- 2026年7月3日
突然の腹痛と血便に要注意!「虚血性大腸炎」の原因と正しい対処法

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。
「さっきまで何ともなかったのに、急に激しいお腹の痛みに襲われ、トイレに行ったら血便が出た…」 このような恐ろしい経験をして、慌てて医療機関に駆け込む方は少なくありません。こうした突然の腹痛と血便を引き起こす代表的な病気の一つに、「虚血性大腸炎」があります。
日本では特に中高年の女性に多く見られる身近な腸の病気ですが、その症状は大腸がんやその他の厄介な腸炎とよく似ているため、正確な診断が欠かせません。
今回は、虚血性大腸炎がなぜ起こるのか、その特徴的な症状のサイン、そして検査や治療法について内科医の視点から詳しく解説いたします。
■1. 虚血性大腸炎とはどんな病気?

「虚血(きょけつ)」とは、血液の流れが滞り、組織に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなる状態を指します。 虚血性大腸炎は、大腸の壁に栄養を送っている血管の血流が一時的に悪くなることで、腸の粘膜にダメージ(炎症や潰瘍)が生じる病気です。
大腸の中でも、左側にある「下行結腸」から「S状結腸」にかけてのエリアは、構造的に血管のネットワークが弱く、血流不足に陥りやすい場所(watershed area)として知られており、この病気の好発部位となっています。
■2. 典型的なサインは「腹痛 → 下痢 → 血便」

虚血性大腸炎には、非常に特徴的な症状の現れ方があります。それは、以下の3つの症状が数時間のうちに順番に起こることです。
- 突然の強い腹痛: 左下腹部を中心とした、差し込むような激しい痛みで発症することが多いです。
- 下痢: 痛みに続いて、便意を催して下痢が出ます。
- 血便: 下痢の後に、鮮やかな赤い血(鮮血)、あるいは少し暗い赤色の血が混じった便が出ます。出血量はトイレットペーパーに付く程度から、便器が真っ赤に染まるほど多量な場合まで様々です。
これらに加えて、吐き気や発熱を伴うこともあります。多くの場合、症状は数日から1週間程度で自然に和らいでいきますが、重症化すると長引くことがあります。
■3. なぜ腸の血流が悪くなるの?5つの主な原因

虚血性大腸炎を引き起こす「血流の低下」には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。
- 動脈硬化と加齢: 高血圧や糖尿病、脂質異常症などによって血管が硬く狭くなっていると、腸への血流も悪くなります。これが中高年に多い最大の理由です。
- 便秘や「いきみ」: 便秘で硬い便が腸管を圧迫したり、トイレで強くいきんで腸内の圧力が急上昇したりすると、腸の壁の血管が押しつぶされて血流が途絶えやすくなります。
- お薬の影響: センナなどの「刺激性下剤」の常用は、腸を無理に収縮させるため虚血の引き金になることがあります。その他、痛み止め(NSAIDs)や利尿剤が影響することもあります。
- 脱水状態: 夏場の水分不足や、発熱、過度な下痢などで体内の水分が減ると、血液がドロドロになり血流が低下します。
- その他の全身要因: 心不全や腎不全、大きな手術の後など、全身の血の巡りが悪くなっている状態もリスクとなります。
■4. 正確な診断には「大腸カメラ」が不可欠

突然の血便が出た場合、それが虚血性大腸炎によるものなのか、大腸がん、潰瘍性大腸炎、あるいは食中毒などの感染性腸炎によるものなのかを自己判断するのは極めて危険です。
診断を確定させるために最も重要なのが大腸カメラ(大腸内視鏡検査)です。 発症から2〜3日以内の検査では、腸の粘膜がむくんで赤くなり、縦に走るような潰瘍(縦走潰瘍)が見られるのが特徴です。
また、健康な粘膜と炎症を起こしている粘膜の境界がくっきりと分かれていることも、この病気ならではの所見です。 ※ただし、腹痛などの炎症があまりに強い場合は、無理にカメラを入れず、まずはCT検査や血液検査で状態を評価し、腸の安静を保ってから後日大腸カメラを行うこともあります。
■5. 治療の基本は「腸のお休み」

治療方針は重症度によって分かれます。
- 軽症〜中等症の場合: 入院せず、ご自宅で消化に良いものを食べながら安静に過ごすか、あるいは数日間の絶食と点滴によって徹底的に「腸を休ませる」治療を行います。感染予防のために抗生物質を使用することもあります。原因となっているお薬(便秘薬など)があれば、使用を中止・調整します。
- 重症の場合(稀なケース): 腸の組織が死んでしまう(壊死)、腸に穴が開く(穿孔)、腹膜炎を起こすといった重篤な状態(壊疽型)に陥った場合は、緊急の手術でダメージを受けた腸を切り取る必要があります。
■まとめ:再発を防ぐための生活習慣のポイント

虚血性大腸炎は、一度治っても再発することがある病気(慢性型)です。再びつらい思いをしないためには、以下の予防策を日常的に取り入れましょう。
- 便秘をため込まない: 食物繊維をしっかり摂り、適度な運動で腸の動きを活発にしましょう。
- こまめな水分補給: 特に起床時や入浴前後、汗をかいた時は、意識して水分(1日1.5〜2リットル目安)を摂り、脱水を防ぎます。
- 動脈硬化の予防: 高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理と、禁煙を心がけてください。
- 下剤の乱用に注意: 刺激の強い下剤に頼りすぎないよう、医師に相談してお腹に優しいお薬に調整してもらうことも大切です。
「以前も同じ症状で治ったから」と油断するのは禁物です。別の重篤な病気が隠れている可能性もあるため、突然の腹痛や血便が現れた際は、速やかに消化器内科を受診してください。 当院では、鎮静剤を活用した苦痛の少ない大腸カメラ検査を行っておりますので、お腹の急なトラブルでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
※虚血性腸炎は比較的頻度の高い病気の一つです。
軽症であれば1週間以内で自然に治りますが、重症の場合は絶食の為に入院での治療が飛鳥となる場合があります。
また虚血性腸炎と思っていたら大腸がん等の他の病気が隠れていることもあります。
当院では虚血性腸炎と診断しても1-2か月後には大腸カメラにて他の病気が無いか確認することを勧めております。