- 2026年8月20日
胆管炎の症状・原因・治療法と死亡リスク|高齢者に多い胆道感染症を解説

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。
「発熱・右上腹部の痛み・皮膚や白目が黄色くなった(黄疸)」——この3つの症状が揃ったら、胆管炎(たんかんえん)を疑ってください。胆管炎は「名前は聞いたことがあるけれど、どんな病気かよく知らない」という方が多い病気ですが、実は適切な治療が遅れると命に関わることもある重篤な感染症です。特に高齢者や糖尿病をお持ちの方に多く見られます。今回は胆管炎の症状・原因・治療法について、できるだけわかりやすく解説します。
■胆管炎とは?

胆管炎とは、胆管(たんかん)に細菌感染が起きて炎症が生じた状態です。
胆管の役割
胆管とは、肝臓で作られた胆汁(たんじゅう)を十二指腸(小腸の始まりの部分)へ運ぶための管のことです。胆汁は脂肪の消化吸収を助ける消化液で、胆嚢(たんのう)に一時的に貯蔵されながら食事のタイミングで十二指腸へ放出されます。
胆管炎が起こる仕組み
胆管炎は、何らかの原因で胆管が詰まり(閉塞)、そこに腸内細菌が感染・増殖することで発症します。胆汁の流れが止まると細菌が繁殖しやすくなり、炎症が急激に進行します。
胆管炎の主な原因
- 胆石(たんせき):胆管炎の原因で最も多い。胆嚢や胆管内に石が詰まり、胆汁の流れを塞ぐ。
- 胆管の腫瘍:胆管がんや膵頭部がんなどの腫瘍が胆管を圧迫・閉塞する。
- 胆管の狭窄(きょうさく):炎症の後遺症や手術後の癒着などで胆管が細くなる。
- 内視鏡的処置後:ERCPという内視鏡を使った胆管の検査・治療後に細菌が入り込むことがある。
重要ポイント
胆管炎は高齢者に多い病気ですが、若い方でも胆石を持っている場合は発症することがあります。胆石があると診断されている方は、腹痛・発熱・黄疸の症状に特に注意してください。
■胆管炎の3大症状(シャルコーの3徴)
胆管炎の典型的な症状として、「シャルコーの3徴(シャルコーのさんちょう)」と呼ばれる3つの症状が知られています。フランスの医師シャルコー(Charcot)が記述したことからこの名前がついています。
1.発熱(38〜40℃の高熱)

細菌感染による炎症のため、高熱が出ます。悪寒(ぞくぞくした寒気)を伴うことも多く、震えがくることもあります。発熱は急激に起こることが多いです。
2.右上腹部の激しい痛み

肝臓・胆嚢・胆管があるのは腹部の右上側です。胆管炎では、この右上腹部(右肋骨の下あたり)に強い痛みが現れます。痛みは波のように強くなったり弱くなったりする「疝痛(せんつう)」と呼ばれる性質を示すことがあります。
3.黄疸(おうだん)

胆汁の流れが詰まることで、胆汁中のビリルビン(黄色い色素)が血液中に溢れ出し、皮膚や白目が黄色く見えるようになります。尿の色が濃くなる(ビールのような濃い茶色)こともあります。
重症化するとレイノルズの5徴
上記3つの症状に加え、さらに重症になると「レイノルズの5徴(五徴)」と呼ばれる状態になります。
- 意識障害(意識がぼんやりする・呼びかけても反応しない)
- 血圧低下(ショック状態)
この状態は敗血症性ショックを意味し、緊急の集中治療が必要です。
重要ポイント
シャルコーの3徴(発熱・右上腹部痛・黄疸)が揃ったら、すぐに医療機関を受診してください。意識がおかしい・血圧が低いなどの症状が加わった場合は救急車を呼んでください。
■胆管炎はなぜ危険?死亡リスクについて

敗血症・多臓器不全のリスク
胆管炎が進行すると、胆管内で繁殖した細菌が血液中に入り込む「菌血症(きんけっしょう)」から「敗血症(はいけつしょう)」へと発展することがあります。敗血症とは、感染に対する体の反応が過剰になり、自分の臓器まで傷つけてしまう状態です。さらに悪化すると「多臓器不全(たぞうきふぜん)」を起こし、腎臓・肺・肝臓などが次々と機能しなくなり、命に関わります。
重症化しやすい方
以下の方は胆管炎が重症化しやすいため、特に注意が必要です。
- 高齢者:免疫機能の低下・基礎疾患を持ちやすいため重症化リスクが高い
- 糖尿病患者:高血糖が免疫機能を低下させ、細菌感染に対して弱くなる
- 肝臓・腎臓に持病がある方:臓器への負担がかかりやすい
- 免疫抑制剤を服用中の方:ステロイド・抗がん剤などで免疫機能が低下している
重要ポイント
胆管炎は「様子を見ていれば治る」病気ではありません。適切な治療なしに放置すると死亡率が大幅に上昇します。早期診断・早期治療が命を救います。
■治療法

胆管炎の治療は、感染のコントロールと胆管の閉塞解除の2本柱です。
抗菌薬投与
まず、血液検査や培養検査の結果をもとに、原因菌に効果的な抗菌薬(抗生物質)を投与します。点滴による静脈内投与が基本で、入院管理が必要です。症状の改善とともに経口薬(飲み薬)への切り替えを行います。
胆管ドレナージ(排液処置)
詰まった胆汁を排出し、胆管内の圧力を下げることが最も重要な治療です。
- 内視鏡的胆管ドレナージ(ERBD・ENBD):内視鏡(十二指腸鏡)を口から挿入し、胆管にチューブを入れて胆汁を排出させる方法。体への負担が比較的少なく、現在の主流の方法です。
- 経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD):皮膚から針を刺して肝臓を通じて胆管にチューブを入れる方法。内視鏡が困難な場合に行います。
手術(胆石除去・根本治療)
胆石が原因の場合は、症状が落ち着いてから胆嚢摘出手術(腹腔鏡手術が多い)を行うことで再発を予防します。腫瘍が原因の場合は、腫瘍の種類や進行度に応じた外科的治療・化学療法などを検討します。
■いつ受診すべき?緊急のサイン

以下の症状がある場合は、時間を置かずに救急受診または救急車を呼んでください。
- 39℃を超える発熱と右上腹部の強い痛みが同時にある
- 皮膚や白目が黄色くなってきた
- 意識がぼんやりしている・呼びかけてもおかしい
- 急激に血圧が下がる感じがする・脈が速くて弱い
- ぐったりして動けない
また、以下の症状が続く場合も早めの受診をおすすめします。
- 38℃前後の発熱が2〜3日続いている
- 食後に右上腹部が痛む(胆石が疑われる)
- 尿の色が異常に濃い
- 皮膚がかゆい(黄疸の前兆の場合がある)
重要ポイント
「お腹の風邪かな」「食べすぎかな」と思い込んで受診が遅れると、胆管炎は急速に悪化することがあります。特に高齢の方や糖尿病をお持ちの方は、腹痛+発熱の組み合わせには十分注意してください。
■さいごに

「最近、右お腹が痛い」
「発熱と腹痛が続いている」
「黄疸が出てきたかもしれない」
このような症状でお困りの方は、ぜひたなか内科クリニックにご相談ください。腹部超音波(エコー)検査・血液検査などを通じて原因を調べ、必要に応じて専門病院と連携しながら適切な治療につなげます。症状が重い場合は救急対応が必要なこともありますので、迷ったらまずお電話ください。