- 2026年7月6日
便秘・下痢や体重変化がサインかも?お腹の不調に隠れた「甲状腺の病気」

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。
「最近、下痢や便秘がずっと続いている」
「しっかり食べているのに体重が減る、逆にあまり食べていないのに太る」
「いつもだるくて、やる気が出ない」
このような、なんとなく続く体の不調やお腹のトラブル。実は胃や腸の病気ではなく、首の付け根にある「甲状腺(こうじょうせん)」という小さな臓器の異常が原因となっているかもしれません。
甲状腺の病気は特に女性に多く、日本人の約10人に1人が何らかの甲状腺トラブルを抱えているとも言われています。 今回は、見逃されやすい甲状腺の病気と、それが引き起こす意外な「消化器症状」について、内科医の視点から分かりやすく解説いたします。
■1. 全身のアクセル役「甲状腺」とは?

甲状腺は、のどぼとけの下あたりにある蝶のような形をした臓器です。ここから分泌される「甲状腺ホルモン」は、全身の代謝を活発にし、体温や心拍数、そして「胃腸の動き」などを調節する、いわば体の“アクセル”のような役割を果たしています。
このホルモンが過剰に出すぎてしまうのが「甲状腺機能亢進症」、逆に不足してしまうのが「甲状腺機能低下症」です。アクセルが踏みっぱなしになっても、ブレーキがかかりすぎても、全身に様々な不調が現れます。
■2. アクセル全開状態:甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される代表的な病気が「バセドウ病」です。自己免疫の異常が原因で発症し、若い女性に多く見られます。
【主な症状】
体が常に全力疾走しているような状態になるため、動悸(心臓がバクバクする)、異常な汗、暑がり、手の震え、イライラ、不眠、眼球突出などが現れます。
【お腹のサイン:食べているのに痩せる・下痢】
胃腸の働き(蠕動運動)も活発になりすぎるため、食べたものが猛スピードで腸を通過してしまいます。その結果、消化吸収が不十分になり、「食欲が増してたくさん食べているのに、どんどん体重が減っていく」「下痢や軟便が続く」といった特徴的な症状が出ます。
そのため、「過敏性腸症候群(下痢型)」や「糖尿病(体重減少)」、あるいは動悸や不安感から「パニック障害」などと間違われてしまうことも少なくありません。
■3. アクセル不足状態:甲状腺機能低下症(橋本病)

一方、甲状腺ホルモンが不足してしまう代表的な病気が「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。こちらも自己免疫の異常によるもので、成人女性に比較的多くみられる病気です。
【主な症状】
体の代謝が落ちてエンジンがかからない状態になるため、強い疲労感、寒がり、全身のむくみ、皮膚の乾燥、気分の落ち込み(抑うつ)、物忘れ、月経不順などが起こります。
【お腹のサイン:食べていないのに太る・便秘】
胃腸の動きも鈍くなるため、「食欲が落ちて食事量は減っているのに、なぜか体重が増えてしまう」「ひどい便秘になった」というお悩みが非常に多くなります。
そのため、ご高齢の方では物忘れから「認知症」と勘違いされたり、気分の落ち込みから「うつ病」、あるいは「過敏性腸症候群(便秘型)」と誤解されたりすることがよくあります。
■4. どうやって見分ける?診断と治療法

このように、甲状腺の病気は症状が非常に多彩なため、他の病気と間違われやすいのが厄介な点です。「胃腸の調子が悪い」と思って受診された患者様の原因を調べていくうちに、実は甲状腺の異常が見つかったというケースは内科の診療現場でしばしば経験します。
【簡単な血液検査でわかります】
甲状腺の異常は、採血をして血液中のホルモンの量(TSH、FT3、FT4など)を調べることで比較的簡単に評価できます。また、必要に応じて超音波(エコー)検査で甲状腺の大きさやしこり(結節)の有無を確認します。橋本病の場合は、甲状腺がん(特に乳頭がん)のリスクが少し高まるため、定期的なエコー検査も推奨されます。
【治療について】
- バセドウ病の場合: ホルモンの合成を抑える「抗甲状腺薬」の内服が基本となります。お薬でコントロールが難しい場合は、放射性ヨード治療や外科的な手術を検討することもあります。
- 橋本病の場合: 不足しているホルモンをお薬(飲み薬)で補います。適量を飲み続ければ、症状は次第に改善していきます。
【妊娠を希望される方・妊娠中の方へ】
妊娠中は甲状腺機能が変動しやすく、バセドウ病・橋本病ともにお腹の赤ちゃんの発育や出産に影響を与えることがあります。甲状腺の病気をお持ちの方は、産婦人科と内科がしっかり連携して数値を管理することが極めて重要です。
■おわりに:長引く不調は一人で悩まずご相談を

「最近、ずっと便秘(または下痢)が続いている」
「ダイエットもしていないのに、体重の変化が激しい」
「なんとなくスッキリしない毎日が続いている」
このような症状が長引いている場合、その背景には甲状腺の病気が隠れているかもしれません。少しでも心当たりのある方は、「ただの疲れ」「体質のせい」と自己判断せずに、お気軽に当院へご相談ください。適切な検査でしっかりと原因を調べ、あなたに合った治療をご提案いたします。