• 2026年5月11日

過敏性腸症候群(IBS)ガス型の症状・原因・治療法|おならが止まらない方へ

「食後に必ずお腹にガスが溜まる」「人前でのおならが気になって外出が不安」「お腹の張りが一日中続いてつらい」——こうした悩みを抱えながらも、内視鏡検査では「異常なし」と言われてしまい、どうしたらいいかわからないという方は意外に多くいらっしゃいます。これらの症状の背景には、「過敏性腸症候群(IBS)ガス型」が存在していることがあります。本記事では、IBSガス型の症状・原因・治療について詳しく解説します。

■過敏性腸症候群(IBS)ガス型とは?

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)とは、腸に器質的な病変(炎症・腫瘍など)がないにもかかわらず、腹痛・腹部不快感・排便習慣の変化が慢性的に繰り返される機能性消化管疾患です。

IBSには以下の4つのサブタイプがあります。

①便秘型(IBS-C):硬い便・コロコロ便が多い
②下痢型(IBS-D):水様便・軟便が多い
③混合型(IBS-M):便秘と下痢が交互に繰り返される
④分類不能型(IBS-U):上記に当てはまらないもの

「ガス型IBS」は公式分類には含まれませんが、腹部膨満感・おならの増加・腸内ガスの滞留が主な症状のケースを指します。日本消化器病学会の調査では、IBSの有病率は人口の10〜15%にのぼり、20〜40代の若い世代に多く見られます。

■ガス型IBSの主な症状と診断基準

ガス型IBSの症状は多岐にわたりますが、主なものは以下の通りです:

・1日中お腹が張って苦しい(特に午後から夕方に悪化することが多い)

・おならが多い、または頻繁に出る

・腹痛・腹部けいれん(排便後に楽になることが多い)

・排便後の残便感

・食後に急に腹部症状が悪化する

・ストレスや緊張で症状が悪化する

【IBSの診断基準(ローマIV基準)】

「最近3ヶ月間のうち、少なくとも週1日以上腹痛があり、以下のいずれか2つ以上を満たすもの」①排便に関連している

②排便回数の変化に関連している

③便の形状・外観の変化に関連している。症状の発現から6ヶ月以上前に遡ることが必要です。

診断の際は、大腸がん・潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患・大腸ポリープなどを除外するために、大腸カメラ検査が必要になる場合があります。

■なぜガスが溜まるのか?腸脳相関との深い関係

IBSのガス症状が起きる主なメカニズムは「腸管過敏性」と「腸脳相関の異常」です。

◆腸管過敏性:IBS患者の腸は、健康な人と比べて少量のガスや便でも過剰に痛みや不快感を感じやすい「過敏」な状態になっています。実際には腸内にそれほど多くのガスがなくても、「ガスが大量に溜まっている」と脳が誤認識するのです。

◆腸脳相関:腸と脳はミラクルな双方向ネットワーク(腸脳軸)でつながっています。ストレス・不安・緊張は脳を通じて腸の動きに直接影響を与え、腸の感覚を過敏にさせます。逆に腸の不調がさらなるストレスを引き起こすという悪循環が生まれます。

◆腸内細菌の乱れ(ディスバイオシス):IBSでは腸内の微生物叢(マイクロバイオータ)のバランスが崩れていることが確認されており、ガスを産生しやすい細菌が増えていることがあります。

◆SIBO(小腸内細菌異常増殖):IBS患者の一部にSIBOが合併していることがわかっており、小腸での炭水化物の発酵によって水素ガス・メタンガスが過剰に産生されます。

■食事療法:低FODMAPダイエットとは

IBSの食事療法として、最も科学的エビデンスが確立されているのが「低FODMAPダイエット」です。FODMAPとは、小腸で吸収されにくく腸内細菌に発酵されやすい短鎖炭水化物の総称です。

F:Fermentable(発酵性)

O:Oligosaccharides(オリゴ糖)→ 小麦・玉ねぎ・にんにく・豆類

D:Disaccharides(二糖類)→ 乳製品中のラクトース

M:Monosaccharides(単糖類)→ 果物中の果糖(フルクトース)・蜂蜜

A:And(および)

