• 2026年11月2日

大人にも流行中!「百日咳」を見逃さないために——長引く咳の原因と感染予防

こんにちは。

明石市のJR大久保駅北口すぐ、たなか内科クリニック院長の田中敏雄です。

「もう3週間以上、咳が続いていて…」

「夜中に咳き込んで眠れない」

このような訴えで来院される患者様の中に、最近「百日咳」と診断されるケースが増えています。百日咳は「子どもの病気」というイメージがありますが、近年は成人・青年での感染が顕著に増加しています。今回は、大人の百日咳の特徴と、感染予防・受診のポイントをお伝えします。

■ 百日咳とはどんな病気?

百日咳は「百日咳菌(Bordetella pertussis)」という細菌が引き起こす呼吸器感染症です。感染力が非常に強く、1人の患者から12〜17人に感染させる可能性があると言われています(麻疹に匹敵する感染力)。

名前の通り、咳が数週間〜3カ月近く続くことが特徴で、重症になると呼吸困難を起こすこともあります。乳児では命に関わる場合もあります。

■ 大人の百日咳が増えている理由

かつては子どもへのワクチン接種で制御されてきた百日咳ですが、近年は成人・青年での感染が増えています。その主な理由は以下の通りです。

・ワクチン免疫の経年低下:幼少期に接種したDPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチンの効果は、接種から10〜12年で低下します。ワクチンで完全に予防できているわけではありません。

・感染歴のある世代の免疫低下:過去に百日咳に感染した方も、免疫が経年的に低下します。

・診断・報告の増加:成人の百日咳は症状が非典型的で見逃されやすいですが、診断精度の向上により報告数が増えています。

■ 大人の百日咳の症状——「風邪」と区別するポイント

大人の百日咳は、乳幼児のような典型的な「ヒューヒュー」という吸気音(笛声)が出ないことが多く、長引く乾いた咳が主な症状です。

時期期間主な症状
カタル期(初期)1〜2週間鼻水・くしゃみ・軽い咳。ほとんど普通の風邪と区別がつかない
痙咳期(咳が激しい時期)3〜6週間発作性の強い咳き込みが続く。咳のあと「ヒュー」と吸気する(笛声)。嘔吐を伴うこともある。夜間に悪化しやすい
回復期数週間〜数カ月咳が徐々に軽快。しかし完全に治まるまで時間がかかる

こんな咳が3週間以上続く場合は受診を

発熱がほとんどなく、夜間や会話のあとに激しく咳き込む、咳がコンコンと続いて止まらない——こうした症状が2〜3週間続いている場合、百日咳の可能性があります。「ただの長引く風邪」と放置せず、内科に相談してください。

■ 診断と治療

百日咳の診断には、咽頭ぬぐい液のPCR検査や抗体検査が用いられます。カタル期(初期2週間以内)に抗菌薬(マクロライド系抗生物質)を使用すると感染力を早期に消失させ、症状の軽減にもつながります。痙咳期に入ってからの治療は症状の改善効果は限られますが、感染拡大を防ぐ目的で処方されます。

■ 感染予防と周囲への注意

百日咳は飛沫感染・接触感染で広がります。感染者がいる場合、特に乳幼児への感染を防ぐことが最重要です。

・咳エチケット:咳をする際はマスクを着用するか、ティッシュや肘の内側で口・鼻を覆いましょう。

・手洗い:外出後・食事前の手洗いを習慣にしてください。

・乳幼児との接触に注意:百日咳感染中の方(または疑いがある方)は、乳幼児・妊婦との接触を避けてください。

・ワクチン:13歳以上での「Tdapワクチン(破傷風・ジフテリア・百日咳混合)」接種が一部で選択肢になります。妊婦や乳幼児の保護者への接種が特に推奨されています(コクーン戦略)。受診時にご相談ください。

■ 長引く咳を「年のせい」「ただの風邪」にしないために

「咳が3週間以上続く」「夜中に咳で目が覚める」――こうした症状が続いているときは、ただの長引く風邪や気の緩みと片付けず、大人の百日咳の可能性を心に留めておくことが大切です。通常の感染後咳嗽(風邪の後に気道が過敏になり咳が続くこと)であれば、回復を待つのみとなりますが、職場やご家庭に小さなお子様や乳幼児、妊婦さんがいらっしゃる場合、自分自身が感染源となって周囲の大切な人たちに重大な健康被害をもたらしてしまうリスクを常に意識しなければなりません。

大人は症状が比較的軽く済みがちであるため、「そのうち治るだろう」と医療機関への受診を先延ばしにしやすく、結果として周囲への感染を広げてしまうケースが少なくありません。早期に正しい診断を受け、適切な治療や周囲への配慮を行うことが、地域全体の感染拡大を防ぐ大きな力となります。

「市販の咳止めを飲んでも一向に良くならない」「夜も眠れないほど発作的な咳が出る」とお困りは、どうか一人で我慢なさらないでください。

たなか内科クリニックでは、長引く咳の原因をしっかりと見極め、患者様お一人おひとりの状態に応じた適切な検査と治療をご提案いたします。ご心配な症状がございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

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