- 2025年11月14日
胃がん検診、あなたに合うのは?バリウムと胃カメラを徹底比較!

「胃がん検診を受けようと思うけど、バリウムと胃カメラ、どっちが良いんだろう?」
そうお悩みの方も多いのではないでしょうか。以前はバリウム検査が主流でしたが、最近では胃カメラ検査も選択できるようになり、どちらを選べば良いか迷ってしまいますよね。
今回は、それぞれの検査の特徴やメリット・デメリットを詳しくご紹介し、あなたがどちらの検査を受けるべきか考えるヒントをお伝えします。
1.胃がん検診の選択肢:バリウム検査 vs 胃カメラ検査
胃がん検診には、主にバリウム検査(胃部X線検査)と胃カメラ検査(胃内視鏡検査)の2種類があります。まずは、それぞれの検査がどのようなものか見ていきましょう。
1ー1.バリウム検査(胃部X線検査)とは?

バリウム検査は、白い造影剤であるバリウムを飲んで、食道、胃、十二指腸をX線で撮影する検査です。体を動かしながら様々な角度から撮影することで、胃の全体像や凹凸、形状の変化などを確認します。
| 長所 | ・形や動き、食べ物の通り具合を把握できる。 ・胃全体像の把握が可能、費用も抑えられる傾向がある。 ・多くの人が一度に受けられるため、集団検診で広く利用されてきた。 |
| 短所 | ・粘膜の微細な色調変化やごくわずかな凹凸は捉えにくい。(白黒の影絵を見るようなイメージです) ・異常が見つかった場合、さらに胃カメラによる精密検査が必要になることが多く、二度手間になる可能性がある。 ・X線を使用するため、ごくわずかながら放射線被ばくがある。 ・バリウムの誤嚥(気管に入ってしまうこと)や、検査後のバリウムの排出遅延による便秘、まれに腸閉塞などの偶発症のリスクがある。 |
1₋2.胃カメラ検査(胃内視鏡検査)とは?

胃カメラ検査は、細いチューブの先端についた小型カメラを口や鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸の内部を医師が直接目で見て観察する検査です。
| 長所 | ・粘膜の色や表面のわずかな変化も鮮明に確認でき、早期の胃がんや小さな病変の発見に優れている。 ・食道についても胃と同じように詳しく観察できる。 ・がんが疑われる病変があれば、その場で組織の一部を採取(生検)し、詳しい検査で確定診断ができる。(これにより二度手間を防げます) ・逆流性食道炎などの病気の診断も可能。 |
| 短所 | ・検査中に吐き気や不快感を伴うことがある。(鎮静剤や経鼻内視鏡で軽減可能) ・検査前の咽頭麻酔によるショックや、ごく稀に消化管の損傷、出血などの偶発症のリスクがある。 ・バリウム検査に比べて費用がやや高くなる傾向がある。 |
2.あなたに合うのはどちらの検査?選び方のポイント

それぞれの検査の特徴を踏まえると、以下のような方にどちらの検査がおすすめか、具体的な選び方のポイントを見ていきましょう。
2-1. 胃カメラ検査をおすすめする方
より精密な検査で早期発見を目指したい方や、症状がある方には胃カメラ検査が特に推奨されます。
- 胃の症状がある方:胃痛、胸やけ、食欲不振、黒い便が出るなど、何らかの症状がある場合は、直接病変を確認できる胃カメラが適しています。
- ピロリ菌感染歴がある方(除菌後も含む):ピロリ菌は胃がんのリスクを高めるため、定期的な胃カメラによる詳細な観察が望ましいとされています。
- 家族に胃がんの既往歴がある方:遺伝的要因も考慮し、より精密な検査を選ぶことが大切です。
- 過去の検診で異常を指摘され、精密検査が必要な方。
- 便秘がちで、バリウムの排出が心配な方。(バリウムは便秘の原因となることがあります)
- 「オエッ」となるのが苦手な方、検査に不安がある方:最近では、鎮静剤(眠り薬)の使用や、口からの挿入より細くて不快感が少ない経鼻内視鏡を選べる医療機関が増えています。事前に確認してみましょう。
2-2. バリウム検査も選択肢となる方
以下のような場合は、バリウム検査も選択肢となります。
- 胃カメラの検査がどうしても苦手、抵抗がある方。
- 費用を抑えたい方:自治体検診などで費用補助があり、費用面を重視する場合。
- まずは胃の全体的な異常を大まかに確認したい方(ただし、異常があれば胃カメラでの精密検査が必要になることが多いです)。
3.バリウム検査を受ける際の注意点と準備

