- 2026年7月3日
話題の薬「マンジャロ」の副作用とは?胃腸の不調への対処法と安全な使い方

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。
近年、2型糖尿病の治療薬として登場した「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」が大きな注目を集めています。週1回の注射で高い血糖コントロール効果が期待でき、副次的な体重減少効果もあるため話題となっています。 しかしその一方で、実際に投与を開始された患者様から「吐き気がつらい」「胃もたれがひどい」「体がだるい」といった副作用についてのご相談を受ける機会が増えています。
今回は、マンジャロによってなぜそのような症状が起こるのか、ご家庭でできる胃腸症状の和らげ方、そして絶対に放置してはいけない危険なサインについて、内科医の視点から詳しく解説いたします。
■1. マンジャロが効く仕組みと、胃腸への影響

マンジャロは、私たちの体内にある「GIP」と「GLP-1」という2種類の消化管ホルモンに同時に働きかける、世界初の新しいタイプのお薬です。 血糖値の上昇に合わせてインスリンの分泌を促す働きがありますが、それに加えて以下のような作用があります。
- 脳へのアプローチで食欲を抑える: 満腹中枢に働きかけ、自然と食べる量を減らします。
- 胃の働きをゆっくりにする: 食べたものが胃から腸へ送り出されるスピードを遅らせ、満腹感を長続きさせます。
この「胃の動きを穏やかにする」という特徴が、食後の血糖値の急上昇を防ぐ大きなメリットとなる半面、胃に食べ物が長く留まることで「吐き気」や「胃もたれ」といった副作用を引き起こす直接的な原因にもなっています。
■2. 気をつけたい主な副作用とその原因
マンジャロの使用を始めたばかりの時や、薬の量を増やしたタイミングで、以下のような副作用が出やすい傾向があります。
- 吐き気・嘔吐・胃もたれ(約10〜20%): 胃の動きがゆっくりになることが主な原因です。
- 便秘・下痢(約8〜16%): 腸の動きの変化や、食事量・水分量の減少によって引き起こされます。
- だるさ(倦怠感)・頭痛: 急激に血糖値が変化したり、食欲が落ちてエネルギーや水分が不足したりすることで起こりやすくなります。
- 一時的な抜け毛: お薬自体の副作用というよりは、急激な体重減少によってタンパク質などの栄養が不足することが原因と考えられます。
お薬に体が慣れるまでがピーク これらの消化器症状は、体がお薬の成分に慣れて血中濃度が安定してくるまで(投与開始から数週間〜1ヶ月程度)が最も辛く、その後は少しずつ和らいでいくことがほとんどです。
■3. 注射した部分の「赤み・しこり」を防ぐコツ

マンジャロはご自身で皮下注射を行うお薬ですが、打った場所が赤く腫れたり、かゆくなったり、しこりができたりすることがあります。肌トラブルを防ぐためには、以下の3点に気をつけましょう。
- 毎回、打つ場所を変える: 同じ箇所に打ち続けると皮膚が硬くなり、お薬がしっかり吸収されなくなります。「右のお腹→左のお腹→右の太もも→左の太もも」のように、毎回指2〜3本分ずらしながらローテーションさせましょう。
- 打った後は強く揉まない: 強く揉み込むと皮下出血の原因になります。アルコール綿などで軽く押さえる程度で十分です。
- 日々の保湿を欠かさない: 肌が乾燥していると、注射の刺激に弱くなります。普段からお腹や太ももをボディクリームなどで保湿しておきましょう。
■4. 知っておくべき「低血糖」のサイン

マンジャロは血糖値が高い時にだけ作用するため、単独での使用では重篤な低血糖を起こしにくいお薬です。しかし、他の糖尿病治療薬(インスリンやSU薬など)と併用している場合や、極端な食事制限、激しい運動、空腹時の過度な飲酒などをした場合は注意が必要です。
「冷や汗が出る」「手足が震える」「胸がドキドキする(動悸)」「強い空腹感」「めまい」といったサインを感じたら、我慢せずにすぐブドウ糖(10g程度)や糖分を含むジュース・ラムネなどを口にしてください。外出時も常にラムネなどを持ち歩くようにすると安心です。
■5. 吐き気や胃もたれを和らげる「食事の工夫」

お薬による胃腸の不調は、日々の食事のとり方を少し変えるだけで大きく軽減できることがあります。
- 1回の量を減らし、回数を分ける: 胃の許容量が減っているため、1回の食事は腹八分目以下に抑えましょう。足りない分は1日5〜6回に分けてこまめに食べるのが効果的です。
- 「もったいない」で無理をして食べない: お腹がいっぱいだと感じたら、そこでストップする潔さを持ちましょう。
- 消化に良いメニューを選ぶ: 脂身の多いお肉や揚げ物、ラーメンなどは胃に長くとどまり、症状を悪化させます。おかゆ、うどん、お豆腐、白身魚などを選びましょう。
- 食後すぐに横にならない: 胃の動きが遅いため、すぐに寝転がると胃酸が逆流して胸焼けや吐き気の原因になります。食後は上体を起こして過ごしましょう。
- こまめな水分補給: 食事量が減ると水分も不足しがちです。脱水を防ぐため、常温のお水や経口補水液などを少しずつ飲むようにしてください。
■6. 絶対に見逃してはいけない「危険なサイン」
ごく稀ではありますが、命に関わるような重大な副作用が起きるケースも報告されています。次のような症状が現れた場合は、お薬の使用をすぐに中止し、夜間・休日であっても速やかに医療機関(救急外来など)を受診してください。
- 急性膵炎: これまでに経験したことがないような、背中にまで突き抜ける激しい腹痛や、繰り返す嘔吐。
- 腸閉塞(イレウス): ひどい便秘でガス(おなら)も便も全く出ず、お腹がパンパンに張って痛む。
- 胆のう炎・胆石症: みぞおちの右側あたりの激痛、発熱、白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)。
- アナフィラキシー(重いアレルギー): 注射した直後の息苦しさ、全身の強いじんましん、顔や喉の腫れ、血圧低下。
■7. お薬を使えない方・慎重な判断が必要な方

以下に当てはまる方はマンジャロを使用できない、あるいは処方に非常に慎重な検討が必要です。必ず医師に相談してください。
- 使用できない方(禁忌): 1型糖尿病の方、重症感染症やケトアシドーシスの状態にある方、過去にこの薬の成分で強いアレルギーを起こした方。
- 慎重な判断が必要な方: 膵炎や胆石症になったことがある方、胃腸の動きが極端に悪い方、重い肝臓や腎臓の病気がある方、妊娠中・授乳中の方。
- 飲み合わせの注意: ピル(経口避妊薬)の吸収が遅れたり、ワーファリン(血栓を予防する薬)などの効き目に影響が出たりする場合があります。
■【重要】安易なダイエット目的での使用に関する注意

マンジャロはあくまで「2型糖尿病の治療薬」として国から承認されたお薬です。美容クリニックなどでダイエット目的として処方されるケース(自由診療)が増えていますが、これらは本来の目的外の使用となります。
万が一、重大な副作用が起きたとしても、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となってしまうリスクがあることを正しく理解しておく必要があります。また、個人輸入など出処の分からないルートでのお薬の入手は極めて危険です。お薬の温度管理が悪ければ効果が得られないばかりか、健康を害する恐れがあります。
糖尿病の治療中でお薬による胃腸の不調に悩んでいる方や、生活習慣病の管理についてご相談がある方は、決して一人で悩まずに、かかりつけの医師へご相談ください。