• 2026年7月3日

胃カメラで異常なし?長引く胃もたれや痛みの原因「機能性ディスペプシア」とは

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。

「胃がもたれて食事が楽しめない」
「みぞおちがシクシク痛む」
「少し食べただけですぐにお腹がいっぱいになる」

このようなつらい症状が続いているため、思い切って胃カメラ検査を受けたのに、「胃はきれいですね。特に異常はありませんよ」と言われて戸惑った経験はありませんか?

実は、目に見える異常(潰瘍や炎症など)がないにもかかわらず胃の不調が続く場合、「機能性ディスペプシア(FD)」という病気が隠れている可能性が非常に高いのです。 今回は、日本人の約15〜20%(5〜6人に1人)が抱えているとも言われるこの「機能性ディスペプシア」について、なぜ症状が起きるのか、どのような治療を行うのかを内科医の視点から詳しく解説いたします。

■1. 「機能性ディスペプシア(FD)」ってどんな病気?

かつては「慢性胃炎」や「神経性胃炎」などと呼ばれ、「気のせい」「ストレスのせい」と片付けられがちだった胃の不調。現在では、胃の「働き(運動機能)」や「感覚(知覚)」に異常が生じる独立した病気として広く認識されています。 大きく分けて以下の2つのタイプがあり、4つの代表的な症状が現れます。

【食後愁訴症候群(PDS)】

  • 食後のつらい膨満感: 食事の後に、胃がパンパンに張って苦しい感覚が続く。
  • 早期満腹感: 少しの量しか食べていないのに、すぐにお腹がいっぱいになってしまい、それ以上食べられない。

【心窩部痛症候群(EPS)】

  • みぞおちの痛み: みぞおち(心窩部)がキリキリ、シクシクと痛む。
  • みぞおちの灼熱感: みぞおちのあたりが焼けるように熱く感じる。

■2. なぜ「きれいな胃」なのに不調が起きるのか?

胃に潰瘍やがんがないのに症状が出る理由として、主に以下のメカニズムが複雑に絡み合っていると考えられています。

  • 胃の運動機能の低下(排泄遅延): 食べ物を細かく砕いて腸へ送り出す動き(蠕動運動)が弱まり、胃の中に食べ物が長く留まってしまいます。
  • 胃の広がり(適応性弛緩)の障害: 食事が入ってきたときに胃がうまく膨らまず、すぐにお腹が張って満腹感を感じてしまいます。
  • 内臓の知覚過敏: わずかな食べ物の刺激や、正常な量の胃酸であっても、胃が過敏に反応して痛みや不快感を感じてしまいます。
  • その他の要因: 十二指腸での胃酸や脂質に対する過敏な反応、ピロリ菌の感染、そして心理的なストレスや睡眠不足などの自律神経の乱れも、発症の大きな引き金になります。

■3. 正しい診断には「胃カメラ検査」での確認が必須

機能性ディスペプシアと診断するための国際的な基準(ローマIV基準)では、「症状が6ヶ月以上前から始まり、直近の3ヶ月間続いていること」に加え、「症状の原因となるような器質的疾患がないこと」が条件とされています。

つまり、「胃カメラ(上部内視鏡検査)」を受けて、胃潰瘍や逆流性食道炎、そして絶対に放置してはいけない胃がんなどの重大な病気が隠れていないかをしっかりと確認(除外診断)することが不可欠なのです。

【絶対に見逃してはいけない危険なサイン(アラームサイン)】

胃の不調に加えて、以下のような症状がある場合は悪性腫瘍など重篤な疾患の可能性があるため、早急に医療機関を受診してください。

  • ダイエットをしていないのに急激に体重が減った
  • 便が真っ黒(タール便)になる、血を吐いた
  • めまいや立ちくらみなどの貧血症状がある
  • 夜、痛みで目が覚めるほどの激痛がある
  • 白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)

■4. どうやって治す?治療法と生活習慣の改善

機能性ディスペプシアの治療は、患者様お一人おひとりの症状に合わせてお薬を調整し、並行して生活習慣を見直していくことが基本となります。

【お薬による治療】

  • 消化管運動機能改善薬: 胃の動きを活発にして、食後のもたれや早期満腹感を軽減します。
  • 酸分泌抑制薬(PPIなど): 胃酸のダメージを和らげ、みぞおちの痛みや灼熱感に効果を発揮します。
  • 漢方薬: 胃腸の働きを整え、食欲を増進させる効果(六君子湯など)があり、有効な治療の選択肢となります。
  • 低用量抗うつ薬・抗不安薬: 知覚過敏やストレスが強い場合には、痛みの伝わり方を和らげる目的で使用することがあります。 ※もしピロリ菌感染が確認された場合は、除菌治療を行うことで症状が改善するケースもあります。

【日々の生活習慣の見直し】

お薬と同じくらい大切なのが、毎日の過ごし方です。

  1. 腹八分目を心がけ、規則正しい時間に食事をとる。
  2. 脂っこいもの、香辛料などの辛い食べ物、炭酸飲料、過度なアルコールを控える。
  3. 食べた後すぐに寝転がらない(胃酸の逆流を防ぐため)。
  4. 十分な睡眠をとり、自分なりのストレス解消法を見つける。

■おわりに:焦らずじっくり治していきましょう

機能性ディスペプシアは慢性的な疾患であり、お薬を数日飲めばすぐに完全に症状がなくなるというものではありません。最低でも数ヶ月単位でじっくりと症状をコントロールしていく必要があります。 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すこともありますが、医師と相談しながら適切にお薬を調整し、ライフスタイルを整えていくことで、確実に日常生活を楽に過ごせるようになります。

「ずっと胃の調子が悪いけれど、どうせ異常なしと言われるから…」と我慢せず、まずは消化器内科でしっかり原因を調べましょう。当院では鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ検査も行っております。長引く胃の不調でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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