もしバリウム検査を選択する場合、検査を安全に受けるためにいくつかの注意点と準備が必要です。
3-1. バリウム検査を受けられない・勧められない方
以下に該当する方は、バリウム検査を受けられない、または他の検査方法を検討すべき場合があります。必ず医療機関に相談しましょう。
- 過去にバリウムでアレルギー症状が出たことがある方
- 妊娠中、または妊娠の可能性のある方
- 重度の肺疾患がある方
- 腎不全で透析中、水分制限を受けている方
- 身長・体重制限を超える方(装置による制限)
- 植え込み型除細動器(ICD)を装着されている方
- 腸閉塞や腸ねん転、大腸憩室炎の既往がある方
- 日常的にむせやすい方、過去にバリウムを誤嚥したことがある方
3-2. 検査前日の準備と当日の注意点

- 前日夜:飲酒を控え、夕食は午後8時頃までに済ませましょう。それ以降は水(白湯)のみです。
- 当日朝:何も食べないでください(水は検査の1時間前までコップ1杯程度なら可)。ガムや喫煙も控えます。持病の薬については、事前に医師や施設に確認しましょう。特に心臓病・高血圧症の薬は早めに服用し、検査まで2時間以上空けることが多いです。
- 排便:検査当日の朝はできるだけ排便しておきましょう。便秘がちな方は、前日の夜に市販の下剤などを服用して排便を促すことが推奨されます。
3-3. 検査後の注意
- 水分補給:バリウムの排出を促すため、検査後は多めに(1~2リットル以上)水分を摂りましょう。
- 食事:検査後できるだけ早く食事を摂ってください。
- 便の確認:検査後2~3日は、薄茶色からクリーム色のバリウムが混じった便が出ます。もしバリウムが排出されず、お腹が張る、痛い、吐き気がするなどの症状があれば、すぐに医療機関に連絡してください。
4. 簡易検査「ABC検診」について

「胃カメラもバリウムも抵抗がある」という方には、ABC検診という選択肢もあります。これは血液検査で、胃がんの原因となりやすいピロリ菌の感染の有無と、ピロリ菌によって荒らされた胃粘膜(萎縮粘膜)の状態を調べるものです。
注意点:ABC検診は、あくまで「胃がんになりやすいリスクがあるか」を調べる検査であり、胃がんそのものを見つける検査ではありません。リスクが高いと判定された場合は、精密検査として胃カメラ検査を受ける必要があります。
5. 定期的な検診で胃がんの早期発見を

胃がん検診は、早期発見・早期治療によって命を救うために非常に重要です。
- 精密な診断と確定診断を求めるなら、胃カメラ検査。
- 手軽さを重視するならバリウム検査も選択肢に(ただし、精密検査が必要になる可能性も考慮)。
- ご自身の症状、過去の病歴、家族歴、そして検査への抵抗感などを総合的に考慮し、最適な検査方法を選びましょう。
迷う場合は、まずはかかりつけ医や検診を受ける医療機関に相談し、ご自身の状況に合わせたアドバイスを受けることを強くお勧めします。定期的な検診で、ご自身の胃の健康を守っていきましょう!
※健診時についてもバリウム検査から胃カメラへ移行が進められています。
しかし、どうしても胃カメラが苦手な方も居られますので、その場合は交互に検査を受けるように勧める時もあります。(なお当院ではバリウム検査は行っておりません)