- 2026年3月6日
糖尿病の本当の怖さは「合併症」にある理由。「しめじ」と動脈硬化が招く未来

健康診断で「糖尿病」や「血糖値が高い」と指摘されても、多くの方は「特に症状がないから」とそのままにしてしまいがちです。
しかし、糖尿病の本当の怖さは、病気そのものではなく、高血糖が引き起こす「合併症」にあります。
糖尿病は、自覚症状がないまま静かに進行し、気づいた時には取り返しのつかないダメージを体に与えていることがあります。なぜ糖尿病の合併症はそれほど恐ろしいのか、具体的にお伝えします。
なぜ合併症が起こるのか?

血液中の糖分(血糖)が多い状態が続くと、血液はいわば「ドロドロのシロップ」のような状態になります。このドロドロの血液が全身の血管を流れ続けることで、血管の壁は常にダメージを受け、傷つき、もろくなっていきます。
特に被害を受けやすいのが、体中に張り巡らされた「細い血管(毛細血管)」です。
細い血管が詰まったり、破れたりすることで、その先にある細胞や臓器に酸素や栄養が届かなくなり、様々な障害が引き起こされます。
3大合併症「し・め・じ」(細い血管の障害)

糖尿病の合併症のうち、特に細い血管が集中する「神経」「目」「腎臓」に現れるものは「3大合併症」と呼ばれ、その頭文字をとって「し・め・じ」と覚えられます。
「し」=神経障害
最も早く現れやすい合併症です。
- 症状:
手足の先が「ピリピリする」「しびれる」「砂利の上を歩いているような違和感がある」といった症状から始まります。
- 危険性:
進行すると感覚が麻痺し、「痛み」や「熱さ」を感じにくくなります。
これが非常に危険で、例えば、靴擦れや小さな切り傷、火傷をしても気づかず、そこから細菌が入って化膿し、最悪の場合は組織が腐ってしまう「壊疽(えそ)」を起こし、足を切断しなければならないケースもあります。
「め」=目(網膜症)
目の奥にある「網膜(もうまく)」という、光を感じるスクリーンのような部分の血管が障害されます。
- 症状:
初期はまったく無症状です。進行すると、目がかすむ、視界に黒い点が飛ぶ(飛蚊症)、視力が低下するといった症状が現れます。
- 危険性:
網膜の血管が詰まったり、出血したり、網膜剥離を起こしたりします。治療が遅れると失明に至ることもあり、糖尿病網膜症は、日本人の成人の失明原因の上位を占めています。
「じ」=腎臓(腎症)
腎臓は、血液をろ過して老廃物を取り除き、尿として排出するフィルターの役割を担う、毛細血管の塊です。
- 症状:
初期は無症状です。進行すると、尿にタンパクが出るようになり、やがて体がむくむ、貧血になる、だるさが続くといった症状が現れます。
- 危険性:
腎臓のフィルター機能が失われ、体内に毒素が溜まる「腎不全」という状態になります。腎不全が末期まで進行すると、自分の腎臓の代わりを機械に任せる「人工透析」が必要になります。人工透析は、週に3回、1回4〜5時間かけて病院で血液を浄化する治療で、生涯にわたって続けなければなりません。
全身の動脈硬化(太い血管の障害)

高血糖は、細い血管だけでなく、心臓や脳につながる「太い血管」の動脈硬化も強力に進行させます。
高血糖に加えて、高血圧や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)も併発していると、動脈硬化のリスクは爆発的に高まります。
その結果、命に直結する重大な病気を引き起こします。
- 心筋梗塞・狭心症: 心臓の血管が詰まる・狭まる病気。
- 脳梗塞・脳出血: 脳の血管が詰まる・破れる病気。
これらの病気は、突然死の原因となったり、助かったとしても麻痺や言語障害などの重い後遺症を残したりする可能性があります。
最大のポイント:合併症は「元に戻らない」

この記事でお伝えしたい最も重要なことは、「一度進行してしまった合併症は、原則として元に戻らない」ということです。
- 壊疽で失った足は戻りません。
- 網膜症で失った視力は回復しません。
- 壊れてしまった腎臓の機能は再生しません。
だからこそ、糖尿病治療の最大の目標は、これらの合併症を「発症させないこと」「進行させないこと」に尽きます。
まとめ:症状が出る前の「血糖コントロール」がすべて

合併症は非常に恐ろしいものですが、血糖値を良好な状態にコントロールし続けることで、その発症や進行は十分に予防できます。
健康診断で「血糖値が高い」と指摘された時点は、まだ自覚症状がなく、合併症も始まっていない、あるいはごく初期の段階であることがほとんどです。
この「症状がない時期」こそが、治療を開始する絶好のタイミングです。
「まだ大丈夫」と放置せず、手遅れになる前に、ご自身の未来の健康を守るために、ぜひ一度ご相談ください。