長年のダメージによって減少・消失してしまった固有腺(胃酸を出す組織)や、ペラペラに薄くなった粘膜が、ピロリ菌に感染する前のピカピカの胃に完全に戻ることはありません。
つまり、除菌によって胃がんリスクを「大幅に下げる」ことはできても、「ゼロにする」ことはできないのです。除菌に成功した後も、萎縮した胃の粘膜とは一生付き合っていく必要があり、定期的な経過観察が欠かせません。
■ 命を守るための検査と治療ステップ

長引く胃の不調がある方や、ピロリ菌検査をしたことがない方は、以下のステップでご自身の胃の状態を正しく把握しましょう。
1.胃カメラ(内視鏡)検査
まずは胃カメラで、胃の粘膜が萎縮していないか、潰瘍やがんが隠れていないかを直接観察します。※健康保険を使ってピロリ菌の検査・治療を行うためには、必ず「胃カメラ検査で慢性胃炎や胃潰瘍の診断を受けること」が義務付けられています。
2.ピロリ菌の感染検査
内視鏡の際に胃の組織を採取して調べる方法のほか、吐き出した息を調べる「尿素呼気試験法」、便を調べる「便中抗原測定」、血液などを調べる「抗体測定」などがあります。
3.治療(薬物療法と除菌)
ピロリ菌が見つかった場合は、2種類の抗菌薬と胃酸の分泌を抑える薬の合計3種類を、1日2回・7日間服用して除菌を行います(1回目の成功率は70〜80%、不成功の場合は薬を変えて2回目の除菌を行えば95%以上が成功します)。また、胃の不快な症状に対しては、粘膜保護薬や胃酸を抑える薬を処方し、並行して食生活(刺激物や過度なアルコール・カフェインの制限)の改善を図ります。
■ たなか内科クリニックへお気軽にご相談ください

「市販の胃薬でごまかしているけれど、実はずっと胃の調子が悪い」
という方は、そこに胃がんや進行した萎縮性胃炎が隠れている可能性があります。自己判断で放置せず、胃腸の疾患に精通した医師による的確な診断を受けることが何よりも重要です。
当院では、患者様の苦痛に配慮し、鎮静剤を使ってウトウトしている間に終わる胃カメラ検査や、嘔吐反射の少ない鼻からの胃カメラ(経鼻内視鏡)を行っております。
ピロリ菌を除菌できた方も、これから検査を受けたい方も、胃がん予防のために「1年に1回の胃カメラ検査」をぜひ習慣になさってください。ご不安な症状があれば、JR大久保駅北口すぐの「たなか内科クリニック」へ、いつでもお気軽にご相談ください。
※萎縮性胃炎(ピロリ菌感染)は基本的には無症状です。
健診時の胃バリウム検査にて胃炎の所見を指摘されている場合は、胃カメラでの確認をお勧めします。
最近若い方で胃カメラにて軽い胃炎所見のみでも、ピロリ菌を調べると陽性の方が居られます。ピロリ菌感染は減少していますが、完全に無くなったわけではありませんので、気になる方は一度受診を検討いただければと思います。