- 2025年1月28日
- 2025年1月30日
大腸がん
1.大腸がんとは
大腸がんは、結腸や直腸に発生する悪性腫瘍を指し、日本人の死亡原因の上位を占める病気です。初期には目立った症状がなく、症状が出てから受診すると進行していることも少なくありません。一方で、早期に見つかれば高い確率で治癒が期待できるため、定期検診が非常に重要とされています。
2.主な原因
食生活・生活習慣の影響
高脂肪・低食物繊維の食事や便秘、喫煙、飲酒などが腸の粘膜に長期的な刺激を与え、がんの発生リスクを高めます。
遺伝的要因
血縁者に大腸がんの患者がいる場合や特定の遺伝子変異がある場合、発症リスクが上昇します。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病のように炎症が長期間続くと、粘膜が変異を起こしやすくなります。
ポリープの悪性化
腸の粘膜にできた良性ポリープが、遺伝子変異の蓄積によって一部が悪性化し、大腸がんへ移行する経路がよく知られています。
3.大腸がんの種類
結腸がん
盲腸からS状結腸までの範囲に生じるがん。腸内内容物が長時間とどまりやすいため、粘膜が発がん性物質にさらされやすい特徴があります。
直腸がん
肛門に近い位置に発生するがんで、血便や排便困難、残便感などの症状が目立ちます。
4.主な症状
初期症状
自覚症状がほとんどなく、軽い便秘や下痢、微量の血便などが見られる場合も、他の病気と区別がつかず見逃しやすいのが特徴です。
進行期の自覚症状
- 便に血液が混ざる(赤い血、または黒っぽい血)
- 便通異常(下痢と便秘が交互に起こる、便が細くなる)
- 腹部膨満感、腹痛
- 体重減少、貧血
下痢・便秘の交互出現
腸管が狭くなった結果、便が通過しにくくなり、一時的に便秘が続いたあとに下痢が起こる場合があります。
血便や黒色便
- 直腸に近い部位にがんがあると、鮮血が便に混じる場合が多い
- 結腸がんなど上部で出血すると、便が暗い色(黒色便)になることがある
腹痛・体重減少
- 腸閉塞や強い炎症が起こっている場合に腹痛が生じやすい
- 栄養吸収が低下すると体重が急激に減少することがあり、要注意サインとなります
5.大腸がんの検査方法
便潜血検査
- 便にわずかな血液が混在しているかを調べるスクリーニング検査
- 1回でも陽性になると、内視鏡検査による詳しい評価が必要なことが多い
大腸内視鏡検査
- 大腸内をカメラで直接観察し、ポリープや腫瘍など異常があればその場で生検や切除が可能
- 検査前に下剤を服用して腸をきれいにする準備が必要
精密検査(CT・MRI・PET-CT など)
- がんが見つかった場合、腫瘍の大きさやリンパ節転移、他臓器転移の有無を評価
- 治療方針と予後の見通しを立てるために重要
6.ステージ分類と治療の違い
Stage 0 (極めて初期) | 粘膜内にとどまる状態で、内視鏡治療により切除可能なケースが多い。再発リスクが低いのが特徴。 |
Stage I~II | がんが腸壁の深い層に浸潤していても、リンパ節や遠隔臓器への転移が確認されない段階。主に手術や内視鏡治療が中心。 |
Stage III | リンパ節に転移が認められる場合。手術とあわせて化学療法を行い、再発予防を図ることが一般的。 |
Stage IV | 肝臓や肺などへの遠隔転移がある段階。根治が難しい場合も多く、手術・化学療法・放射線療法などを組み合わせ、症状緩和や延命を目指す。 |
7.治療の選択肢
手術治療(外科的切除)
- 早期がんの一部は内視鏡治療で摘除可能だが、進行がんでは腸の一部を切除し再建する方法が取られます。
化学療法(抗がん剤治療)
- リンパ節転移がある場合や再発リスクが高い場合、術後の補助療法として行われる
- 手術が難しいケースでも、抗がん剤で腫瘍を縮小させることが期待できる
放射線療法
- 特に直腸がんで、がんの縮小や症状の緩和を目的に行われる
- 化学療法との併用で相乗効果が得られる場合もある
8.大腸がん予防と生活習慣の見直し
定期検診
便潜血検査や大腸内視鏡を適切な間隔で受けることが、早期発見につながります。
食生活の改善
高脂肪の食事を控え、野菜や果物など食物繊維を多く含むメニューを意識する
運動習慣・体重管理
腸の動きを促進し、便通を整えるためには適度な運動が大切
禁煙・節酒
タバコと過度の飲酒は大腸がんを含む多くのがんリスクを高める要因
大腸がんは、初期にははっきりした症状が出にくいため、定期検診を受けて早期に発見することが予後に大きな影響を与えます。便潜血検査や内視鏡検査を活用し、ポリープや初期がんの段階で発見・切除ができれば、治療成績は良好です。さらに、日頃からバランスのよい食事と適度な運動、禁煙・節酒などの生活習慣を取り入れ、腸に負担をかけない工夫をすることが、大腸がんの予防と再発防止につながります。一度でもポリープを切除した既往のある方は別の大腸にもポリープができることがあり、1-3年後を目安での再検査をお勧めしています。
便潜血検査は簡便で有用な検査とされていますが、陽性を指摘されても放置されている例が少なくありません。迷っている方でも一度説明を聞きに受診頂いても結構です。
年々大腸がんの死亡数は増加傾向ですが、検査率が上がれば、大腸がんも減少が期待できると考えています。
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