P:Polyols(ポリオール)→ ソルビトール(梨・桃・人工甘味料)、マンニトール(きのこ・カリフラワー)

低FODMAPダイエットでは、これらの食品を2〜6週間制限し、症状が改善すれば少しずつ再導入してどの食品が症状の引き金かを特定します。IBSの約75%の患者さんで症状改善が見られたという研究報告があります。ただし、実施には専門家(管理栄養士・医師)の指導が必要です。

■薬物療法とストレス管理・日常生活での注意点

ガス型IBSの薬物療法には以下のものがあります:

◆消泡剤(ジメチコンなど):腸内の気泡を消す薬で、膨満感の即効性のある緩和に使われます。

◆整腸剤・プロバイオティクス:腸内細菌のバランスを整える薬です。ビフィズス菌・乳酸菌配合の医療用製剤もあります。

◆便通改善薬:便秘型には緩下剤、下痢型には止痢薬を使い分けます。

◆抗コリン薬・鎮痙薬:腸の過剰な収縮を抑えて腹痛・けいれんを緩和します。

◆抗不安薬・抗うつ薬:腸脳相関を介してIBSを改善する効果が認められています。症状が重い場合に少量から使用します。

◆ストレス管理:認知行動療法(CBT)・マインドフルネス・腸向け催眠療法(Gut-directed hypnotherapy)もIBSに対して有効性が示されています。

日常生活では、規則正しい食事・十分な睡眠・適度な運動・ストレスを溜めない工夫が基本です。症状日記をつけて自分の症状と食事・ストレスの関係を把握することも有益です。

■よくあるご質問

Q: IBSガス型は完治しますか?

A: 完全な根治は難しいとされていますが、適切な治療と生活習慣の改善により、症状をコントロールして日常生活をほぼ支障なく送れるようになる方は多くいます。焦らず主治医と相談しながら対処法を見つけることが大切です。

Q: 市販の整腸剤や便秘薬で様子を見ても大丈夫ですか?

A: 一時的な症状であれば市販薬で改善することもありますが、漫然と使い続けるのはお勧めしません。おならや腹部膨満感が長引く場合、その裏に大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)といった別の病気が隠れている可能性もあります。症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。

Q: 診断のために大腸カメラは必ず受けないといけませんか?検査が怖いです。 A: IBSは「腸にがんや炎症などの目に見える異常がないこと」を確認して初めて診断されるため、大腸カメラ(内視鏡検査)で大きな病気を除外することが非常に重要です。当院では、患者様の不安や苦痛を最小限に抑えるため、鎮静剤(静脈麻酔)を使用し、ウトウトと眠っている間に終わる検査を行っておりますので、どうぞ安心してご相談ください。

なおカメラ検査の前に血液検査やお腹のレントゲンで状況の確認を行う場合も多いです。

どうしてもカメラが困難な方については当院ではできませんが、大腸のCTを撮影する方法もあります。しかしこの場合でも大腸カメラと同じく下剤を飲んで便をすべて出す必要があります。

おわりに:一人で悩まずにご相談ください

ガス型IBSは決して「気のせい」ではありません。においや音が気になり、人前で常に緊張してしまうのは日常生活において大きなストレスとなり、それがさらなる症状の悪化を招くという悪循環に陥ることもあります。

「たかがおならくらいで病院に行くのは恥ずかしい…」と我慢する必要はありません。まずは食事や生活習慣の見直しから始め、それでも改善しないお腹の不調は、一人で抱え込まずに当院へご相談ください。

当院では、患者様のデリケートなお悩みにしっかりと寄り添い、苦痛の少ない内視鏡検査で原因を特定した上で、一人ひとりの症状に合わせた治療やアドバイスを行っています。長引くお腹の不調にお悩みの方は、明石市・JR大久保駅北口すぐの「たなか内科クリニック」へ、ぜひお気軽にお問い合わせください。安心できる快適な毎日を取り戻すための一歩を、一緒に踏み出しましょう。

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