- 2026年11月2日
直腸がんと人工肛門の疑問:「肉の食べ過ぎや便秘」に隠された本当のこと

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ、たなか内科クリニック院長の田中敏雄です。
40代以降に増えやすい「大腸がん」。
近年では若い世代での発症も耳にすることがあり、世代を問わず注意が必要な病気の一つです。
中でも「直腸がん」という言葉を耳にしたとき、「人工肛門になってしまうのでは…」「肉の食べ過ぎや便秘が原因なの?」と、さまざまな疑問や不安を抱く方は少なくありません。今回は、直腸がんに関する治療の実際や、よくある誤解について専門医の視点から分かりやすく解説します。
■ 直腸がんと結腸がんはどう違う?

まず、「直腸がん」は大腸がんとは別のものではなく、大腸がんの一種です。大腸は大きく「結腸」と「直腸」に分かれており、肛門に近い部分にできるものを直腸がんと呼びます。
結腸がんと比べて直腸がんの治療が複雑になりやすいのは、その「解剖学的な場所」に理由があります。
直腸は骨盤の奥深く、膀胱や子宮などの臓器に囲まれた狭い空間にあります。さらに、排尿や性機能をコントロールする神経が走り、出口には便を我慢するための「肛門括約筋」が存在します。そのため、直腸がんの手術では、「がんを取り切ること」と「機能(肛門や排尿・性機能)をできるだけ守ること」の両立が大きなテーマになります。
■ 直腸がんになると、必ず「人工肛門」になるの?

患者様が最も心配される点の一つが「人工肛門(ストーマ)になるのか」ということです。
結論からお伝えすると、直腸がんだからといって、必ず人工肛門になるわけではありません。
人工肛門が必要になるかどうかは、「がんが肛門に近いか」だけでなく、がんが肛門の筋肉(括約筋)まで及んでいるか、安全に切除できるかなどを総合的に判断して決められます。がんを十分に取り切りながら肛門を残せる場合には、肛門を温存する手術が選択されます。
一方で、がんが肛門括約筋まで及んでいて温存すると取り残しのリスクがある場合などには、永久的な人工肛門を造る必要があります。また、肛門を残せる場合でも、術後の縫合不全などを防ぐために一時的な人工肛門を造り、状態が安定した後に閉鎖するケースもあります。
なお、手術で肛門を残せた場合でも、直腸は「便を一時的にためておく役割」を持っているため、術後に「便の回数が増える」「強い便意を催す」といった排便障害(低位前方切除後症候群など)が起こることがあります。そのため、人工肛門の回避だけでなく、術後の生活の質(QOL)まで見据えた治療選択が非常に重要です。
■ 「肉の食べ過ぎ」「便秘」が原因?よくある誤解

生活習慣について、「肉をたくさん食べたから」「便秘がちだから直腸がんになった」と結びつけて考える方がいらっしゃいますが、大腸がんは一つの原因だけで発症するものではありません。年齢や遺伝的背景、生活習慣など、さまざまな要因が複雑に関係しています。
- 肉の摂取について:赤肉(牛肉・豚肉など)や加工肉の多量摂取はリスク上昇の指摘がありますが、「肉を完全に断つべき」というわけではありません。偏った食生活を避け、魚や大豆製品も含めてバランスよく摂ることが大切です。
- 便秘について:「便秘だから将来大腸がんになる」と過度に心配する必要はありません。ただし、注意しなければならないのは「これまでと違う便通の変化が新しく起きて、それが続いている場合」です。
大腸がんによって腸管が狭くなると、「急に便秘がちになった」「便が細くなった」「便秘と下痢を繰り返すようになった」といった変化が現れることがあります。「ただの便秘だろう」と自己判断せず、こうした新しい変化を見逃さないことが大切です。
■ 大腸がんから身を守るために大切なこと

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。だからこそ、次の対策を組み合わせることが重要です。
- 生活習慣を整える:禁煙、節酒、肥満の回避、適度な運動、バランスの良い食事を心がける。
- 定期的な検診を受ける:症状がなくても、対象年齢になったら定期的に便検診(便潜血検査)を受ける。
- 症状があるときは早めに受診する:血便や新しい便通の変化を「痔のせい」「便秘のせい」と決めつけず、医療機関に相談する。
■ おわりに:小さな変化を見逃さないことが、未来のあなたと大切な日常を守る盾に

「血が混じったけれど、以前も痔だったから大丈夫だろう」
「最近便秘気味なのは仕事が忙しいせいだから、そのうち良くなるさ」
そうやって、日々の忙しさにかまけて身体からの小さなSOSを心のどこかで聞き流してしまってはいないでしょうか。直腸がんをはじめとする大腸がんは、私たちが想像している以上に「初期の自覚症状が乏しい」という厄介な特徴を持っています。
痛みがないから、出血量が少ないから、年齢がまだ若いからといって、自分の身体のなかで起きている変化を「いつものこと」と決めつけてしまうのは、あまりにも大きなリスクを伴います。
テレビやインターネット、あるいは雑誌などで「肉の食べ過ぎが悪い」「便秘が原因だ」という情報を目にすると、「自分はそこまで極端な食生活をしていないから大丈夫」「便秘は昔からの体質だから関係ない」と安心材料を探してしまいがちです。
しかし、がんという病気は一つのシンプルな原因だけで発症するものではなく、年齢や遺伝、日々の生活習慣が複雑に絡み合って静かに忍び寄るものです。だからこそ、「何が原因だったのか」を後から後悔するよりも、今まさに現れている「いつもと違う変化」に敏感であり続けることの方がはるかに重要です。以前と比べて便が細くなったように感じる、すっきりと出し切れない残便感がある、そして何より「これまではそんなことがなかったのに、新しい便通の変化や出血が続いている」というサインに直面したときには、その声を決して打ち消さないでください。
大腸がんは、決して手の届かない不治の病ではありません。適切な時期に、適切な検査を受けることさえできれば、早期発見・早期治療によって高い確率で完治が望める、非常に前向きに向き合える病気です。だからこそ、「病院に行くのは大げさかもしれない」「恥ずかしい」「忙しくて時間が取れない」といったためらいを理由に、大切な受診のチャンスを先延ばしにしないでいただきたいのです。勇気を出して一歩を踏み出すその行動こそが、ご自身の尊い命を守り、大好きな人たちと過ごすかけがえのない日常を未来へと繋ぎ止める最大のカギとなります。
「最近おなかの調子がいつもと違う気がする」
「以前から気になっていた症状が最近になって強くなってきた」
「そろそろ一度、しっかりとした検査を受けて安心したい」
そんなご不安や疑問を抱えたときは、どうぞ一人で抱え込んで悩まないでください。明石市のJR大久保駅北口すぐの当院では、患者様のお気持ちに寄り添い、どんな些細なご相談にも耳を傾けながら、最適な検査と医療をご提案いたします。皆様が健やかな笑顔で毎日を過ごせるよう、スタッフ一同、いつでも温かくサポートいたします。お体のことで少しでも気になることがございましたら、いつでもお気軽にご相談くださいね。