- 2025年12月2日
【医師が警告】「検便」で陽性が出たら放置しないで!大腸カメラで大腸がんの芽を摘む

こんにちは。JR大久保駅すぐのたなか内科クリニックです。
当院は、内科全般の診療に加え、胃がん・大腸がんの撲滅を目指し、胃カメラ(上部内視鏡検査)や大腸カメラ(下部内視鏡検査)などの内視鏡検査に力を入れています。
健康診断で「検便(便潜血検査)」を受けた後、「陽性」という結果を受け取って不安になったり、「どうせ痔だろう」と放置したりしていませんか?
実は、この「検便陽性」のサインを無視することは、大腸がんの早期発見のチャンスを逃すことにつながりかねません。
今回は、検便陽性の意味と、その後に必ず受診していただきたい精密検査(大腸カメラ)の重要性についてお伝えします。
1. 検便(便潜血検査)が教えてくれることと、その限界

私たちが一般的に健康診断で受ける「検便」は、正確には便潜血検査と呼ばれます。
検便の役割:微量の血液を検出する
便潜血検査は、肉眼では確認できない微量な血液が便に混じっている状態を検出します。これにより、症状が現れる前に大腸がんやポリープ、潰瘍性大腸炎やクローン病といった消化管の病気による出血を捉えることができます。
検便の限界:見逃されるリスク
非常に有用な検査ですが、便潜血検査には限界もあります。
- 発見率の限界: 1回の便潜血検査で大腸がんを発見できる可能性は3〜5割ほどに留まります。
- ポリープの見逃し: 大腸がんの「芽」となるポリープの発見に関しては、1〜2割と低い精度です。
- 出血がなければ陰性: 検査時にたまたま出血がなければ陰性となるため、陰性であっても必ず大腸がんが否定されるわけではありません。
自治体や企業健診では、手軽さとコストの面からまず便潜血検査が行われますが、陽性が出た場合は、必ず精密検査(大腸内視鏡検査)へ進む必要があります。
2. 「陽性」を放置すべきでない理由

検便で陽性反応が出た場合、多くの方が「痔だろう」と自己判断し、そのまま放置してしまうケースが少なくありません。しかし、放置することで、がんが進行し症状が出るまでに時間がかかり、早期に見つけて対処するチャンスを逃してしまいます。
便潜血陽性の背景には、以下のような疾患が隠れている可能性があります。
- 大腸がん:腸内の腫瘍が血管を傷つけ、出血を起こします。初期にはほとんど自覚症状がないため、検便陽性が貴重なサインとなります。
- 大腸ポリープ:将来がん化するリスクがある良性腫瘍です。
- 炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の粘膜に炎症が起こる病気です。
- その他の出血:痔や裂肛、胃・十二指腸潰瘍からの出血も原因となることがあります。
特に、「昨年も陽性であったが放置していた」という方の中には、大腸がんやポリープが隠れている場合があるため、自己判断せずに医師の診断を受けることが大切です。
3. 精密検査の決定版「大腸カメラ」

精密検査として最も推奨されるのが大腸カメラ(下部内視鏡検査)です。
大腸カメラは、カメラを挿入して大腸の内部を直接観察できるため、便潜血検査では見逃されがちな小さながんやポリープも正確に発見できます。
メリット①:早期発見と治療を同時に完了
大腸内視鏡検査の最大の強みは、自覚症状のまったくない小さながんやポリープも発見できることです。さらに、ポリープを見つけた場合、小さいものならその場で切除して治療を終えることも可能です。
メリット②:「がんの芽」を摘み取る予防効果
大腸がんの多くは、まず良性のポリープができて、それが徐々に悪性化してがん化すると言われています。内視鏡検査でポリープを確実に見つけて切除することは、その場でがんの芽を摘み取ったことになり、これ以上ない予防となります。
実際に、米国では大腸ポリープをすべて切除したことで、大腸がん患者数が9割近く減少したという臨床報告もあります。
検査の進化:苦痛は大きく軽減されています
「内視鏡検査は痛そう、怖い」というイメージから遠ざかっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここ十数年で大腸カメラは進化しています。カメラ自体も細くなり体への負担が軽減しているほか、当院では苦痛を最小限にするための取り組みを行っています。
- 苦痛の少ない検査(鎮静剤): ご希望に応じて鎮静剤(静脈麻酔)を使用し、ウトウトと眠っているような状態で検査を受けていただくことが可能です。これにより、不安や恐怖心、疼痛が軽減され、検査の精度向上にもつながります。
- 最新の診断技術: 特殊な光を当てることで粘膜の異変を浮かび上がらせる技術や、AI搭載の内視鏡も登場しており、見逃しが激減すると期待されています。
- 前処置の負担軽減: 腸管洗浄剤(下剤)について、患者さんの体調や生活スタイルに合わせて2剤から選択しており、飲みやすさに配慮されたものをご提案しています。
- 同日検査: お忙しい方や検査回数を減らしたい方のために、胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。
4. 日常のチェックと受診のタイミング

大腸がんは50代から患者数が増えるのが特徴です。50歳を超えたら、症状がなくても一度は大腸内視鏡検査を受けてほしいと推奨されています。
日常のセルフチェック
早期がんは無症状で進行しますが、日頃からトイレで便を観察する癖をつけましょう。便は体内の状態を示す大切な情報です。
以下の異変を感じたら、定期健診を待たずに消化器内科で内視鏡検査を受けてください。
- 出血:血が混じっていないか(鮮血便や黒っぽいタール便)。
- 便の細さ:がんやポリープで大腸内が狭くなると、便が細くなりがちです。
- 便通異常:便秘や下痢を繰り返している場合、特に悪化する便秘は要注意です。
検査で異常がなければ、次の検査は3〜5年後でよいとされています。もしポリープが見つかった場合も、切除後の定期的な再検査でしっかりと経過を見守ることが重要です。
内視鏡検査は、あなたの命を救うかもしれません。ぜひ、「がんの芽を摘む機会」と捉えて、お気軽にご相談ください。