- 2026年7月6日
「家族に大腸がんが多い」と感じたら。知っておきたい遺伝と予防の重要性

こんにちは。
明石市のJR大久保駅北口すぐ「たなか内科クリニック」院長の田中敏雄です。
大腸がんは、現在日本人が最も多くかかるがんの一つですが、その大半は食生活や加齢、運動不足などの「生活習慣」が原因とされています。 しかし、大腸がん全体の約5〜10%は、遺伝的な要因が強く関与して発症する「遺伝性大腸がん」であることをご存知でしょうか。
「親や兄弟に大腸がんになった人が複数いる」 「家族が若くして大腸がんを発症した」
このような場合、一般の方よりも大腸がんになるリスクが高い体質を受け継いでいる可能性があります。 今回は、遺伝性大腸がんの代表的な2つの病気と、家族歴がある方が命を守るために知っておくべき対策について、内科医の視点から詳しく解説いたします。
■1. 若くして無数のポリープができる「家族性大腸腺腫症(FAP)」
遺伝性大腸がんの一つ目は、「家族性大腸腺腫症(FAP)」と呼ばれる病気です。 これは、がんを抑える働きを持つ遺伝子(APC遺伝子)の変異が親から子へ受け継がれることで発症します。
【主な特徴】
- 10代から無数のポリープが発生: 大腸内に数百から数千個もの「腺腫(せんしゅ)」というポリープが発生します。
- 放置するとほぼ100%がんに: これらのポリープを放置すると、多くの場合40歳前後で大腸がんへと進展してしまいます。
- 大腸以外のがんリスク: 大腸だけでなく、胃がんや十二指腸がん、甲状腺がんなどの発症リスクも高まります。
この病気が疑われる場合、がんを防ぐための根本的な治療として、20代などの若いうちに予防的に大腸をすべて摘出する手術(大腸全摘術)が検討されることが基本となります。また、胃や十二指腸の定期的な内視鏡検査も欠かせません。
■2. ポリープが少ないのにがんになりやすい「リンチ症候群」
もう一つの代表的な遺伝性大腸がんが、「リンチ症候群」です。 こちらは、遺伝子のコピーミスを修復する遺伝子(MMR遺伝子)に変異があるために、細胞のがん化を防ぎきれなくなる病気です。
【主な特徴】
- ポリープは少ないが進行が早い: FAPのように無数のポリープができるわけではありませんが、生涯のうちに大腸がんを発症する確率が40〜80%と非常に高いのが特徴です(一般の方は約5%)。
- 若年での発症が多い: 40〜50代など、比較的若い年齢で大腸がんを発症しやすい傾向があります。
- 他のがんの合併リスク: 大腸がんだけでなく、女性の場合は子宮内膜がんや卵巣がん、男女ともに胃がん、尿路がん、小腸がんなど、多彩ながんのリスクが高まります。
リンチ症候群の方の大腸がんは進行が早い場合があるため、一般的な検診のペースでは間に合わないことがあります。そのため、1〜2年ごとの頻回な大腸カメラ検査が強く推奨されています。
■3. 「家族にがんが多いかも」と思ったらすべきこと

もしご自身の親族に大腸がんの方が多いと感じる場合は、一人で不安を抱え込まず、まずは以下のアクションを起こすことが大切です。
① 家族のがんの歴史(家族歴)を整理する
ご自身の親、兄弟姉妹、祖父母、おじ・おばなど、3世代にわたる親族の中で、「誰が」「何歳のときに」「何のがん」になったかをできる範囲で書き出してみてください。これが、医師が遺伝性腫瘍のリスクを評価する際の重要なヒントになります。
② 遺伝カウンセリングを検討する
家族歴から遺伝性の大腸がんが強く疑われる場合、専門的な「遺伝カウンセリング」を受ける選択肢があります。専門家から病気の正確な情報や、遺伝子検査を受けるメリット・デメリットについて丁寧な説明を受けた上で、検査を受けるかどうかをじっくり検討することができます。
③ 症状がなくても「大腸カメラ検査」を受ける
たとえ遺伝子検査で異常が見つからなかったとしても、家族歴があること自体が、大腸がんのリスクを高める要因となります。そのため、「便潜血検査(検便)が陰性だったから」「血便や腹痛などの症状がないから」と安心せず、通常の検診よりも早い年齢(40歳より前など)から、大腸カメラ検査を定期的に受けることが最も確実な予防策となります。
■4. 当院の大腸カメラ検査とがん予防の取り組み

遺伝性大腸がんであっても、そうでなくても、大腸がんから命を守る最大の防御策は「大腸カメラで直接粘膜を観察し、がんになる前のポリープの段階で切除してしまうこと」です。
たなか内科クリニックでは、患者様が少しでも楽に、そして安心して検査を受けられるよう、様々な工夫を行っています。
- 眠っている間に終わる検査: 鎮静剤(静脈麻酔)を使用し、ウトウトとリラックスした状態で苦痛なく検査を行います。
- その場で日帰りポリープ切除: 検査中にポリープが見つかった場合は、基本的にはその場で切除(日帰り手術)が可能です。何度も通院する手間を省き、確実ながん予防に繋げます。
- 胃カメラとの同日検査も可能: FAPやリンチ症候群のように、大腸だけでなく胃がんのリスクもある方や、お仕事でお忙しい方のために、1回の鎮静剤で胃カメラと大腸カメラを同日に受けていただくことも可能です。
「家族ががんになったから、自分もなるかもしれない」という漠然とした不安は、正しい知識と定期的な内視鏡検査によって「安心」へと変えることができます。 お腹の調子が気になる方、そしてご家族の病歴が気がかりな方は、決して自己判断せず、お気軽に当院へご相談ください。医師が丁寧にお話を伺い、あなたに最適な検査と健康管理のプランをご提案いたします。
※がんについては遺伝的な要素も指摘されますが、大腸がんの場合は、家族と一緒の食事や生活環境の影響も考えられると思います。
大腸がんでなくても、家族で大腸ポリープの治療をされた方がおられる場合も、一度大腸検査を検討しても良いでしょう。