- 2026年7月3日
長引く胸やけやげっぷの原因?「逆流性食道炎」と「食道裂孔ヘルニア」の関係

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。
「食後に胸が焼けるように熱くなる」
「酸っぱい水がのどまで込み上げてくる」
「最近、なぜかげっぷがよく出る」
このような不快な症状が続いている場合、それは「逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)」のサインかもしれません。現在、日本人の10〜20%がこの病気に悩まされていると言われるほど、非常に身近な消化器疾患です。
さらに、この逆流性食道炎を引き起こす根本的な原因として、「食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア」という胃の構造的なトラブルが関わっているケースが少なくありません。
今回は、長引く胸やけやげっぷの原因となる逆流性食道炎と食道裂孔ヘルニアの深い関係、そして検査や治療法について、医師の視点から分かりやすく解説いたします。
■1. 胃酸が逆流する理由と「食道裂孔ヘルニア」

本来、食べたものや胃酸が食道に逆戻りしないよう、胃と食道のつなぎ目には「下部食道括約筋(LES)」という筋肉の弁があります。また、その周囲を覆う「横隔膜」も外側から弁を締め付けることで、逆流を防ぐ強力なストッパーの役割を果たしています。
ところが、加齢や生活習慣の影響でこの横隔膜の隙間(食道裂孔)が緩んで広がり、胃の一部が胸のほうへと飛び出してしまうことがあります。これを「食道裂孔ヘルニア」と呼びます。 ストッパーである横隔膜のサポートがなくなるため、弁の締まりが弱くなり、胃酸が簡単に食道へ逆流するようになってしまうのです。
【食道裂孔ヘルニアになりやすい要因】
- 加齢による筋肉の衰え
- 肥満や内臓脂肪の増加
- 日常的な前かがみの姿勢(猫背など)
- 重いものを持ち上げたり、強くいきんだりするお腹への圧力(腹圧)
胃カメラ検査を受ける方の30〜40%に見られるほどよくある状態ですが、ヘルニアがあるからといって必ずしも全員に症状が出るわけではありません。
■2. 見逃してはいけない逆流性食道炎の症状

胃酸は食べ物を溶かすほど強力な酸です。それに耐える構造を持たない食道の粘膜に胃酸が触れ続けると、炎症やただれ(びらん)が起こり、以下のような多彩な症状が現れます。
- 胸やけ、みぞおちの痛み
- 呑酸(どんさん:酸っぱい・苦い液体が口に上がる感覚)
- 頻繁なげっぷ
また、胃酸がのどや気管まで逆流することで、消化器とは関係なさそうな症状(食道外症状)を引き起こすこともあります。
- 長引く原因不明の咳(喘息のような症状)
- 声のかすれ、のどの違和感(イガイガする感じ)
- 歯が溶ける(酸蝕症)
特に、夜中寝ている間に胃酸が逆流すると、睡眠の質が著しく低下するだけでなく、誤って気管に入って「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」を引き起こすリスクもあるため注意が必要です。
■3. 正しい診断には「胃カメラ検査」が必須

逆流性食道炎の診断や、食道裂孔ヘルニアの状態を正確に把握するためには、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が欠かせません。 カメラで直接粘膜を観察し、炎症やただれの程度を国際的な基準(ロサンゼルス分類)に基づいて評価します。
【粘膜がきれいに見えるのに症状があるケース】
胃カメラで食道を見ても炎症や傷が全くないのに、強い胸やけなどの症状がある方もいらっしゃいます。これは「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」と呼ばれ、実は逆流性食道炎全体の半数以上を占めています。食道の粘膜が胃酸に対して知覚過敏になっていることが原因と考えられており、この場合もお薬による治療が有効です。
【放置するとがんのリスクにも】
胃酸の逆流を長年放置していると、食道の粘膜が変性して「バレット食道」という状態になることがあります。これは将来的に食道がん(腺がん)を発生させるリスク要因となるため、定期的な胃カメラ検査での経過観察が強く推奨されます。
■4. 治療の2本柱:「お薬」と「生活習慣の改善」

逆流性食道炎の治療は、お薬で症状を抑えつつ、生活習慣を見直すことが基本となります。
【お薬による治療(薬物療法)】
胃酸の分泌を強力に抑えるお薬(PPIやP-CABなど)を服用します。多くの方は服用を始めて数日〜数週間で症状が劇的に良くなります。しかし、自己判断で勝手に薬をやめると高確率で再発するため、医師の指示通りに服薬を続けることが大切です。
【生活習慣の改善】
お薬で胃酸を抑えても、逆流しやすい状態そのものを直さなければ根本的な解決にはなりません。以下のポイントを意識しましょう。
- 食後2〜3時間は横にならず、上体を起こしておく
- 寝る時は枕やクッションを使って上半身を少し高くする
- 腹八分目を心がけ、早食いや食べ過ぎを防ぐ
- 脂っこい食事、甘いもの、アルコール、カフェイン、炭酸飲料、柑橘類などを控える
- 肥満気味の方は適正体重を目指し、お腹を締め付ける服装は避ける
- 禁煙する(タバコは逆流を防ぐ筋肉を緩めてしまいます)
大きすぎる食道裂孔ヘルニアがあり、お薬や生活習慣の改善でも症状がコントロールできない重症な場合には、外科的手術で緩んだ部分を縫い合わせる治療が選択されることもあります。
■まとめ

胸やけやげっぷは「ただの食べ過ぎ」「年のせい」と見過ごされがちですが、その背景には食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎が隠れている可能性があります。 「いつもお薬をもらっているけれど、なかなかスッキリ治らない」「長引く咳やのどの違和感がある」という方は、自己判断で放置せず、まずは胃カメラでご自身の食道や胃の状態を正しく知ることが大切です。
たなか内科クリニックでは、患者様の不安や苦痛を最小限にするため、ご希望の方には鎮静剤(静脈麻酔)を使用してウトウトと眠っている間に終わる胃カメラや、鼻から入れる極細のカメラ(経鼻内視鏡)をご用意しています。お腹の不調でお困りの方は、決して我慢せずに当院へお気軽にご相談ください。